ワイトキングとの戦い??と密談をする神々。
「では15階層へ降ります。
一応魔物除けの結界は張って有りますが注意はしてて下さい」
階段を降りて通路を歩くと直ぐに神殿の様な建造物があった。
「ほおおお~?地下にこんな建物が」
正しくファンタジーゲームに出て来る地下神殿って感じでセリスのテンションが上がる。
「んー?なんか見覚えがある作りね?」
神殿の中に入るとどこか既視感が有るセリス。
重厚で天井が低い地下神殿の作りは天井が高いゴシック様式が多いピアツェンツェア王国の教会建築様式とは少し違うのだが・・・
「何でも「ロマネスク様式」ってヤツらしいですよ」
「随分と古い様式の教会ですね。私も初めて見ました」
教会と馴染み深いフェナもロマネスク様式の教会は初めて見たとの事。
《うふふふふ、ロマネスク様式とは若干違いますね。これは「ドーリア様式」ですよ》
霊視さんα曰く、ロマネスク様式より古い様式との事。
「あっ!分かった!パルテノン神殿だ!」
《うふふふふ、正解です》
前世での晩年の頃に「人生最後の旅行じゃあ!」と、ヨーロッパ旅行に行った時に訪れたギリシャのパルテノン神殿と似ているのだ。
なぜこんな場所に地球の紀元前時代の神殿が有るのかは謎だが完全に観光気分で神殿内を歩く一行。
そして奥にある祭壇の前まで来ると、「気のせいかなぁ?すっごく嫌な予感がするんだけど」とセリスが呟くと?
《あっ!セリス!ワイトキングが来るよ!》突然頭に響く霊視さんβの声。
「サラッと爆弾発言をすんなぁ!!」
そうセリスが叫ぶや否や神殿中央に封印の魔法陣が浮かび上がってそれが弾け飛ぶ!
「いやああ!!これ絶対にワイトキングさんが登場しますよー?!」
ゴゴゴゴ・・・低い地鳴りと共に今度は禍々しい血の色をした魔法陣が浮かび上がる!
そして魔法陣の中心から何か強大な力を持つ存在が出現する。
「いや・・・これは不味いですね」
天龍のチャーリーさんでも怖気付く莫大な魔力・・・・
身長はおおよそ170cmくらいと大きくはないが黒のローブを身につけて黒いオーラを纏う姿は見るからにヤバい!
『ふほおおおおおおおー』
「「「?!?!?!」」」
突如間抜けな声を上げる謎の人物・・・そしてバサっと頭に掛かるフードを取る。
ん?でも顔は普通のお爺ちゃんだ。どことなく人が良さげな?・・・これは罠か?!
しかし罠でもこちらには「勇者」のジャックがいるのだ!簡単にやられてなるものか!
フェナとジャックとチャーリーさんが身構える!何も出来んが一応セリスも身構える!
すると『んんーーー』と、ワイトキングは大きく背の伸びをしてから『あー、良く寝たわー』と、なんか眠そう声が聞こえた?!
コキコキと首を鳴らしてから、「おや?んん?なんじゃお主達は?・・・ほうほう?もしや、お嬢さんはライモンドの子孫かえ?面影があるのう」
ワイトキングがセリス達に気が付いてセリスをじーと見て首を傾げる。
「違うと言ったら?」ジャックが挑発するっぽく返事をすると?
『ん?そうか?違うのか?お嬢さんの顔や髪色はライモンドに似ておるがのぅ・・・
ところで今は何年なのじゃ?』
とワイトキングが聞いてくる。
「えーと?王国歴だと483年だよ、私は一応ライモンド王の末裔にはなるのかな?
でもウチは直系じゃないと思う??・・・あれ?どうなんだろ?」
「どうなの?」と言わんばかりにフェナを見るセリス。
「お嬢様が知らないのに私が知っている訳ないじゃないですか?」
ピアツェンツェア王族の母体はカターニア共和国の系譜とヴィアール共和国の系譜を主軸として外縁の血筋を多く取り込んでいる。
セリスはカターニア共和国の系譜をガッツリと受け継いでいるのだが親戚筋が複雑なヴィアール共和国の系譜をどれだけ受け継いでいるのか分からない。
《セリスのお母さんがヴィアール系譜のライモンド王の娘さんの直系だよ。
だからセリスは母系の方でライモンド王の直系になるわね》
「随分詳しいね?!」
実は王族ハイブリッド娘だったセリス自身が知らない母系血統を知っている霊視さんβに驚くセリス。
『そりゃ詳しいじゃろうて、何せイリスはライモンドの母親のリア姫の後援人じゃったから《ああああーーーーーーー!!!!!》キィイイイーーーーーン!!『煩っ?!いきなりなんじゃい?!イリ』《名前を言うなああああああ!!!ドアホーーー!!》キイイイイイーーーーーンンンンン!!!「霊視うるっさい!!何も聞こえん!文句が有るなら私を中継しないでジジイに直接言えー!」
ワイトキングが盛大に霊視さんβの本名をバラしたがギリギリセーフだった。
《これ以上余計な言ったら今すぐにハルモニアちゃんにハーデス様の居場所をチクります》
そう霊視さんβがガチでワイトキングを脅すと、『分かった!分かった!お口チャックじゃな!』めっちゃ慌てるワイドキング、どうやら霊視さんβに弱みを握られている様子だ。
《分かればよろしい!ではお話しの続きを、ささどうぞ》
「いえ・・・到底聞き逃す事が出来ないパワーワードが聞こえたんですけど?
冥王ハーデス様ですか・・・これはさすがに上に報告しないと・・・」
上とはヤニック国王ではなく天龍王アメデである。
《ふーん?チャーリーちゃんってば、そう言うつれない事言うんだ?
じゃあ、チャーリーちゃんがウチの可愛いサーシャちゃんにちょっかい掛けて来て困ってますぅ・・・って、リールさんにチクろうかなぁ?》
「はい分かりましたぁ!ハーデス様の事は綺麗サッパリと忘れましたぁ!!」
どうやらチャーリーさんも霊視さんβに弱味を握られているらしい。
「だから!どいつもこいつも私の頭の中で中継しないで下さい!」
頭の中で大声で喧嘩されてセリス中継ステーションは大迷惑である。
『はいはい分かった分かったイリ・・・お主の勝ちじゃ。
それよりもお主達は儂とライモンド王との関係が気になるんじゃろ?
しかしおかしいのぅ?そこまで複雑な話しじゃないんじゃがのぅ?
爺はとっても不思議じゃ、アヤツは儂の事をなんと周りに説明しておったのじゃ?』
「えーと?「ワイトキングが復活して王都が死者で溢れる」とか言ってます」
『んー?ああ!そうかそうか、なるほどなるほど、お主達はライモンドの小説の話しを勘違いしておるんじゃな?』
カッカッカと楽しそうに笑い出したワイトキング、どうやら王家の見立て通りに破滅の古文書はフィクション小説だった。
『どうせあれじゃろ?どうせ目覚まし時計の魔法陣を封印の魔法陣とかに話しを変えたのじゃろ?』
「アレって、めっ目覚まし時計?!だったのー?!」
『そんでもってワシが目覚めたならば国が滅ぶとか何とか書いたんじゃろ?
大丈夫じゃ。その話しは全て「小説」じゃ。
当時はそう言う話しが流行っておってなぁ、分かり易い善と悪の話しがウケたのじゃ」
「つまり?どう言う事ですか?」
『当時ライモンドは小説の執筆に行き詰まっておってのぅ。
「何か面白いネタが無いか?」とワシに相談しに来おってな、ゆっくりと寝れる場所を提供してくれたらワシを題材にして良いと契約をしてだな・・・』
「アホかー!5代目国王ー!」
「つまりハーデス様は王都の人間達に危害を加える気はないと?」
忘れたと言っておきながらモロに「ハーデス様」呼びのチャーリーさん。
『ないない、自分で殺して自分で輪廻させて・・・仕事を増やしてどうする?
そんな所業はモンマッチポンプが極まっておろう?』
「つまりアンタが人間を輪廻転生させているのか?」
余計な事を言って霊視さんβを怒らせると後が面倒臭いので黙っていたジャックが疑問に思ってた事をワイトキングに質問する。
「正確には「我々」じゃな、宇宙の各地方?には担当のワイトキングがおってのぅ。
交代で休みを取りながら輪廻の仕事をしておる。
その休みのローテーションが約400年周期と言う訳じゃな」
「つまり目指し時計って・・・」
『おそらくお主達も見たアレじゃな』浮き上がった赤い魔法陣の事だね。
「400年?!おいおい、それが今日って・・・どんな確率だよ」
ピンポイントで「おはようございます!の日」の大当たりを引いた事が判明してジャックが呆れてる。
《・・・ハーデス?寝ぼけている貴方は気が付いていないようですけどセリスはシルフェリアですよ》
今までソッポ向いてた霊視さんαが突然ワイトキングに話し掛ける。
『なんと?!ほおおお?・・・言われて見れば確かにシルフェリアじゃのぅ。
てかアテネよ?お主は何しておるんじゃ?』
《私は82番目の・・・》『ほうほう?そんな事が?・・・・・・・』ヒソヒソヒソ
「??????」チラチラと自分を見て来るワイトキングに不思議そうなセリス。
ワイトキングと霊視さんαはダイレクトに高次元念話で話しているのでセリスには聞こえていない。
『しかしそうなると・・・』《そうですわね・・・》『それじゃフレイヤが・・・』《第15ワイトキングに連絡した方が・・・》ヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
ワイトキングと霊視さんαがセリスについてヒソヒソ話しを始める。
「??????」キョトンとしているセリス。
『ふむふむ、ではそう言う事で』《良い感じでお願いしますわ》
どうやら神様の密談は良い感じに終わった様子だ。
後にこの密談を知った仲間はずれ女神ハルモニアは・・・見事にグレた。
この時の密談の内容は最終話で明らかになります。
「おうおう、何じゃい?私に何か文句でもあるんかい?」と言う様な感じでセリスがワイトキングを見ていたら・・・
『おっといかんいかん!ギリギリまで寝ておったから時間がない。
休みの交代待ちの奴がめっちゃ怒っておるわい。
ハルちん(女神ハルモニア)にチクられる前にワシはもう仕事に行くぞい。
それじゃ皆の衆よ、死んだらまた会おうぞ!』
早口にそう言うとワイトキングは、バツが悪そうにそそくさと転移陣を使ってどこかに行ってしまった・・・・・・めっちゃ怪しい。
神殿に沈黙が訪れる・・・
「え?」フェナが間抜けな声を上げる。
一同訳が分からず固まっていたら比較的客観的に一連の出来事を見ていた他人事ジャックに「一応霊視して帰るか?」と尋ねられたので「そだねー」と返すセリス。
霊視しないと報酬が貰えんので霊視した所、やっぱり何の痕跡も見つからなかった。
「じゃあ俺が見たまんま聞いたまんまに報告書書いておくからな」
「お願いしまーす」
最後まで他人事だったジャックに報告書を任せてワイトキング探索依頼は終了する。
報告書を読んだヤニック国王は、「お疲れ様でした」とだけ言ったとの事。
これ絶対にヤニック国王も何か知ってんな?との疑惑を持ったセリスだった。
部屋の椅子に座り「さて・・・」これから霊視さん'sに尋問を開始する予定のセリス。
「おい・・・霊視さんよ?絶対にアンタ、ワイトキングが安全な存在な事を知ってたろ?倉庫の悪霊の時と違って全然慌ててなかったよな?」
《そんな事ありませんわよ》
「嘘つけー!この!どっかの神様めー!」
《神様?はて?なんの話しでしょうか?》
「そしてエルフさん?アンタもワイトキングと友達だったよな?」
《おほほほほ、何の事でしょうか?そして私はエルフさんではありませんわ》
「嘘つけー!・・・と言うよりハルモニアちゃんって誰ですか?随所に名前が出て来ましたが?」
霊樹シルフェリアだった時も含めてセリスと女神ハルモニアは直接話した事が無い。
日本人だった時も女神アテネの事はさすがに知っているが女神ハルモニアの事までは知らない。
「ハーモニー」がオリュンポスの女神様から取られた単語だとは思っていないので誰の事を言っているのか珍紛漢紛なのだ。
《ハルモニアちゃんはセリスの心の中に居る「妖精タン」の事です》
アホ?と思える霊視さんαの発言なのだが実は本当の話しだったりする。
この話しも最終話にて全容が明らかとなります。
「もおおおお!誰も彼も誤魔化してばっか」いよいよ不貞腐れるセリス。
《冗談はこれくらいにしまして。
ワイトキングに関しましては、セリスが歳を重ねて行けばいずれ分かる様になります。
今は人間の生をたくさん楽しんで欲しいので内緒と言う事で》
《そうねぇ、これから楽しい事がいっぱい有りますから無駄な心労を背負う事はありませんね。
こう言うのは大人に任せておけば良いのです》
「うっ・・・」そう言われると何も言えなくなるセリス。
《それよりも・・・・・・・・・・・》
「はう?!」
霊視さんβの気配が変わる!これは?・・・保護者からの説教が来る時の気配?!
《男性の前で全裸になった事についてセリスにお話しがあります・・・》
「ふえ?!」
こうして3時間みっちりと「淑女とは何たるか?」について霊視さんβから懇々と説教を食らうセリスでしたとさ。
霊視さんβの余りにも真剣な説教に姿は見えなくともベッドの上で正座するセリス。
ワイトキング騒動は、半分本当で半分間違いの微妙な結末を迎えたのだった。