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銃をブッ放つ公爵令嬢。

本編の前に魔法世界の銃について少しお話ししましょう。

これはセリスが護衛騎士のフェナから戦闘訓練を受けている時のお話しです。



「お嬢様、本日は銃を使って見ましょう」

日課の戦闘訓練中にそう言ってフェナが6発装填のリボルバーを持って来た。

おそらくは38口径あたりの銃だと思われる


戦闘能力デバフまみれのポンコツ生徒に悩んでいるフェナ先生が色々と試して見ようと苦労しているのが伺える。


「あれ?やっぱり銃って有ったんだ?」


「??何でですか?」不思議そうに首を傾げるフェナ。


セリスがそう思うのも仕方ない。

セリスが魔法世界に転生してから大砲は見た事はあるが銃を見た事は無かったからだ。


「いえね?誰も銃を使っている所を見た事がなかったから銃は無いのかな?って」

これでも腐ってる公爵令嬢。衛兵は身近な存在なのだが銃を持っている兵士を見た事が無いのだ。


「ああ、戦場で銃を主武装として使うのはかなりリスキーですからね」


「何で?銃って強いじゃん?」

元地球人の感覚だとそれなりの遠距離攻撃が出来て身体能力の影響をさほど受けない銃の方が剣や槍を使うより強い気がするのだ。


「理由の一つとして、この銃だと一般的な対物理障壁に簡単に弾かれてしまいます」


「・・・なるほど。魔法かぁ」


この世界の兵士は全員が魔法障壁を張る事が出来る。

と言うよりはこれが兵士になる最低条件であり障壁を張る事が出来ないと広範囲魔法攻撃などを受けると一瞬で死んでしまうからだ。


「一般的な兵士が張る対物理障壁を確実に突破するには最低でも70口径のライフル弾が必要とされています。

その70口径のライフル弾を発射出来る銃の重量は1発装填の銃でも最低25kgと言われてます」

銃で25kgはめちゃくちゃ重くて普段使いにはならない。


無理矢理構えて撃てるのは撃てるが10kg米袋を2個半担いで2km歩く事を想像して貰えれば何がダメなのは分かるだろう。

つまり弾も含めて持って移動するだけで死ぬほど疲れる。


アメリカのマニアがネタで3連装填の70口径銃を作った事があったが30kg以上もあり、重すぎて手撃ちが出来なく専用の三脚が必要との事。

こうなると普通に機関銃を持ってくる方が話しが早い。


重さについて何か有名な銃と比較的すると世界的なベストセラーM16アサルトライフルとAK-15アサルトライフルの重量は弾が装填されていない状態で共に3,5kgである。

面白い事に本物の方がガスを装填するBBモデルガンより重量が軽いのだ。

これくらい軽くないと戦場で長時間の銃の振り回しなど出来ないのだ。


70口径の銃がいかにネタであるか分かって貰えるだろう。


地球の兵器基準で考えると魔法世界の兵士を倒す為にはファランクス対空砲を直接撃ち込まないとダメって事だね。

想像以上に魔法世界の対物理障壁は強力なのだね。


「そして採算が全く取れないので1発装填の70口径銃を作る鍛冶屋なんていません」

そりゃネタ装備だからね。マニアから特注なら作るかも?と言うレベルである。


地球でも対装甲車用や象撃ち用で70口径ライフル銃が有るのだがアメリカの特殊部隊が特殊条件で使うネタ装備なので数はメッチャ少ない。


象撃ちに関しても今のご時世でそんな気狂い銃で象さんを撃ち殺したら大炎上不可避だろう。


更に予算が少ない日本の自衛隊でそんなネタ装備を作ったり買ったりしたら絶対に怒られる。


余談になるがセリスの前にある38口径の通常弾より狩猟用の20.3口径のライフル弾の方が全然威力が高い。


何で?と言われるとライフル弾は細い口径を大火力で撃ち出す為である。

水道ホースを細めると考えると分かり易いだろう。


日本の警察が使っている38口径の銃は殺す為と言うよりは接近戦で相手を後ろに飛ばして戦意を喪失させる事を目的にした自衛用もしくは制圧を目的とした銃なのだ。

ちなみにアメリカの警察は44口径もしくは45口径マグナム弾を使用しており殺る気マンマンである。


「あれ?じゃあその銃は何であるの?」話しを聞いて不思議そうなセリス。

確かに人の命の価値が地球より低い魔法世界で人道目的の銃が有るのはおかしな話しだ。


「その辺のアンポンタンを相手にするにはこの38口径銃はやっぱり使い易くて有効なので御婦人や御令嬢の護身用として数多く作られてます」


魔法障壁を張って来る正規の兵士や騎士や傭兵や冒険者には通用しないが街を彷徨くチンピラ相手なら38口径の銃は有効なのだね。


「公爵閣下からの御命令でこれからはお嬢様には護身用として銃を持ってもらいます。

魔法や剣が使えないなら銃でアンポンタン共を威嚇しろってヤツですね」


「え~?そんな物騒な物なんて嫌~」元日本人なので銃に忌避感があるセリス。


「ワガママ言わない」


「うー?」


どちらにしても使えないと意味が無いので射撃訓練をする事になった。


25m先の的を狙って・・・パン!と引き金を引くセリス。

すると弾はヒューーーーンと無駄に大きく曲線を描いて的を撃ち抜く。


「はあ?!」


「はあ?!」


想像もしてなかった結果に間抜けな声を上げるセリス&フェナ。


「今の・・・何?」


「分かりません。もう一回撃って見て下さい」


「・・・うん」パン!ギュルルルルルルルスパーーーン!!


今度は弾が大きく螺旋を描いて的を撃ち抜いた?


「・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」


意味不明過ぎて無言になるセリス&フェナ。


「これぇ・・・どうすれば良いのかな?」


「知りません。狙ってやっている訳ではないんですね?」


今度はわざと的から横を向いて明後日の方向に撃って見る。

パン!シュビビビビビビスパーーーン!!今度はジグザグしながら的を撃ち抜いた?!


「これぇ・・・何かおかしくね?」


「だから知りません」


後で知る事になるのだが、この不可解な現象は霊視さんβからの加護の中にある「射手の心得」のスキルの影響である。

セリスから撃ち出される物理的な物は弓矢でも銃でも最終的には必ず狙った的に当たるのだ。


要するにセリスがクソエイム過ぎて弾が真っ直ぐに飛んでくれてないだけである。

それに「射手の心得」はセリスの身体能力に密接に連動しているので連射で当てるとか質量が大きいバリスタや大砲とかでの発動は無理である。


「もしかして!史上最強のガン・・・レディの誕生?!」

まぁ・・・撃てば確実に的に当たるからね。でもそれはどうかな?


「全然ダメです」


「何でさ?!」バッサリとフェナに切り捨てられるセリス。


するとフェナはスタスタと歩いて的の近くに立ち、「お嬢様、私を撃って下さい」と手を広げる。


「そんな事出来る訳ないじゃん?!」


「大丈夫です怪我一つしませんから」とニコリと笑う。


「ええええ????」

混乱しながらもフェナに当たらない様にパン!と銃を撃つセリス。

最初と同じ様に弾は大きく曲線を描いてカーン!と、あろう事かフェナの眉間に直撃したぁ?!


「きゃああああああああ?!フェナを殺しちゃったぁあああああ?!?!」


「死んでませんって。ちょっとピリッとしただけです」


「うええええええ?!?!?!」


「大きく曲線を描いて当たっているので銃の有効距離を超えて弾に殺傷力が無くなったんです」


「どどどどどゆこと???」


「その38口径弾の有効範囲は「おおよそ30m」です。

お嬢様の場所からここまで約25m、曲線を描いた距離が15m、合計40mを超えたので弾は大幅に失速して目視でも飛んで来る弾を確認出来ました。

簡単にかわせましたが殺傷力がない事を理解して貰う為に敢えて当たったんです」


つまりフェナに当たった頃には手投げした小石程度の威力しかなかったって訳やね。


「つまり?」


「ずぇーぜん使いモノになってないって事ですね。まだ石を投げた方がマシですね~」


銃の小さな弾は直線で飛んで貫通してナンボの武器なので曲線を描いたりジグザグしてたら威力は無くなるのだ。


「まぁ・・・それでも相手はビックリしますから目眩しには使える・・・かな?」

予想以上のセリスのポンコツ具合に首を傾げるフェナ。


「おっかしいなぁ・・・ちゃんと整備したはずなんですけど・・・」

セリスから銃を受け取り、的に目掛けてパン!パン!パン!と銃を撃つフェナ。

すると3発全弾、綺麗に的の中心部を貫通する。


「照準はおかしく無いですね・・・お嬢様、もう一回撃って下さい」


「・・・・・・はい」だんだんと己のポンコツ具合を理解し始めるセリス。


パン!ヒューーーーーンギュルルルルルル!パン!

今度は急上昇からの急下降して的に当たる弾・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・悪化しましたね」


「・・・・・・・・・・・・そだねー」


「うーーーーーん?なら・・・・45口径を使って見ますか?」

反動が大きくて気乗りしないが射程が長いので一応は試して見る事にする。


ドォン!「うひゃああ?!」明らかに違う強反動に尻餅をつくセリス。


「あれ?弾は?」


「空の彼方へ飛んで行きましたね~」

45口径だとキャパオーバーなのか「射手の心得」が発動しなく弾はセリスの斜め向こうへと消えて行った・・・


「危ないので銃は止めましょう」

コイツには銃の才能無し!との評価を下したフェナ先生。


「・・・・・・そだねー」


その後、銃の才能は皆無だったが意外と柔術にはギリギリ才能が有る事が判明するセリス。

綺麗サッパリとガンレディの道は諦めたのだった・・・








「一応、「射手の心得」ってSランクスキルなんですけど?」


「そのSランクスキルが使う者次第でここまでポンコツスキルになるとはのう・・・」


セリスのポンコツぶりに唖然とする魔王とエルフでしたとさ。

このポンコツに反比例してセリスの驚くべきチート能力が判明するのはまだ先の話しだ。

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