公爵令嬢セリスは12歳になっても変わらず元気です。
「あああーーーー!!もぉおお!お嬢様は12歳になっても毎回毎回!本当にもう!」
「ふああああ?!?!」
グワシ、グワシ、グワシ!!「この馬鹿タレ令嬢め!今日はいきなりお股からだ!」グワシ!!グワシ!!グワシ!!
「ひゃああーんん!ミミリーが今日もマジ容赦無い!」
ここ数年でカターニア公爵家の中では名物になった「ミミリーちゃんの丸洗い」が発動していた。
本日の丸洗いの餌食は尺の都合上から10歳と11歳の話しを盛大に省略された12歳のセリスだ。
と言うのは冗談で遂にピアツェンツア王国対ゴルド王国との戦争が勃発して王家から敵性勢力からの誘拐防止策として王立学校も一時休校に加えてセリスも含む貴族令嬢全員に自家敷地外への外出禁止令が出たのだ。
そんな事になったので公爵令嬢セリスの昨年と一昨年は公爵邸で王立学校入学へ向けての自主勉強と「その他」しかしていなかったので話す事が特にないのだ。
つまりセリスは普通の公爵令嬢らしい生活を送っていたのだね?
つーか「その他」って何だよ?
ちなみに見た目的には少し身長が伸びた他は9歳児の時とほとんど変わっておらずセリスは「どこもかしこもペッタンコ・・・服代が掛からず良き!」とか言って完全に油断している。
何の前兆もなく突然セリスがボウン!するまで後3年・・・
その間の生活費はフェナがセリスの代理で墓場の見廻りをしたり「王城内での移動ですから!」と屁理屈をこいて公爵邸の庭に続いている後宮回廊を経由して冒険者ギルド裏口へ行きイノセントの執務室の書類片付けバイトをしたりして何とか食い繋いでいた。
何より財政が一応安定したのは自家農園で作っていた野菜達が軌道に乗り市場に出荷出来たのが大きい。
今日もフェナと一緒に秋野菜の収穫作業に精を出し泥塗れで帰宅してミミリーを激怒させたのだ。
おおう?良く見ると湯船でフェナが溺死していたよ・・・
つまる所でセリスは全然普通の公爵令嬢の生活を送ってはおらんかった・・・
次の日の朝。
コケコッコーーーーーーーコケーーーーコッコーーーー・・・
遠くの鶏小屋で今やカターニア公爵家の生命線とも言える声だけは「鶏」のピッピちゃん達が鳴いている・・・
コケ!コッコー!!コケーーーー!!!だんだんと荒ぶる鳴き声。
おそらくは《卵産んで欲しければ早く餌寄越せやオラァアアア!!》と、言っているのですね?分かります。
コケー!!《オラァアアア!セリスー!》コッコー!!《もう何時だと思ってんだぁ!》
はいはい!はいはい!今セリスちゃんが行きますよ~。全く寝坊助に厳しい鳥達だぜ。
それにピッピちゃん達の餌代も頑張って稼がねばいけませんね・・・・
「う・・・」
「うう~・・・・」
「うう・・・うおおおおおおおお!!!」
朝です!10月に入ると王都周辺も結構朝晩冷えて来ましたね。
そんな怠い朝の眠気を気合い一発で吹き飛ばして起き上がるセリス!皆様おはようございます!
「うおおお!・・・で、起き上がる令嬢なんか居るかぁーーー!!」パシーーン!
「起き抜けにまた叩いたーーー!!」
そしてベッドの上でジャンプして飛び起きたセリスの頭をノータイムでひっぱ叩くミミリー様!
「うるさい!」ペシーン!
「ミミリー?酷いですわ!」
最近はようやく令嬢らしい話し方をマスターして来たセリス、しかしその前の「うおおお!!」が有るので論外ですね。
《セリス!朝っぱらからいきなり頭の中で叫ばないで!この寒いのにビックリして川に落ちたじゃないの!へーーくちょーーーい!》
そして霊視さんβからも苦情が入りましたよ?!
しかも、くしゃみが可愛いじゃないっすか!「へーくちょい」って??
昨晩セリスは霊視さんβに勉強を教わっており念話回線がそのまま接続されていたのだ。
「私が叫ぶと何で霊視さんが川に落ちるの?」
《毎朝、川沿いのコースをジョギングしているからよ!》
「ごめんなさーーい?!」
ほう?霊視さんは毎朝どっかのエルフの女王の如く川沿いでのジョギングが日課なのですね?
いやでも確かに令嬢として「うおおお!」は、普通に有り得んね。
《もう・・・分かれば良いのよ?・・・・・くちゃん!》
しかし・・・ハイエルフってクシャミをするんですね?
ハイエルフって病気とかしない生き物だとの印象があるんですが?
《・・・ハイエルフを何だと思ってるのよ?病気なんて普通に罹るわよ?
前に「ものもらい」にだって普通に罹ってんじゃん?》
そうでしたね・・・言われて見れば熱中症とかにも罹ってましたね。
ハイエルフが普通の生物だと分かった所で話しを進めます。
サクッとワンピースに着替えてフェナと共に玄関を出るセリス。
前にどこかの公爵令嬢の真似をして繋ぎの作業服を来て見たらマジでイレーヌ女史から怒られたので妥協してワンピースなのだ。
ちなみにフェナもセリスに付き合って夜8時に就寝して朝4時に起きるメッチャ規則正しい健康優良児の生活習慣が板に付いている。
「お嬢様?昨日の今日でまた汚れて帰ったらミミリーが怖いですから止めません?」
「もちろん汚れない様にするわよ?」
「ここまで全く信憑性が無い言葉も珍しいですね?」
「ふ・・・汚れずともやれる事は幾らでも有るのだよ」
なぜかドヤ顔でフラグを立てまくるセリス。セリスが向かった先は当然ながら鶏小屋だ。
「あ・・・ダメなヤツだこれ」
間違いなくセリスがドロドロになる未来を予知したフェナ。
さてこの鶏達は別に買って来た訳ではなく、いつまで経っても国から外出許可が出ないのにヤサグレたセリスがたまたま公爵邸に飛来した鶏の群れを見つけて「よっしゃあ!天からの恵み!」と喧嘩を売り大格闘戦の末に捕らえたのだ。
まあ・・・多分グレていなくても格闘をしたと思うが・・・
そして鶏小屋を作り(さすがに鶏小屋は用務員のおっちゃんに作って貰った)昨年から始めた養鶏がなかなかの成果を上げている。
「おはよ~君達、今日も元気に卵産んだか~?」「コケーコッコー」「コッコッコ」とセリスが鶏小屋に入ると喉を鳴らしながらセリスに集まる鶏達。
地球と違いこの世界の鶏は魔物を家畜化したものなので身体が大きく体長1mを優に超えている。
見た目も鶏と言うより鷹だ。
セリスも始めて鶏を間近で見た時はビックリして「鶏違うやん」と思わずツッコミ入れてしまったのだ。
そんなツッコミを受けて・・・
「コケー!」《なんだと?!この小娘!誰がどう見ても鶏だろうがぁー!》
セリスのツッコミに怒ったピッピちゃんがセリスに襲い掛かる!
セリスの暴言は許し難し!ピッピちゃんは自分が鶏である事にプライドを持っているのだ!
「ふ・・・かかって来いやぁー!捕らえて卵を産ませてくれるわー!」
ピッピちゃんを臨戦体制で迎え撃つセリス!
「きゃあああ?!誰かー?!お嬢様がトチ狂いましたよー?!」
突如として鶏とガチ喧嘩を始める公爵令嬢に悲鳴を上げる新人メイドさん。
しかしいつもの事なので周囲に居た者達の誰も反応が無かった。
「両者見合って~、ファイ!」「ええーーーー?!」
フェナの開始の合図で異種格闘技戦を開始する両者と当然の様に審判をする護衛騎士にメッチャビックリしている新人メイドさん。
フェナ的にはこれも日課の体術授業の一環なので止めない。
「コケーーーー!」「きぃいい!」バッサバッサ!「きゃー?!」「コケコッコー!」ドスンバタン!「そりゃぁー!」「コケッ?!ケーー?!」ゴロゴロ!ツンツンツンツン!「痛い痛い!つっつくなぁ!」「コケケーー!!」グイグイグイ「ケー?!?!」
「ええ?!結構戦えてる?!」
公爵令嬢と鶏との戦いに見えない攻防戦が繰り広げられる!
つーか、公爵令嬢と鶏??そんな「異種」格闘戦なんぞあってたまるかい!
「ああ・・・お嬢様って結構、超近距離での肉弾戦には強いんです」
「うええええ?!?!」
一応セリスの戦闘ジョブは「柔術使い」である。
これは前世とかは関係なく魔法不器用なセリスが取れるジョブがこれしかなかったからである。
「せい!せい!」「コケー?!」ピッピちゃんの後ろに回って抱き付き左右に揺さぶる!
「ええ~???」この新人メイドにもセリスの事が少し分かった事だろう。
貴族令嬢でそんな柔術のジョブを取るヤツなんて・・・着飾る事が仕事なので偽装鉄扇くらいしか武器を持てない令嬢にとっては絶好の護身術になるので実はかなり多かったりする。
おっとりした感じの母バーバラ夫人でも柔術4段の黒帯でセリスや双子の妹達に稽古を付けている。
高位貴族の夫人や令嬢が暴力に対して何も出来ない存在とか思ったら痛い目見るぜ?
むしろ敵の多い侯爵家や公爵家の令嬢の方がガッツリとした戦闘訓練を受けていたりする。
そんな環境で鍛えられてるので曲がりなりにもDランクの魔物の鶏の攻撃をかわしながらバックからのベアハッグで対抗するセリス。
「おお?!」思わぬ熱い戦いに少し興奮気味に観戦している新人メイドさん。
「そりゃあローリング!」ゴロゴロゴロゴロ!「ケッケッケー?!」セリスにくっ付かれて思う様に攻撃出来ず地面でゴロゴロと回されるピッピちゃん。
レスリングの試合で背中に抱き着いてクルクルと回る技が有るが実際にアレを食らうと外目と違いスッゲェ怖くて一気に体力を奪われます。
まあ・・・ピッピちゃんも本気で攻撃している訳でもないが。
どちらかと言うと総合力で劣るセリスがピッピちゃんに魔法を使わせない様に自分が得意なレスリングに近い戦いに持ち込んだと言った方が正解だろう。
案外セリスは戦闘センスが有ったりする。
良く考えたらセリスは神虎の異名を持つ勇者ヤニックの従兄弟姪なので弱いと考えるのが間違っているだろう。
それから休憩を挟みながら1時間に渡って激戦を繰り広げて友情が芽生えたセリスとピッピちゃん。
「時間切れ!両者それまで!」
もうすぐ夕食の時間なので試合を止めるフェナ。
「ふ・・・なかなかやるわね」もう足腰ガッタガタになっているセリス。
「ケー」《ふ・・・お前もな》結局、セリスから有効打を取れなかったピッピちゃんだがとても爽やかな表情だ。
こうしてセリスと鶏は友達になってピッピちゃんが率いていた35体の群れがカターニア公爵家に住み着いたのだ。
余談だがピッピちゃん達の正式名称は「スモールグリフォン」と呼ばれるグリフォン種の亜種だったりするのでメチャクチャ賢い。
・・・公爵令嬢がグリフォン種相手に喧嘩すんなよ。
「コケーコッコッコ」しかし厳つい見た目に反して鳴き声はまんま鶏だ。
そして卵の味はどうなのか?と言うと、普通に美味しいらしい。
とあるグリフォンの魔王が自分が産んだ卵を見て「捨てるのが勿体ねえ!」と、自分で卵を産んで自分で卵焼きを作りエルフに食わせた所・・・
「とても美味しい卵焼き!美味しいけど!・・・ああ・・・エリカの子供を私が食べて・・・」と精神的な大ダメージを受けたが「ん?無精卵だから大丈夫じゃね?」と産んだ当の本人は気にもしていなかったとかのエピソードもある。
ややこしいので今後はスモールグリフォン=鶏と表記します。
鶏小屋にセリスが来たので鶏達は羽をバサバサさせて喜んでいる。
ちなみに飛んでここから逃れるか?と聞かれると自分で扉の鍵を外して楽勝で逃れる。
単にセリスとの友誼で彼女達はここで家畜化しているだけだ。
「コケコケコケコケーー!!」《セリスおっせえ!おっせえよ!》
ピッピちゃんがセリスの頭をツンツンツンツンツンツンツンツンツンツン
「痛っ!いたい!つっつかないで!ちょっと遅れただけじゃんか!」
「ああ・・・お嬢様の髪の毛がグシャグシャに・・・」
開始3分でボロボロになる主を見て絶望するフェナ・・・
「ほら!餌だよ~」とセリスは芋をゴロゴロと鶏の足元に転がすと、「ケー!コッコッコ」と喜んで食べ始める鶏達。
鶏の主食は芋や雑穀などのどちらかと言うと草食寄りだ。
肉食だと思われているグリフォン種だが実は雑食だったりする。
そう言えば・・・とあるグリフォンの魔王も普通に野菜炒め定食(レタスサラダ付き)とか食ってたね。
性格はグリフォン種の中でもかなり温厚で野生の鶏が畑を荒らす時がたまにあるくらいで人畜無害なグリフォンさんなのだ。
ピッピちゃんの気性が少し荒いだけである。
鶏の農作物被害対策にこの世界の農家は野生の鶏のリーダーを捕まえて飼ってしまうのだ。
そうすれば群れ全体が農家の物となりウハウハになる。
その事を農家の人から聞いていたからセリスはピッピちゃんに勝負を挑んだのだね。
群れの長のピッピちゃんにつっつかれたけど上質な卵(ダチョウの卵の様にデカい)を25個もゲットだぜ!
その後も盟友たる鶏達と思う存分に戯れて次に向かったのは牛舎だ。
朝の乳搾りがもう終わったのか牛舎には誰も居ない・・・すこし寂しい雰囲気だ。
この世界の牛は・・・普通に牛だった。
黒鹿毛の東南アジアとかによく居る牛に似ていると思ってくれて良い。
牛系統の魔物も居るがこの牛は魔物でなく人間と同様に「動物」に分類される。
カターニア公爵家に居る牛達は捕まえたのではなく普通に行商人に頼んで連れて来て貰った。
ちゃんと農林畜産省(ピアツェンツア王国では農林畜産省と農林水産省が分かれています)に牛の登録しないとバチクソに怒られるからだ。
「君達も元気だったかね?」と声を掛けるも当然ながら普通の牛なので鶏より反応が薄い。
1頭だけ「モー」と一声鳴いて近寄って来たが他の8頭は我関せずだ。
そうなのです。今や公爵家の乳牛は9頭まで増えて牛乳の販売事業も開始しました。
産地直送のカターニア印のミルクは市場でも大人気でカターニア公爵家の者に「牛乳は1人1日500mmℓまで制限」が出されるほどに品薄である。
牛乳の売れ行きが好調過ぎて「くっ売れ過ぎてチーズが作れん!」と嘆くセリスだが農林畜産省から「カターニア公爵家の所有の乳牛は10頭まで」と釘を刺されているのでチーズ産業は暗礁に乗り上げている。
そもそも今回のカターニア公爵家の乳牛の所持自体が戦時における王都内の食糧自主生産を目的とした「戦時法内の特例」なのでこれ以上の我儘は不可である。
ヘタを打てば王都近郊の畜産農家が致命的な打撃を受けるので当然だろう。
「モー」セリスに寄って来た牛も飽きたのかセリスの所からゆっくりと離れて行く。
「また来るねー」
変に構うと怒るので近寄って来た牛だけ撫で回して次は農園へと向かうとしたら・・・
「あっ!やべ!」振り向きざまに牛の○○○を踏んじゃうセリス。
「ああ・・・もう・・・オワタ」ミミリーちゃん激怒確定である。
さすがにこれでは○○○令嬢になってしまうのでフェナと2人で近くを流れる農業用水路に漬けてゴシゴシゴシと必死に靴を洗う。
「どうかな?!」グイっと○○○靴をフェナの鼻先に突き出すセリス。
「う?!うーん?・・・多分・・・大丈夫かと」
綺麗にはなったがさすがに○○○靴を触るのが嫌なのか一歩下がるフェナ。
汚れ無し!匂い無し!を確認した2人は頷き合う。
しかし「靴を脱いで靴を洗った」のでセリスが履いてる靴下は泥泥になっている。
あーあー・・・ワンピースの裾もドロドロやん。
どこまでも詰めが甘い2人である。
「秋野菜の収穫期が終わったから静かですねぇ」
「そだねー」
農園には到着したがこちらも昨日で秋野菜の収穫作業がほぼ終わって人影は無くめっちゃ静かだ。
フェナと一緒に作業員休憩用東屋の椅子に優雅に腰掛けて唯一まだ収穫されていない冬大根畑を満足気に眺めながらセリスは呟く・・・
「ふっ・・・次はいよいよキノコ栽培だな」と・・・
「はっ?!キノコ?!」予想だにしてなかった単語に驚くフェナ。
国からの外出禁止令などセリスには効果なかった!セリスの頭の中は次の事業の事でいっぱいだった。
初志貫徹!コイツは戦争如きで自分を見失ってなどいなかったのだ!
「戦闘なんぞした所で肉屋のツケなど払えん!」後の世に残るセリスの名言である。
今回の農園の散策も単にキノコ事業の候補地の選定をしていただけだったのだ!
そして事件が起こる!
「あー???」ドッポーーーン!!「お嬢様ーーーーー?!?!」
蓮沼の脇に良い感じのキノコ栽培の場所を見つけて駆け寄ろうとしたら木の根っこにコケッと躓き蓮沼を目掛けてダイナミックに頭からダイブするアホ令嬢!
「あぼぼぼぼ???いやーん?」幸いこの蓮沼はセリスの腰程度の水位しかないので溺れる事はないが全身びしょ濡れになった公爵令嬢。
「あううう・・・寒い」
「もはやこれまでです・・・帰りましょう」
「・・・・・・・はい」
もう日が昇って暖かくなって来たとは言え10月の晩秋・・・さすがに帰って着替えん事には風邪をひいてしまう。
取り返しの付かない悲惨な状態にトボトボと家路に着く2人。
カポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポ
セリスが歩く度にカポカポと靴から音が鳴る。
「お嬢様?カポカポ煩いです」
「なら肩車してくれい」カポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポ
「絶対に嫌ですぅ」
ここで被害拡大をさせたらどれだけミミリーに怒られるか分かったモンでないのだ。
しかしこれで牛の○○○を踏んだ事実は消えたので内心少しホッとしている2人。
そして帰宅。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
玄関先で、ずぶ濡れの主を無表情で眺めているミミリー様・・・・・・・
笑ってない目がめちゃくちゃ怖いです。
「えへへへへへ、やっちゃいましたぁ、ごめんなさぁい、えへへへへ」目一杯ぶりっ子を頑張るセリス。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・○○○令嬢」
ぶりっ子セリスを見てボソっと呟くミミリー。
「酷っ?!さすがに○○○令嬢は酷くない?!せっかく可愛くごめんなさいしてるのに?!」
「じゃあ今のお嬢様の状態を的確に表現出来る言葉を教えて貰えます?
だってお嬢様は牛の○○○を踏みましたよね?」
ミミリーにはセリスが牛の○○○を踏んだ事などお見通しなのだ!
「?!?!」ピンポイントで図星を突かれて驚愕の余りに絶句するフェナ・・・ミミリーには千里眼が有るのか?!
「なっなぜ?!証拠は全て水に流れたのに?!」
「だって靴の水避けの油が全部取れてますもの?
その油は結構強くて池に落ちた程度で落ちる物ではありません。
靴を水に漬けて思い切り擦りましたよね?それだけムキになって擦る汚れとなると・・・
考えられる事は牛の○○○を踏んだ事くらいしか・・・」
「「すみませんでしたぁーーーーー!!!」」
プロのコーディネーターに小娘共の浅知恵など通用しないのだ!
ずぶ濡れになった挙げ句に牛の○○○を踏んだ事までバレてしまう。
「ふう・・・さて?・・・・・・・・今回は徹底的に洗うぞ?さっさと付いて来い○○○令嬢」
「・・・・・・・・・・はい」カポカポカポカポカポカポカポカポカポ
こうしてお風呂場までドナドナされて行く○○○令嬢セリス。
そして5日後には本格的に「キノコ栽培」栽培事業に乗り出したのだった。
全然懲りてねえなコイツ。