桜散る散る卒業イベント1
そして迎えた卒業式。
わたしはいま在校生として見送る立場で出席してる。
リハビリの日々で三学期はほとんど授業に出られなかったんだ。卒業試験を受けるまでもなく、あっけなく留年が決定したって感じ。
「……この感謝の言葉をもって挨拶を終らせていただきます。卒業生代表、ダンジュウロウ・ササーキ」
体育館に大きな拍手が湧き起こる。
卒業生代表挨拶は主席で卒業のダンジュウロウが務めることに。
万年二位のダンジュウロウだったけど、実は山田も留年することになったんだ。
山田の場合はテロ騒ぎの後処理で授業どころじゃなかったみたい。
本来なら王様が仕切るところを、どうしても自分が前に出るって言ってきかなかったんだって。
理由はわたしが撃たれて重傷を負ったから。
国内に巣食うテロ組織の残党を、怒りマックスな山田がみるみるうちに検挙していったって話。
そんなわけで今日学園を卒業するのは、ダンジュウロウとジュリエッタ、そしてロレンツォ王子の三人だけに。
え? マサト?
マサトは山田の護衛だからね。残党狩りにもお供して、やっぱり留年の憂き目にあって。
本人はあんま気にしてないみたいだったけど、まだ勉強するのかぁってトコだけため息交じりにぼやいてた。
「卒業おめでとう、ジュリエッタ」
「ありがとうございます、ハナコ様」
卒業証書片手に、未希とダンジュウロウが並んでやってきた。
このふたり、最近なんか良さげな雰囲気なんですけど?
あとで未希をつついて、どうなってるのかを探ってみなきゃ。
「ダンジュウロウ様も。卒業生代表の挨拶、なかなか凛々しかったですわよ」
「なんとも複雑な心境だがな……」
「あら、主席卒業には変わりませんもの。胸を張ってよろしいのではなくって?」
本当なら卒業生代表挨拶は、ずっと成績トップを走ってた山田が務めるはずだったからね。
でも山田の優秀さはメインヒーローチートだし?
ダンジュウロウも十分できるオトコだよ。もっと自信を持ってくれたまえ。
「ほらふたりともそこに並んで? わたくしが記念撮影してあげますわ」
この記憶オーブをネタにして、これから先ずっと未希のことからかってやるんだ。
未希はダンジュウロウと同じ大学に行くから、このままくっついちゃえって思ってる。
「ハナコ様!」
「あらみなさん、卒業おめでとう。今日は素敵な卒業式だったわね」
取り巻きの令嬢たちがぞろぞろとやってきて。
それぞれが卒業証書と花束を抱えて、いかにも卒業生って姿してる。
「ハナコ様、これ、受け取ってください……!」
「どうしてわたくしに? 卒業するのはあなたたちの方でしょう?」
全員がわたしに花束を差し出してくる。
それってば、自分がもらったやつなんじゃないの?
「わたくしたち、ハナコ様の同窓でいられたこと、本当にうれしく思っていますっ」
「一緒には卒業できませんでしたが、そのことを誇りに思わせてくださいっ」
「ハナコ様と共に過ごせた三年間は、わたしたちの宝物なんですっ」
ずいっと花束を捧げられて、勢いに押されて受け取っちゃった。
「そ、そう。そんなふうに言ってもらえるとわたくしもうれしいわ」
「はいっ。わたくしたち、卒業してもハナコ様のこと、ずっとお慕いしておりますから!」
「まぁ大げさね。卒業後も社交界で会えるでしょう? みなさんのことは、これからもわたくしがしっかり面倒見て差し上げてよ?」
ほーっほっほっほ、って気づいたらふんぞり返って高笑いしてた。
ちょっと、ハナコっ。
こんなときに出しゃばって来ないでよっ。
最近、自然体で令嬢ハナコになってることが多くって。
これも日本で過ごしたハナコの記憶を、夢の中で思い出したせいかしら?
「ハナコ嬢は人望が厚いんだな」
「それも当然のことですわ。ずっとわたくしたちを引っ張ってきてくださいましたもの」
未希はからかい半分って感じだけど、ダンジュウロウの方は生温かい目を向けてくる。
「ダンジュウロウ様。ジュリエッタもわたくしの大切な学友のひとりですのよ。大学ではことさら目をかけてやってくださらないかしら?」
「ああ、ジュリエッタ嬢は俺の同窓でもあるからな。ぜひそうさせてもらおう」
ぷぷ、上手くいった。
未希ってば、ちょっと顔赤くなってるし。
ふたりの恋の進展を、今度はこっちが生温かく見守ってやろうじゃないの。
最終話は長くなったので3分割でお届けします。




