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断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~  作者: 古堂素央
第七章 いざ、最終決戦

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どっちもどっちな王子様

 右に山田、左にロレンツォ。

 その間を背後から割ってくるのがマサトとダンジュウロウで。


「ハナコ嬢のカップが冷めてしまったな。今入れなおそう」

 そりゃダンジュウロウ、左右から両手取られてたら飲めるわけないでしょう?


「お、こっちの菓子も旨いぞ。ハナコももっと食べろよ」

 だからねマサト、この状況でどうやって食べろって言うのよ。


「ハナコ、どれが食べたい? わたしが口に運ぼう。遠慮なく言うといい」

 遠慮すんに決まってんでしょうが。ってか山田、マサトの腕の下から顔近づけてくんな。


「蜜に群がる害虫ばかりで興ざめだな。ハナコ、次はふたりきりだ。いいな?」

 上手いこと言うね。でもロレンツォも同類だから。そしてなに勝手に予定決めてんのっ。


 健太とゆいなはイチャついてて使い物にならないし、リュシアン様はニコニコ笑って見てるだけだし。

 こうなったら自力で追い払うしかないわけで。

 効率よくやっつけるなら、まずは常識人から攻めるべし。


「ダンジュウロウ様、入れなおすならあちらでやってくださいませんこと?」

「いやしかし……」


 ダンジュウロウはロレンツォをブロックしながら、魔法でティーポットを浮かせてる。

 多分、わたしが困ってると思って動かずにいてくれてるんだと思うけど。


「そんな不安定な体勢でこぼしたりしたらどうなさるおつもりですの? わたくし火傷などしたくありませんわ」

「分かった。ハナコ嬢が言うならそうしよう」


 あっさり身を引いたダンジュウロウ。よし、次はお子様マサトを攻略だ。


「マサト、あなたの席は向こうでしょう。ほら、先生のところ、まだお菓子が山盛りよ?」

「お、ホントだ。サンキューハナコ、ちょっとあっちいってくる!」


 瞳を輝かせたマサト、一瞬で向かい側に移動した。あまりの速さに転移魔法使ったかと思ったし。


 てなわけで、だいぶスッキリしたけれど。

 残るは山田とロレンツォ。

 さてこの王子ふたり、どうやって引きはがそうか。


「ハナコ、今度は城でディナーでもどうだ?」

「まぁ素敵。両親とケンタもよろこびますわ」

「いや、わたしとハナコのふたりきりで」

「何を言っている、俺の方が先約だぞ。イタリーノ料理が食べられる店がある。今度そこに連れて行ってやる」

「まぁ素敵。ですが父が許可を出すかどうか……」


 一拍置いて山田とロレンツォはぎりっとにらみ合った。

 ってか、痛いっ。

 ひとの手にぎっといて、ふたりとも力入れないでよ!


「それよりも久しぶりに城の塔に昇らないか? ハナコはあそこからの眺めが好きだったろう」

「まぁ素敵。子供のころを思い出しますわね。風が強くないとよろしいのですけれど」

「見飽きた街を見下ろすくらいなら、俺がイタリーノの話をしてやる。科学技術が進歩した我が国は面白いものがたくさんあるからな」

「心配は無用だ。どんなに風が吹こうと寒かろうと、わたしの魔法でハナコを守ってやれる」


 かぶせ気味に言い合う山田とロレンツォ。

 ふたりして、なに子供みたいに張り合ってんの?


「魔法に頼りきりの古臭いこの国よりも、イタリーノには便利で革新的な物が山ほどあるぞ」

「魔力を持つことはヤーマダ国の民の誇りだ。ハナコもそう思うだろう?」

「そうですわね。わたくしの魔力は矮小(わいしょう)ですが……」

「イタリーノ国は物にあふれる豊かな国だ。ハナコも興味惹かれるだろう?」

「そうですわね。イタリーノは活気がある国と耳にしますし……」


 妙な間が一瞬空いて、再び応酬が始まった。


「ヤーマダ国は伝統ある国だからな。慎ましやかな国民性も頷けるというものだ。な、ハナコ」

「イタリーノ国は自由を重んじているがな。探求心ある国民性こそが国の発展につながっているのだ、ハナコ」

「魔法のない生活など想像もできないだろう、ハナコ」

「想像力の無さはそのまま向上心のなさにつながると思わないか、ハナコ」

「国の安定を築くことこそが王族の務めだ、ハナコ」

「国のさらなる繁栄を求めるのが王族だ、ハナコ」


 にらみ合う山田とロレンツォ、わたしなんかそっちのけだし。

 ついでのように名前呼ばれてるけど、口を挟めるような雰囲気じゃないんですけど。


「魔法こそ究極だ、ハナコ!」

「科学こそ至高だ、ハナコ!」


 こんな状態でどっちか選べとか、わたしに言わせればどっちもどっちだっつうの。

 ってか、この調子じゃいつまで経っても(らち)が明かないじゃんか。


「もう! いい加減にしてくださいませっ」


 目についたティッシュを立て続けに魔法で引き抜いた。

 弾丸ティッシュはふたりの鼻を目がけ、ズボッっと穴にはまり込む。


「ふごっ」

「せっかくたのしいお茶会をと思っておりましたのに! おふたりのせいで台無しですわっ」


 あっけに取られているその隙に、山田とロレンツォから手を引きはがした。

 乱暴に椅子から立ち上がると、急なめまいに襲われる。


「姉上……!」

「これはいけませんな」


 健太が支えてくれたから、なんとか倒れずに済んだけど。

 魔力を使った反動からか、まだ景色がグルグル回ってる。


「やだぁ、ハナコ様、大丈夫ですかぁ?」


 大丈夫じゃない人間にソレを聞く?

 っていうか、ティッシュをたかが四枚飛ばしただけでこの状況……我ながらへっぽこ過ぎるっ。


「ハナコ嬢は魔力切れを起こしている様子。大事を取ってすぐに家に連れて帰ってくだされ」

「分かりました、先生。ではシュン王子、俺たち今日はこれで失礼させてもらいます」


 健太が転移魔法を使う瞬間、鼻ティッシュの山田とロレンツォと目が合って。

 けんか両成敗ってことで、どっちの肩も持たないからね!


 ってか、なにこの三角関係。

 めんどくさいこと、この上ないんですけどっ。


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