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悪役令嬢だなんて聞いてない

 心配する山田を説得して、屋敷に帰り着くまでジュリエッタが付き添ってくれることになった。

 あのウザい山田を振り切ってくれて、マジでありがとうジュリエッタ!


 歓喜に沸くわたしの心とは裏腹に、ふたりきりの馬車の中はやけに静かだ。


「ジュリエッタ……今日は迷惑をかけたわね」

「いいえ、ハナコ様がご無事で何よりでしたわ」


 恐る恐る話しかけるも、にっこりと返される。

 そこで会話は終了してしまった。


 ジュリエッタは伯爵令嬢で、公爵令嬢であるハナコの取り巻きのひとりだ。かといって特別に仲がいいわけでもない。


 他の令嬢のように媚びへつらうこともしてこないし、いつも物静かにハナコのそばにいるだけだった。


 きっと立場上、仕方なくハナコの取り巻きやってんだよね。

 記憶を思い出した今、そう客観視できる。


(にしても、やっぱり未希そっくり……)


 ジュリエッタと呼ぶには、もはや抵抗感がありすぎだ。それでなくても日本人形のような顔立ちだし。


「わたくしの顔がどうかいたしまして……?」

「な、なんでもないわ」


 びくっとして、ガン見していた視線を逸らした。だって、機嫌を損ねた未希ほど怖いものはないんだよ?

 そりゃ、ジュリエッタは未希じゃないって分かってるけどさ。


 ハナコとして生きてきた記憶はしっかりある。

 だけど華子わたしの意識が邪魔をして、これまでのように公爵令嬢の態度がうまく取れそうもないんだけど。


(山田も普通に王子してて記憶とかなさそうだったな……)


 あー、頭痛い。

 ついさっきまで何の疑問もなく過ごしていた日常が、疑問ありまくりで一体どうすりゃいいんだ。


「せめて未希がなぁ……」

「わたしがどうしたって言うのよ?」

「うん、未希だけでも記憶があればすっごく心強いのに……って、え?」


 なんか今、何気に会話してなかった?


 ぽかんと顔を上げたわたしを見て、ジュリエッタがにやりと笑い返してきた。


「華子、あんたやっぱり思い出してたんだ」

「み、未希……? ほんとに未希なの!?」


 頷く未希に、思わずがばっと抱きついた。

 とたんにいやな顔をされ、ぐいっと肘で押し戻される。


「ちょっとやめてよ、暑苦しい」

「あああっ、やっぱ本物の未希だっ」


 幼馴染にすら容赦のないこの塩対応、まさに未希って感じだわ。感激しすぎて涙出そう。


「でもどうして今まで黙ってたのよ」

「言えるわけないじゃない。だってあんた普通に高慢ちきな悪役令嬢やってたし」

「あー、まぁそりゃそうか……」


 記憶が戻る前のハナコ(わたし)にそんなこと言おうものなら、ジュリエッタの立場は悪いものになってただろう。不敬だなんだと責め立てる自分の姿が目に浮かぶ。


 公爵令嬢なんだから人より偉いのは当たり前。ちょっと前まで本気でそう思ってた。


「うわ、ハナコ激ヤバじゃん」

「そうなんだよねぇ。でもよかった、華子が正気を取り戻してくれて。このままじゃ、あんた断罪コース一直線だったし」

「え?」

「わたしもそばにいてずっと忍びなかったんだよね。いくらゲームの悪役令嬢って言ってもさ、幼馴染とおんなじ顔した人間がギロチンに掛けられて首飛んじゃうなんて」

「は? ゲーム? 悪役令嬢?」


 っていうか、首飛んじゃうってなにっ。


「華子、覚えてないの? この世界、昔プレイした乙女ゲームのまんまじゃない」


 じゃない、と言われましても……。

 情報量が多すぎて、ぱちくりと未希の顔を見た。


「未希、変な冗談……」

「こんな冗談言うくらいなら、さけるチーズを裂けるだけ裂いてホウキでも作った方が一億万倍マシよ」


 どんな例え?

 てか、確かに未希はこんなくだらない嘘をつくようなやつではないか。


「じゃあ、ハナコ(わたし)が悪役令嬢って言うのは……」

「うん本当の話。今まで見てきた感じだと、あんたゲームのストーリー、八割がたなぞってるよ?」


 前世、恨まれて転落死。

 今世、(うと)まれてさらし首。


 ってか、何それ、あーりーえーなーい――――っ!!


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