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断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~  作者: 古堂素央
第六章 初恋は時空を超えて

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ポンコツ王子

「……っていうことがあってね」

「へぇ、王子がねぇ。ま、なんにせよ、試験合格オメデト」


 未希ちゃん、ココロのこもらないお言葉アリガトウ。

 ギロチンエンドの可能性が無くなってきて、最近あんま親身に話を聞いてくれないんですけど。


 いいわよ。今夜は久々のパジャマパーティーだから、思いっきり愚痴吐きまくったる。


 大きなベッドの上で、トレーに乗せたお菓子をつまむ。眠れなくなるといけないから、飲み物はハーブティーを用意して。


「にしてもさ、山田のヤツあきらめ悪すぎない? 男らしくないって言うか優柔不断っていうか。王子なんだから、キッパリすっぱり切り替えろって感じ」

「華子、あんた知らないの? シュン王子ってかなりの切れ者だし冷徹で有名よ?」

「は? よそ見して壁にぶつかるような男が?」


 呆れたように言うと、目の前にいきなり手をつないだ健太と長谷川が現れた。

 ふたり分の重みでベッドが揺れる。こぼれそうなカップはとっさに未希が魔法で浮かせてくれた。


「うわ、びっくりしたっ。あんたたち、来るなとは言わないからせめて扉から入ってきてよ」

「華子先輩、ゆいなまだ自宅謹慎中なんですよ? 出かけてるのバレたら怒られちゃうじゃないですかぁ」

「そうだよ、姉ちゃん。ゆいながまたつかまったりしたら可哀そうだろ?」


 健太はすっかりゆいなにメロメロで。お前誰だよってくらいの変貌へんぼうぶり。

 転移魔法使って、毎日互いの部屋を行き来してるみたい。


「ゆいな、そのうち俺の婚約者として、大腕を振って玄関から来れるようにしてあげるから」

「ありがとう、けんたん。わたし早く公爵夫人になりたいな♡」


 ったく、長谷川を妹って呼ぶことになるなんて。

 健太、考え直すなら今のうちだよ?


「健太も長谷川も。いちゃつくなら余所よそでやって」

「もう、華子先輩ってば。もうすぐ家族になるんですよぉ? 長谷川とか他人行儀じゃなくって、ゆいなって呼んでくださいよぉ」

「はいはい、ゆいなね」


 ゆいなもゲームの記憶ある同盟に加わったから、気に食わないとか言ってらんないし。

 健太のためにも姉ちゃん黙って耐え忍ぶよ。


「そうだ、姉ちゃん。そろそろシュン王子許してあげてくんない?」

「は? なんでよ? イヤに決まってるでしょ」

「そんなこと言わないでさ。シュン王子、あれ以来まったく使いものにならなくって。生徒会の執務が滞って、俺たち本当に困ってるんだ」


 ああ、取り巻き令嬢たちもそんなこと言ってたっけ。

 でもわたしには関係ないし。


「頼むよ、姉ちゃん。マサト先輩は力仕事以外あてにならないし、俺とダンジュウロウ先輩でなんとか回してるって状態なんだ」

「そぉですよぉ。健太くんが忙しいと、ゆいなとの時間が短くなっちゃうじゃないですかぁ」

「それをわたしのせいにしないでよ。直接山田に物申せばいいじゃない」

「そんなことならとっくにやってるよ。まったく効果がないからこうして姉ちゃんに頼んでるんだろ」


 なにその言い方。まるでわたしが悪者みたいじゃんか。


「もう、毎日抜け殻みたいでさ。あんなポンコツな王子、今までなら絶対にあり得ないし」

「あり得ないだなんて大げさな。山田は普段からポンコツでしょ」

「なぁ、姉ちゃん。姉ちゃんの目にどう映ってるかは知らないけどさ、シュン王子って多分姉ちゃんが思ってるような人間じゃないよ」


 じゃあどういう人間だって言うのよ。

 山田なんか、わたしの手を握るか、匂い嗅ぐか、鼻血出すくらいしかできない変態じゃない。


「シュン王子は即決即断即行動ってタイプだよ。周りへの指示も的確だし、絶対に妥協しない。非のある人間には容赦ないところもあるし、尊敬できるけどそばで見ていて怖い人だって俺は思ってる」

「そうそう、ゆいなも一回シュン王子怒らせちゃってぇ。泣き落としもきかなくって本当に怖かったですよ?」

「あの山田が?」

「ほら言ったでしょ? 王子は切れ者で冷徹な人間だって」

「未希までそんな……」


 だからってみんなして責めるように言わなくったって。

 山田がどんな人間だろうとわたしには関係ないんだし。


「そういった意味では、シュン王子って山田先輩と同じなんだよな。日本での記憶がないだけで、もしかたらふたりは本質的には同じ人間なんじゃないのかな?」

「ああ、だから王子ってやたらと華子に執着するのかもね」

「山田先輩って姉ちゃんのこと溺愛してたからなぁ」

「ちょっとやめてよ、ふたりとも! 未希だって昔は昔、今は今って言ってたじゃない」

「あー、ハイハイ。そうだったね」


 なんか投げやりっ。


「ごめん、姉ちゃん。でも俺さ、別にシュン王子を好きになってくれって言ってるわけじゃないんだ。ただ前みたいにさ、普通に会話できる仲に戻って欲しいってだけなんだけど」

「健太の言いたいことは分かるけど……」


 山田って、一許すと十まで踏み込んでくるからヤなんだよね。

 一回でもいい顔すると、なし崩しにどうにかなっちゃいそうで。


「とりあえず考えてみてもいいけど。でも今すぐは無理だからね?」

「ありがとう、姉ちゃん。俺もなんだけど、ダンジュウロウ先輩が過労で死にそうでさ。前向きに検討お願いしますっ」


 ぱんって手を合わせて拝まれたって、こっちも困るんですけど。

 前みたいに普通に接しろって言われてもさ、どうやってきっかけ作ればいいんだか。


 ま、もうすぐ冬休みに入るし?

 適当に考えてるフリでもしとけば、ウヤムヤにできるっしょ。


 そんなふうに楽観的に思ってたら、きっかけは向こうの方からやってきて。


 はぁ、なんて言うか、運命を呪うしかない!?


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