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断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~  作者: 古堂素央
第五章 天は我に味方せり

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健太、裏切りのバラード2

「もう! 何なのよ、健太っ」

「だから姉ちゃんが今すぐ未希姉ぇ連れて来いって……」


 さほど待たずに、健太と手をつないだ未希がぱっと部屋に現れた。ネグリジェ姿だからやっぱ寝てたよね。


 ぬおっ、健太ってば頬が片方腫れあがってるっ。

 あれは問答無用で鉄拳食らったんだな。焦げた跡も残ってるから、電撃攻撃のおまけつきだったのかも。


「ちょっと華子、こんな時間に一体どういうつもり!」

「あは、ジュリエッタ様ってホントに松崎先輩だったんだぁ」


 ユイナの声に動きを止めた未希が、すっと真顔になった。

 さすがに未希も呼ばれた意味を理解したみたい。あ、松崎ってのは未希の苗字ね。


「長谷川……ゆい、な?」

「こんばんはぁ。お久しぶりです、松崎先輩」


 ベッドの上でくつろぐ姿に、未希の怒りの矛先ほこさきが健太へと移動して。


「健太、あんた……」

「未希姉ぇタンマっ、いま順を追って話すから!」


 で、健太とユイナこと長谷川は仲良く並んで床に正座。

 その正面に未希とわたしが仁王立ちして尋問タイムが始まった。


「まず初めに確認しとくけど。健太はゲームに取り込まれて今こうなってるわけじゃないのね?」

「うん、この状況は森健太としての俺の意思」

「分かった」


 すんっとした表情のまま、淡々と未希が質問していく。

 未希の場合、このモードがいちばん危険なんだよ。健太、理由によってはとんでもない目に合わされるかも。

 っていうか、未希の鉄拳と電撃受けてすでにズタボロだったっけか。


「健太くんかわいそう~。いま、ゆいなが回復魔法かけてあげるね。いたいのいたいの飛んでけ~っ」

「わっ、ゆいな、ちょっと待っ……いってぇええぇえっ!」


 ぎゃっ、未希お得意の「回復魔法かけると傷が悪化する呪い」まで使ってるっぽい。

 これって未希にしか解除できないらしくって。よからぬ組織の手に渡ったら、間違いなく悪用されるヤヴァいヤツ。


「すごぉい、ゆいなも呪い(ソレ)やってみたい! 先輩、やり方教えてもらってもいいですかぁ?」

「高いわよ」

「やだ、がめつい~」


 長谷川ってば、あの未希相手に挑戦者チャレンジャーだな。

 ひぇっ、未希がますます能面化してるっ。横にいるわたしが怖いから、それ以上挑発するなっつうの。


「で、健太。いつからこの子とこんななってたの?」

「本格的にゲームの話を持ち出したのはゆいなが釈放されたあと。学園祭前からも偵察がてら、ちょいちょい軽い相談には乗ってたんだけど」

「ひどいよ健太。相談もなしに勝手にこっちの事情をバラすだなんて」

「それともうちらに記憶があること、先に感づかれてたとか?」

「ううん、俺が話すまで、ゆいなはまったく気づいてなかったし」


 こんな状況でも冷静でいられる未希はさすがだな。だけど姉ちゃん的には、一体どういうつもりってなるのは当然で。


 あ、いま長谷川にふふんってされた。

 なぁに、あの勝ち誇った顔っ。なんか浮気女に馬鹿にされた彼女の気分っ。


「じゃあなんで今まで黙ってたのよ? 逐一(ちくいち)報告するよう言ってたでしょ?」

「もう少しゆいなが落ち着いてから、ちゃんと話そうと思ってたんだ。姉ちゃんを断罪ざまぁから守る会はもう解散してたしさ」


 ゆいなが落ち着いてからって。

 どう見ても長谷川、ここでくつろぎまくってたんですけど?

 ってか、今まで開いてた作戦会議、いつからそんな名前だったんだ。


「けんたん、ゆいなのこと大事に思ってくれてありがとう♡」

「うん、ゆいなたんはこれからも俺が守るからね♡」

「やぁん、ゆいなうれぴ~」


 めきょっ、と聞きなれない音がして。

 見ると未希の足元の床がへこんでた。

 っていうか未希、破壊するのは健太の部屋だけにしといてよっ。


「健太、あんた真面目にやらないとしばき倒すわよ?」

「うわっ未希姉ぇ、いま全部話すから……! いててっ」


 未希、絶対零度の無表情だよ。

 にしても健太の傷、見てる方も痛いって思っちゃう。


「ねぇ未希、しゃべりにくそうだからとりあえず健太回復させたげて」

「仕方ないわね」


 目線で健太にありがとうって感じにされたけど。

 まだ許したってわけじゃないんだから。

 小悪魔ゆいなにコロッとまいっちゃうなんてさ、健太にはホント失望したし。ソコんとこきっちり説明してもらわないと。


「言っとくけど、俺、ゆいなに誘惑されたとかじゃないからね?」

「じゃあこの状況は一体なんだっていうのよ?」

「なんていうか、ゆいなの状況が俺たちが思ってたよか酷いことになっててさ」

「酷いこと? ああ、国に拘束されてた件ね」

「いや、その疑いはきちんと晴れたんだ。な、ゆいな」


 うんって小さく返した長谷川、なんかさっきよりしおらしくなってる。

 ってか、わたしと未希に泣き落としなんて通用しないわよ。


「だったらほかに何があるってのよ?」


 未希の言葉に、健太は一度長谷川の顔を見た。

 言ってもいいかと目で問う健太に、長谷川がこくりと頷き返す。なんかふたりだけの世界作ってて。

 健太ってばホントどうしちゃったの?

 完全に長谷川にほだされちゃってる様子に、姉ちゃんかなりショックなんですけど。


「ゆいなはさ、このゲームの世界で無限ループのハマってたらしくて」

「無限ループ? 死に戻りってヤツ?」

「違います。エンディングを迎えると、一瞬でゲームのオープニングに戻っちゃうんです」


 なんと。

 いくら好きなゲームでも、それが自分の現実となったらさすがにキツイだろうな。


「初めはようやくゲームが始まったって、気軽な気持ちでループも楽しんでたんですけど……」

「ようやく? ってことは長谷川は生まれたときから前世の記憶があったってこと?」

「途中で思い出したって感じです。小さいときに馬車にひかれそうになって、その時に」


 ゲーム設定ではそんときにヒロインが魔法に目覚めるんだったっけか。それで強大な魔力を見出されて男爵家の養女になるんだよね。


「わたし、下町生まれで家もすごく貧乏で。だから記憶を思い出したときは超ラッキーって思いました。だけど……」


 そこまで言って長谷川は次の言葉をつまらせた。

 健太も気づかわし気に長谷川の手を握ったりして。いつもの計算にしては、今にもマジ泣きしそうな顔してる。


「ゆいな、無理しなくていい。あとは俺が話すよ」

「ううん、自分で話す。その方が先輩たちも納得してくれると思うから」


 心を決めたように、長谷川はぽつりぽつりと続きを語り始めた。


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