表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~  作者: 古堂素央
第三章 イベントは危険な香り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/78

ユイナとゲームの強制力

 無駄に大きなベッドの上で、わたしと未希と健太で輪になって座った。


 真ん中には飲み物とお菓子の乗ったトレー。今夜はパジャマパーティーだから、普段着の健太にはナイトキャップをかぶせておいた。


(こういうのは雰囲気大事だし)


 そんなおかしなことにこだわるくらい、わたしは動揺してたんだと思う。


「ケンタって、ほんとに弟の健太なの?」


 いや、今も弟なんだけどさ。やっぱわたしかなり動揺してる。


「うん、姉ちゃん。俺、中身は森健太」

「うわっ、そのしゃべり方! やっぱ本物の健太だっ」


 感動のあまり抱きついた。

 健太も照れくさそうに背中をポンポンしてくれる。


「やっぱりね、そうじゃないかってちょっと前から思ってたんだ。飲み物こぼれる。いいから華子は今すぐ落ちつけ」


 未希ちゃん冷たいっ。

 感動の再会じゃん。って顔は毎日合わせてたけど。


「でも未希はどうして健太に記憶があるって分かったの?」

「さっきも言ったけど、健太はあのゲーム……『トキメキずっきゅん♡ピュアLOVEドキドキ☆マジカル学園』のプレイ経験あったからね」


 健太ってば乙女ゲームなんかやってたんか。

 ってか、タイトルダサっ。


「で、健太はいつから目覚めてたわけ?」

「わりと物心ついたころから」

「そんな初めからなんだ……」

「でも姉ちゃんはさ、顔はそっくりでも中身はまんまゲームの悪役令嬢だったし。今までは断罪されないよう、ハラハラ見守ってた感じ」

「健太……」


 姉思いの弟で姉ちゃんうれしいよ。


「あーソレ、分かる。いくらゲームのキャラって言っても、身内と同じ顔が飛んじゃうのはね~」

「だろ? なんか毎晩夢に見そうだし、さすがにソレはきっついよな~」


 って、自分の精神衛生のためかいっ。


「けどさ、ここんトコ急にハナコ姉上の言動がおかしくなってきてさ」

「あ、通学中に馬車降りた件とか?」

「そう、ハナコ姉上が人助けなんてまずあり得ないし。そこに来て未希()ぇそっくりの令嬢が頻繁に家に出入りするようになっただろ? これはもしかしたら……って」

「そんでうちらの動向を見張ってたってわけか」

「未希姉ぇ、正解」


 おお、未希も健太も洞察力すごいな。


「にしても姉ちゃん、どうやって記憶戻ったの?」

「階段でユイナ・ハセガー助けようとしてさ。そんときに頭打ったかなんかしたみたい」


 とりあえずこれまであったことを、かいつまんで説明した。


「そっか。ユイナのヤツ、そんなことを……」


 呟いたケンタに、わたしと未希は目を見合わせた。


 ケンタは攻略対象のひとりだ。

 やっぱりユイナのこと、好きになったりしちゃってるんだろうか。


 うう、姉ちゃんとしては聞きづらい。好きって言われても、相手があのユイナだと思うとものすごく複雑だ。


 そんなこと考えてたら先に未希が口を開いた。


「ね、健太。ヒロインのユイナって攻略対象的にはどんな存在?」

「どんな、か。正直、別にって感じなんだけど」


 別に!

 そっか、そっか、姉ちゃんひと安心だよ。


「たださ……」


 ただ? なにその意味深な感じ。


「時々、自分が自分じゃないみたいになるときがあって。知らないうちに、何か言ったりやったりしてることがあるんだ」

「もしかしてそれって……」

「ゲームの強制力ってやつ?」

「俺もそうだと思ってる。多分ゲームのイベントに組み込まれて、強制的に動かされてるんじゃないかな」

「やっぱあったか、強制力」


 マジですか。

 そうなるとわたしのギロチンエンドも、回避するのが難しいってこと?


「そのときだけはユイナのことがすごく愛おしく感じるんだ。普段はなんとも思ってないのにさ」

「あー、それで生徒会室ではみんなユイナに塩対応なんだ」

「うん、マサト先輩たちも俺と同じような感覚なんじゃないかな? 特別そういう話をしたわけじゃないんだけど」


 ギロチン台が一歩また一歩と近づいてきてるっ。


 無言になったわたしに気づいたのか、健太が頭ポンポンしてくれた。

 うう、姉ちゃん涙出そう。


「でも最近、コツをつかんできたんだ」

「コツ?」

「うん、俺ルートのイベント、ここんとこほとんど起きてないと思う。強制参加させられるのは、ヒロインがルート決めするイベントだけって感じ」

「ルート決め? どの攻略対象のルートに入るか、ヒロインが決める選択イベントってこと?」

「そう、そんな感じ」


 そっか。ユイナの選択次第でデッドエンドは避けられるのか。


 わたしがスペシャルヤバい目に合うのは、王子ルートのギロチンエンドと、ケンタルートの串刺しエンドだけらしい。

 それ以外を選択してくれれば、ひとまず命は助かりそう。ほかのルートも国外追放とかはあるんだけどね。


「ま、俺ルートはまずないと思っててくれていいし」

「わたしの見立てなんだけど……今んとこユイナ、王子ルート選択してない?」

「未希姉ぇもそう思う?」


 ふぉっ、やっぱギロチンエンドなのっ!?


「俺の記憶だと、次あたりユイナのお茶会イベントが起こるはずなんだ」

「お茶会イベント……? ああ、学園の裏庭でヒロインが攻略対象たちと開くやつね」

「確かそれが、最終的なルート決めイベントだったと思う」

「お茶を入れるシーンで選択肢が出るんだっけ。どの攻略対象のカップに注ぎますか? って」

「で、いちばん最初に選んだ対象のルートが本格的に始まる、と」


 まさに運命の分かれ道?

 生殺与奪の権をユイナに握られてるのが、本当に歯がゆいんだけどっ。


「じゃあそのイベントの結果見て、今後の対策を立てるしかないね」

「うん、だから今アレコレ心配してもしょうがない。てなわけで姉ちゃん、とりあえず今夜は昔話で盛り上がろう?」

「健太……」


 うう、なんて姉思いのやさしい弟なんだ。

 姉ちゃんうれしくて号泣寸前だよ。


辛気(しんき)臭い顔続けられると、明日から飯マズくなるし」


 ってそっちかいっ。


 それから思い出話をいっぱいした。

 三人ともちっちゃいころからずっと一緒にいたから、話題はなかなか尽きなくて。


「あ、姉ちゃん寝ちゃってら」


 ううん、まだ起きてるよ。まぶたが重くて開かないだけ。


 ダンジュウロウに借りた本がさ、けっこうおもしろくって。明け方近くまで読んじゃったのがマズかったな。今夜はもう眠くてしかたないや。


「ほんと、華子のためにこうして集まってやってるってのに」


 うん、未希、いつもありがとうね。

 文句ばっかり言われるけど、心配してくれてるのちゃんと分かってる。


「平和そうな寝顔。あほ(づら)とも言うけど」


 あんだとぉ?

 ああ、ダメだ。言い返したいのにもう寝落ちしそう。


「……なぁ、未希姉ぇ」

「何?」

「華子姉ちゃん、やっぱりあのとき死んだんだよな……?」

「うん……今、華子がここでこうしているってことは、多分そう言うことなんだと思う」

「そっか。やっぱそうだよな……」


 なんかふたりしてわたしのこと話してるみたいだけど。


 もう限界。


 おやすみなさい、よい夢を――。


NEXT ▶ 第四章 その王子、瓶底眼鏡につき


 よろしければブックマーク・いいね・評価などしていただけると作者のモチベーションにつながるので反応あるとうれしいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ