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断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~  作者: 古堂素央
第三章 イベントは危険な香り

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逆ハー? 何ソレおいしいの?

「あ、あの、ハナコお姉様。頑張って焼いたんです。よかったらコレっ」

「あら、ありがとう。お茶の時間にでもいただくわ」

「きゃっ、ありがとうございますっ」


 可愛らしくラッピングされた焼き菓子を受け取ると、その女生徒は頬を染めて走り去っていった。


 最近、素行をよくしているせいか、下級生からも声を掛けられることが多くて。

 しめしめ、いい兆候。

 このまま悪役令嬢のイメージが消えてくれるといいんだけど。


 今いるのは中庭のベンチ。

 本読みながら未希が来るのを待ってるところ。

 単独行動は危険ってことで、放課後に毎日落ち合うようにしてるんだ。


 ジュリエッタはモブのわりに優秀で、魔法学とか特別カリキュラムが多いんだよね。だから授業もずっと一緒ってわけにはいかなくて。

 なるべくひとりきりにならないよう、こうして人目の多いところで待つようにしてる。


 さっさと帰っちゃうのが一番なんだろうけど、それだと情報交換ができないんだよね。

 昼間はほかの取り巻き令嬢たちがいて、ゲームの話なんてできないしさ。


(それに未希ってば、休日は忙しいって時間取ってくれないし……)


 どうせ読むか書くかしてるんだ。うう、薄い本より薄っぺらい友情だよ。


 そのとき急に、開いていた本に影が差した。


「ハナコ嬢、ここにいたのか」

「ダンジュウロウ様、ごきげんよう」


 ん? 君と待ち合わせをした覚えはないんだが?

 ってか、なぜ隣に腰かける?


「図書館ではありがとうございました」

「いや、大したことはしていない」


 そこで会話が終わって、なんというか奇妙な間があいた。

 一体君は何しに来たんだ? 元々世間話をする仲でもないし。


「今日は何かご用でも……?」

「最近読んだ歴史小説が思いのほか面白かったんだ。それでハナコ嬢にもどうかと思って持ってきたんだが」

「まぁ、わざわざわたくしに……?」


 手渡された本はそこそこの厚みがあった。歴史小説は嫌いじゃないけど、あまり詳しすぎるのはちょっと苦手だ。

 受け取った手前、ぱらぱらとページをめくってみる。ぱっと見、あらすじ的にはまぁまぁ好みかも?


「わりと読みやすいと思う」

「本当に借りてもよろしいの?」

「ああ、返すのはいつでもいい」


 おお、新規ジャンル開拓だ。ロマンス小説は図書館にあまり数置いてなくて、最近は探すのに苦労してたんだ。


「おっ、ハナコ。なんかいいもん持ってんな」

「マサト!? ちょっとソレ、わたくしがもらったのよ」


 いきなり後ろから手が伸びてきて、膝に乗せてあった焼き菓子を奪われた。

 それにびっくりするから突然耳元で声かけてくんなっ。


「だったら生徒会室で一緒に食おうぜ。ちょうど腹減ってたんだ」


 腕をつかむな。引っ張るな。ってか、この前の威嚇はどうした? なんで急にフレンドリーになってんだ?


 ダンジュウロウ君、黙って見てないでこのパラペコをどうにかしてくれたまえ。って、なぜ君も後ろを付いて来る?


 っていうより、生徒会室とかマジ勘弁して!

 そんな魔窟に行ったりしたら、あとで怒られるのはこのわたしなんだよっ。


「姉上? どうしてここに?」

「ケンタ、わたくし来たくて来たわけでは……」

「ユイナいねぇの? ま、いいや、適当に茶ぁ入れようぜ」


 無理やりにソファに座らされて、急ごしらえでお茶会みたいなのが始まった。


 ってか、ユイナってばお茶くみ要員やったんか? 

 まぁ、あの子、事務仕事とか出来なさそうだもんね。


「ハナコも遠慮しないで好きなの食えよ」

「いや、それは元々ハナコ嬢のものだろう」

「姉上、シナモン苦手だったよね? こっちなら食べられそうだよ?」


 ケンタがクッキーを一枚、口に放り込んでくる。

 え? あなたそんなキャラだった? そりゃ今までも仲の悪い姉弟じゃなかったけどさ。


 というよりこの状況は何? どうしてわたし、攻略対象に囲まれてんの?


「ハナコ嬢、もう一杯必要か?」

「これも旨かったぞ。ほら、こっちのも」

「姉上、口元にクリームが」


 マサトとダンジュウロウに挟まれて、逃げ場なんかないし。

 ケンタはケンタで、後ろから首に腕巻き付けてきたりするし。

 なんでみんなしてこんなに好感度爆上がりしてんの?

 っていうか、ユイナ、ヒロインの仕事ちゃんとしてんのか?


 もお、いろんなことがグルグルしすぎて、頭がキャパオーバーなんですけどっ。


「あの、こちらにハナコ様は来ていらっしゃいますか?」

「ジュリエッタ!」


 ああ~ん未希ちゃん、我が救世主よ!


「約束の場所にいらっしゃらないから心配いたしましたわ」

「ジュリエッタ嬢、よかったら一緒にどう?」

「あらケンタ様、よろしいのですか?」


 なんて感じで未希も交えて、このとんちきなお茶会はしばらく続いた。

 下校の時間が来て、ようやく解放されたんだけど。


「ハナコ様、週末にお屋敷にお伺いしてもよろしいですか?」

「ええ、もちろんよ、ジュリエッタ」

「急なお話にも関わらずありがとうございます」


 うをっ、未希の目がちっとも笑ってねぇ。


 今日、作戦会議できなかったから、わざわざ時間取ってくれたんだよねっ。

 うん、もう、最高級の茶菓子用意して待ってるからっ。


 翌日の昼過ぎ、ガクブルのままわたしは未希を迎えたのデシタ。


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