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&ビルボード

静かな街を、二人並んで歩く。

靴の音だけがビルの間に反響する。

「…さて、どこから話そうか」

「えっと、まずあなた誰…」

「あ、そうだ!自己紹介は大事だからな!」

彼は振り返り、後ろ歩きのまま話し始めた。

「俺は常磐楓(ときわかえで)。見ての通り、イケメンのお兄さんや!」

「…」

急に何を言い出してるんだろうこの人は。

「そんな顔しなくても…冗談よ冗談!」

「まあ、別にそう悪くない顔だとは思うけど…」

「そう?俺もこんな傷出来るまでは本当のイケメンだったんだけど…」

「…」

お世辞のつもりだったが、なんだか随分と難しい人らしい。

関西の人?ってみんなこういう人なのかな。

いや、流石に偏見にもほどがあるか。

「それで、アンタの名前は?」

「あ、そうだった…」

彼の勢いのせいで忘れていた。

本当は私の方から名乗るつもりだったんだけど。

「私は…皐月。緑川皐月(みどりかわさつき)。…まあなんとでも呼んでよ」

「へえ、じゃあ俺は皐月ちゃんって呼ぶわ!よろしく!」

「え、なんでちゃん付け…?」

“ちゃん”を付けて呼ばれたことが無かったために、少し困惑してしまった。

「え?親しみがある…から?」

親しみとは?

というか何でそっちが疑問形なのだろうか。

「んじゃ、そろそろ本題に入ろうか。皐月ちゃん」

彼は前に向き直し、さっきよりかは遅いスピードで歩き始めた。

「本題…って?」

「ほら、この力のことについてよ」

楓さんは歩きながら近くの岩に手をかざした。

すると岩はまるで上から強い力で潰されたかのように崩れた。

「…」

「ね?」

「ね?じゃないんですけど。そもそもその力って何?」

「ほら。何週間か前に起こったアレ、覚えてるでしょ?」

何週間前に起こったアレっていうのは、あの大爆発のこと?

「まあ、覚えてるけど…あれって何だったの?」

「それは俺にも分からんな〜。けど確実に言えるのは、アレをきっかけにこの力が目覚めたよってことだけ」

彼は空を見上げながらゆっくりと歩いている。

「俺がこの力に気付いたのは、あの街中を徘徊してるバケモンに襲われたとき。自分の身を守ろうとした時にそのバケモンが一瞬でぺしゃんこになってな、あん時はびっくりしたなあ」

「…」

私は淡々と話す楓を黙って見ている。

「んで、どうにかこの力も今ではコントロールできるようになったってわけなのよ。中々便利よ?さっきのああいう悪いやつ追い返すのにも使えるし、バケモン倒すのにも使えるし」

「…それって、みんなそんな力を持ってるものなの?」

「あー、どうなんだろ?でも俺が会った人らは全員なんらかの力は持ってたな。アンタみたいに気付いてないっぽい人も何人かいたけど」

「そうなんだ…」

私もああいう力が何かあるのだろうか。

だとしたら、なんで今まで気付けてなかったんだろう?

もし気付けていたらあのバケモノも、あの悪いやつも。

自分だけでどうにかできたかもしれないのに。

「…」

そうだ、バケモノで思い出した。

あのとき、バケモノに襲われたときに助けてくれたあの人。

確かあの人も───。

「ねえ、楓さん?」

「ん?」

「あなたの知り合いでさ、なんか…剣?刀?っぽい物を使う力を持ってる人っている?」

「刀…ああ!椿ちゃんのこと?」

「椿ちゃん…」

背が高く黄緑色の長い髪の毛をしたあの人。

どうやら“椿(つばき)”というらしい。

「それにしてもアンタ、椿ちゃんのことなんで知ってるのよ?」

「バケモノに襲われたときに、あの人に助けてもらってさ」

「そうなんだ、あの子も色んな人助けてるからな〜」

あの人、私以外の人も助けているのか。

随分とお人好しというか、なんというか。

「え?じゃあ椿ちゃんから何か話聞かなかったの?」

「聞こうとしたけど…『とにかく忘れて!』って言われて、それで逃げられた」

「逃げたの?」

「逃げた。」

あの感じは完全に逃げてた。

「うーんそうか…まああの子らしいというか…」

「あの子らしいって?」

「いや〜あの子優しい子なんだけど、結構面倒くさい子でもあってな〜」

「めんどくさい…」

「そう。多分あの子が逃げたのも、アンタのことを巻き込みたくないからだったんじゃないかね〜」

「巻き込みたくないって…何それ」

「まあそうなるのも無理ないよな…」

楓さんは続けて話す。

「実は俺たちは結構危ない仕事しててね、というのもただのバケモン退治なんだけどさ。そのバケモン退治の仕事に、力に気付いてないアンタを巻き込むのは椿ちゃん的に嫌だったんじゃない?」

「なる…ほど…」

何やら心配させてしまっていたらしい。

それにしても危ない仕事というのは…。

「あのバケモノ倒すのって仕事だったの?」

「ん、ああ。仕事っていっても給料ひとつ出ないんだけどな〜?ほとんどボランティア活動みたいな」

「そ、そう…」

別に給料のこと聞いたんじゃないんだけど。

「まああんな凶暴なやつ相手にする仕事なんて、そんなの危険に決まってるやん?そんなのに力に気付いてない人を危険な目に遭わせたくないんじゃないかねえ、あの子。能力っていうのを知ってしまったら、もう知らん顔出来なくなるかもしれんし。巻き込みたくなかったっていうのは、多分そういうこと」

「…」

あの人なりに考えた結果だったんだろうな。

だから“このことは忘れて”だなんて。

でも、それってあまりにも無責任な気がする。

「…楓さんは何でこの力のこと私に話したの?」

「え?いやまあ…そりゃアンタが知りたがってたから…え?知らない方が良かった?」

「その話がそういうことなら私に能力のこと、話さない方がよかったんじゃ…」

しばらく沈黙が続いた。

楓さんは目をずっと泳がせている。

「…あの、楓さ」

「そ、そうだ!もし良かったら俺らの職場に来ない?多分この辺で過ごすより百倍安全だけど!?」

楓さんは露骨に話題を変えた。

「職場…って?」

その焦る様子を見て私は流石にのってあげることにした。

なにより、能力のこと聞いたのは自分なわけだし。

「まあ実際は職場じゃなくて俺らの家みたいなところなんだけど。食糧とか水も貯蔵してあるし、アンタが会いたいであろう椿ちゃんもいるし、どうかなって思ってさ!」

随分と魅力的な誘いだった。

食糧と水があるのはありがたいし、この辺より安全なら是非行きたい。

でも、まだこの人のこと信じきれてもいないし。

何より、私はとても共同生活が苦手だ。

昔行った修学旅行でも、他の人たちと寝るときは少し離れてないと寝れなかった。

自分のプライベートの様子を他人に見られている、というのはとてもぞわぞわするような気分になる。

でも───。

「…じゃあ行くよ。行きたい」

力に気付けてない私が一人で過ごすより、力を使えるこの人たちに着いて行った方が生存率が上がるはず。

私はただ死にたくないだけだし、生きれる保証があるのなら行く価値は十分あると思う。

それに、まだ力のことについて聞きたいことがたくさんあるし。

今の時点ではメリットの方が大きいと思った。

「お、ほんと?んじゃ決まり!ほな早速行こか!」

楓は急に駆け足になり、あっという間に私から離れて行った。

「ちょっ…待って速いって…!」

私は小走りで足の速い彼の後を着いて行った。

まだ不安は残っているが、新しい環境に対する期待の方が少し勝っていた。

常磐楓(ときわかえで)

能力:対象の重力操作

射程距離:半径15m圏内


緑川皐月(みどりかわさつき)

能力:不明

射程距離:不明

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