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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
二章:雷鳥の騎士
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第六十三話「三人とサボる男が集まれば……」

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

そして、長らく投稿せしなくて、申し訳有りませんでした。理由としましては、本業が忙しくなった事と、執筆が中々進まなかった為です。漸く、(数日前ですが)去年の年末に執筆が進みましたので投稿を再開します!

大変お待たせしました、第二章の終盤をお楽しみ下さい


そして、


物語は、間もなく、「さん」へ移行します

パフィルは、黒い翼を羽ばたせながら礼拝堂内の天井まで上昇する。羽音は不気味な位に静寂で、風を起こしていない様に見えた。

そして、(とび)獲物(俺達)を狙うかの様に旋回を始めた。


「このッ……」


縛られている団員達から微かに声が聞こえてきた。黒い魔力を取り込んだパフィルに、文句を言い掛けていたが、声を押し殺した様だ。

黒い魔力が何なのかは分からないが、このカルトの団体にとって重要なものだったのかもしれない。


「厄介ね、的当て苦手なのよね……。でもっ!」


レヴィンはそんな事を呟きながらも、剣を天井に(かざ)す。パフィルの動きに合わせて、剣先を揺らし

ていた。パフィルはそれでも魔術を使う()振りを見せない。俺達を見下ろしながら飛行を続けていた。


格好の的だ、これなら勝てる。俺を含めて三人は思っていた筈。


でも、本当の的だったのは――。



「へ……?」


レヴィンは思わず気の抜けた声を漏らす。それは、俺とトネリもだった。


黒い槍が俺達が居る身廊の上空を覆い尽くしていた。飛行しているパフィルが隠れる程の数で、何百有るのだろうか?

俺達が呆然としているのをパフィルは嘲笑いながら無数の槍に命令を飛ばす――。


「堕ちよ」


「ウィ、ウィンニス・アティアッ!!!(風よ、殴れ)」


器用な判断は出来なかった。

俺は咄嗟に、レヴィンとトネリを左の側廊に吹き飛ばす。二人の何が起きたか分からない叫び声を聞いて、俺はゆっくりと目を閉じた。

三人で側廊へ逃げるには、魔術のコントロールが難しかった。そして、俺かレヴィンのどちらかが柱に衝突するのは免れなかった……。


黒い槍の雨。

まもなく、身廊に――俺に降り注ぐ。逃げるには、1秒遅かった。死が、走馬灯を走らせる。


カルミア……。


カルミアの笑顔……。


カルミアの微笑み……。


不思議と、カルミアしか頭の中に居なかった。それを認識したと同時に、金属の揺れる音と床が砕ける音が鳴り響く。


人生の最期に味わう痛みを、目を強く瞑りながら歯を食い縛った――。


しかし、音が鳴り止んでも痛みが来ない。

恐る恐る目を開くと、大量の黒い槍が麦畑の様に突き刺さっていた。周囲を見渡すと、俺の半径1メートル以外の身廊が槍に突き刺さっていた。


俺が呆然としていると、上から液体が俺の近くに何回か落ちた。一体なんの液体かは――察したくないけどパフィルの唾液だろう……。

上を見上げると、パフィルが指を咥えながら旋回していた。その視線の先は当然俺で、下品な笑みを浮かべている。そして、目が合うと手を振りながら俺に声を掛けてきた……。


「ごめんなさいね~♡でも、安心しなさい?坊っちゃんは痛い想い()させないわ。本当なら、坊っちゃんを捕まえて、何処かに行きたいのよね~。でも、地下の魔力が思いの(ほか)使いにくいの。だ・か・ら、待っていてね~♡」


思わずパフィルの言動に俺が寒気を感じていると、側廊からレヴィンの声が聞こえてくる。


「ニゲラ君っ!早く!」


俺は周囲の黒い槍が消えたと同時に、レヴィンとトネリの元に帰る。返事や会釈してから走る――そんな余裕が有る筈が無い……。二人とは恐らく別の意味でパフィルに狙われてるのだから……。


そんな風に怯えている俺を察しているのか、パフィルは嫌な想像を増長させる様な事を言い放つ。


「こんな湿気臭い場所を出たら、――しましょう?」


何を言ったかは聞き取れ無かった。

だけど、地下で俺にあんな事をしてきた人だ、絶対に(ろく)な事じゃないッ……。


ぜ、絶対に、捕まりたくないッ……。



側廊にある柱の影から俺達は、パフィルの動向を警戒した。パフィルは相変わらず同じ様に旋回を続けていたが、視線は変わっていた。俺達が隠れている場所を眼光を鋭くさせながら見つめていた。そして、彼女の口角は不気味に吊り上がっていた。


でも、不思議な事にパフィルは槍を飛ばして来ない。先程言っていたみたいに、俺が居るから攻撃が出来ないのかもしれない。あるいは――、


「袋小路ね。困ったわ……」


此方の側廊には、窓や外に続く扉が一切無い。地下に続く階段は有るけど、地下空洞は他に出入口は無かった。

レヴィンは腕を組ながら、行ったり来たりしている。この状況をどうすれば良いか、考えている様だ。


良い案が中々出てこない沈黙を、トネリが破った。


「あ、あの!レヴィンさんの雷なら大丈夫ですよっ!外したとしても、雷なら感電しますし!弱ったところにまた当てれば……!」


トネリの考え方は分かるが――。

レヴィンはトネリの楽観的な考え方に苦笑いをして(さと)した。


「良く勘違いをされるけど、魔術は不便なのよ……。闇の彼女を吹き飛ばした時みたいな雷の魔術は、周囲を感電させる事は出来ないの。かと言って、カルトの方々が飛び掛かった時に使った魔術は感電させる事は出来るけど、威力は下がっちゃうのよ」


「そう、なの……?」


トネリは、困った表情を俺に向ける。

話せば長くなるので、今は会釈するしかない。トネリは、納得いかなそうな表情を浮かべながら黙った。


「で、あのパフィルに雷を直撃させるしかないのだけれど……。私も体力的に二回が限度なのよね……。ニーズク市からここまで遠いのよ。もう……!」


そうか……、俺達が歩いてきた距離をレヴィンは同じ様に歩いてきたのか。何なら、休憩も余り取れなかったのかもしれない。

それでいて俺達を助けた――。


レヴィンに俺が同情しつつ感服していると、彼女は続けて言う。


「……さっきみたいに上から狙うにしても、身廊を通らないといけないし。身体を休めて魔力を貯めるにしても、その間に彼女が謎の魔力を使いこなしてしまう可能性もあるのよね……。警備隊が来ても実力的に返り討ちされる可能性が高いだろうし……、本当に困ったわ」


ふと、パフィルの言動を思い出していた。

彼女は使いこなせていないと言っていたが、歪んだ好意で俺を避ける事は出来ていた。

なら……、


「……なら、俺が盾になって二人を守って――」


俺が言いかけたその時――、レヴィンは一気に距離を詰めて俺の胸ぐらを掴んだ。

レヴィンの表情は、広場で演説をしていた(つるぎ)の様に鋭い。

そして、俺を怒鳴り始めた。


「なんて、非人道的な提案するのッ!?もっと、自分を大切にしなさいッ!!」


「そ、その、ブルディア村の時みたいに、何か出来たらと、思って……」


久しぶりの説教に震える俺の声をレヴィンは聞くと、手を緩める。しかし、鋭い表情はそのままだ。そして、ゆっくりと諭し始めた。


「……あの時は、あれしか案なかったの。それに、君は小柄だから、見つかっても道が入り組んでるから逃げやすいと考えたからなの。今回に関しては、本当に闇の彼女が君に危害を加えない保証は無い。だから、早まった考えをしないで」


決して、命を無駄にするつもりは無い。死にたくないし。


でも、レヴィンの真っ直ぐな説教に俺は俯いて頷くしか出来なかった。レヴィンは表情を緩めると、俺の胸ぐらから手をゆっくりと離す。

説教から場の空気は軽くなった様に見えるけど、結局振り出しに戻っただけだ。


レヴィンは、考え込み。

トネリは、先程の説教を引き摺り気不味そうにしてる。

そして、俺は言い案が浮かばずレヴィンを見つめるしかなかった。


フレンチさんが、何処かの国で「三人寄れば何とか」とい(ことわざ)が有ると話していた。三人で集まれば良い案が出るという意味――らしい。だけど、嘘っぱちだ。結局、良い案なんて浮かばない。


状況に失望していたその時、地下に続く階段から足音が聞こえてきた。


その音の主は――。



「おう、三人集まって煮詰まってるのか。どうした話聞こうか?」


階段から現れたのは、礼拝堂の前で助けてくれた釣り人だ。その表情は、微かに茶化す様な笑みを浮かべていた。しかし、彼の目はレヴィンと同じく真っ直ぐだった。


すると、トネリは釣り人を睨みながらレヴィンに駆け寄る。その足音は煩くて、トネリの感情を露骨に表していた。そして、釣り人に指を差すと、レヴィンに告げ口を始めた。


「この人ッ!!レヴィンさんの悪口を言ってたんですよ!!何で、ここに居るんですか!?」


トネリの発言に、釣り人は苦笑いしていた。レヴィンはトネリの告げ口を受け流して、釣り人の本名を口にする。


「あら、ミア。来てたなら、言ってくれれば良いのに」


「はは、隠密行動がメインだからな。自分は地下の儀式について調べてたのさ」


ミアと言えば――、レヴィンが先程言っていた雷鳥の会の副団長の名前。

釣り人の正体を俺の頭が理解する前に、トネリは一秒早く反応した。そして、その場で飛び上がると、勢い良く跪く。


「ミア・カーネリアンさん、すみませんでしたああああぁッ!!!」


「はは、俺達のファンはユニークな奴ばかりだ。な、レヴィン?」


レヴィンは引き()った笑みを浮かべるしか出来なかった。だが、一人増えても状況が変わるわけでもなく、表情をすぐに仕切り直した。


「そ、そんな事してる場合じゃないわ!今、闇の魔術を使う女性が――」


「はいはい、知ってるよ。大丈夫、案は有るさ」


すると、ミアは俺に指を差した。そして、続けて言った。


「団長が彼にオープマトゥの双剣を渡してたお陰で助かるぞ――」


彼は勝算が有るのを確信して、得意気な笑みを俺達に見せつけた。

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