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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
一章:都忘れの花束を君に
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第四話「旅芸人と長い一週間~起~」

今回のお話は五段構成になっております。

「起・承・鋪・叙・結」

見知らぬ旅芸人フォンから貰ったお金、4千ウェンを片手に駅へ向かった。

駅に辿り着くまでの間、小綺麗な人達が込み合っている歩道を歩いていた。他人とぶつからないようにかき分けながら慎重に進んだせいも有ってか、駅に着いた時には座り込みたくなる位に疲れていた。

そんな状態だから、暫く休もうかと考えた。しかし、出来るだけ早く帰りたかったから、機関車に乗るまではへばることないように勇気を持って駅に入った。


良く見ると、入り口には『ワティラス(ライン)・ダイドウ駅』と書かれた看板が入り口の真上に飾られていた。

ダイドウ駅構内の露店やダイドウ公園よりも綺麗な石畳、歩道より多少は少ない人混み。

俺は観光する程興味があるわけではないから、そそくさと歩いた。


リュテリウス島に近い港付近の駅に降りて、船に乗る際の料金は覚えて居ないけど……とにかく、船に乗って帰る。

そして、再び変わりの無い日常を過ごそう――。


そして、駅に着いてから数分後。

駅員の絶望的な一言で俺の脱出劇は呆気なく幕が降りた……。


「申し訳ありませんが、ワティラス連邦国が発行している身分証明書を御持ちで無い方はご利用いただけません」



そう言えば、フレンチさんに言われたっけな。

「外でるなら、身分証明書位は作っとけ。大体一万五千ウェンはかかるが」

島を出る事無いから大丈夫です、とその時は言ってそれっきりだったよな。

なんで、あの時作らなかったのだろう。

いや、仕方ないか。こんな事起こるなんて思わないよ。でも――


と、こんな自己嫌悪を脳内で何度も繰り広げていた。


さっき、仕方ないから露店で地図を買って歩いて行こうと考えていた。だけど、立ち読みして見たら、リュテリウス島に近い港とここの距離が大体歩いて4日も掛かる距離だった。

俺なんかが、四日間も歩き続けてる事が出来る訳がない。結局、地図も買わなかった。


じゃあ、この土地で暮らすか?

身分証明書も持ってなくて、他人が苦手な俺なんかが暮らせる筈がない。


手詰まりの状態でただただ何も解決策が浮かばず、構内のベンチに座り込んで今に至る。


ああ、どうしたものか。

「おい」

いっそ、転送魔術が使える人……。予言者並みに居ないよな……。

「おーい」

あの白男に頼……いや、ないな。そもそも、あの男の目的ってなんだろう?

「返事してくれよな……」

そう言えば、リュテリウス島のあの地震の後どうなったのだろう。フレンチさんも大丈―――


「おーい!!大丈夫か~!?」

「ふぎゃああ!?」

急に両肩を揺さぶられ、変な叫び声を上げてしまった。

思わず立ち上がり後ろを振り返ると、そこにはフォンが得意げに笑いながら立っている。

「よぉ!落ち込んでいるからどうしたかなって思ってさ!」

「あ、えっと、先ほどはありがとうございました……」

先ほど言えなかった礼を言うと、フォンは笑顔で鼻の下を擦りながらどうってことはないと言った。

「……」

久しぶりのちゃんとした会話の為、話が続かない。すると、明らかにコミュニケーション能力が高そうなフォンが話を切り出した。

「見るからに、身分証明書が無くて機関車のれなかったんだろ?政府もケチだよな」

「えっ……、なんで分かったんですか?」

俺は一言もこちらの事情を話しては無いのに、分かっているこの人に思わず警戒をしてしまった。

すると、何かを察したのかフォンは得意げに解説を始めた。

「まあ、怖がるなって。まず、その服装。明らかに都心出身ではないよな?チュニックとそのズボンからして都市開発が済んでない南東付近か。お前さんの手でお金を持っている数は変わって無いから、駅を利用しようとしたと推測は出来る。でも、利用出来ないってことは……だろ?」

俺が推理小説の主人公のような推理に思わず驚愕していると、フォンは鼻を鳴らしていた。


「……それで、君は僕とレナを放置して推理ショーですか?」


気がつけば、フォンの後ろに背が高く、藍色の髪をしたいかにも真面目そうな男が立っていた。

かなり、苛立たっているのか、眉間に皺を作っていた。

その男の声を聞くや否や、フォンは先ほどのお調子者のような笑顔は消えた。後ろを振り向いて言い訳を始めた。

「い、いやぁ、たまたまだよ!そもそも、お前、ヨークが変な場所で待ち合わせするからさ!!」

「いやいや、それは君がおみやげ物に目を眩んでいたからでしょ。全く!食い意地と馬鹿さ加減は人一倍なのだから……」

ヨークと呼ばれる男はガミガミと説教をし始めた。



それから、数十分後。

ヨークは好き放題言うと満足したのか俺の横に座った。俺は立ち上がりたかったが、フォンの両手が俺の両肩を押さえるようにして動けない。

フォンを見てるが、無意識でしているようだ。

悪意があるわけではないなら、と俺は諦めて渋々座り続けていた。

「――とりあえず、お前さん……あれ、名前は?」

「ニゲラです」

一応、俺はアンモビウム王国から流刑された体ではあるから、苗字のクローバーだけは隠している。そもそも、アンモビウム王国での苗字は敢えて花の名前で名付けられてしまうから、正直に話しても偽名臭くなるだけだ。

「ニゲラ、出身は何処だっけ?」

「リュテリウス島ですけど……」

すると、ヨークは目を丸くしてフォンと見合せた。暫くして、フォンは深刻そうに呟いた。


「この前、訪れたんだよな。船長に帰り際たまたま聞いたけどリュテリウス島を行き来する船は今日から二ヶ月間は休みだぞ……?」

俺は呆然としてしまった。先ほど四日間帰る事すら出来ない事で絶望していたのが可愛い位に思えて来た。

二ヶ月間もリュテリウス島以外で生活するなんて……。

すると、フォンは俺の心情に気付いてか知らずか、ある提案をしてきた。

「二ヶ月もさ迷うのはキツイだろ?なら、いっそ俺達三人組と一緒に生活しないか?」

思いもよらぬ提案に俺は困惑した。

ヨークはそれを聞いて特に顔色を変えず、俺を諭すような口ぶりで話を切り出しす。

「本来なら、フォンの提案にツッコミをする僕ではありますが、二ヶ月間流浪させるのは目覚めが悪いですからね。僕達は旅芸人ではありますが、雑用とかやらすことはしませんが、どうします?」


俺は迷った。

他人というのが、苦手なのは確かだ。


流刑されてから、フレンチさんとは住んでいても基本的には他人とは関わらない生活を続けて来た。一人で居るのが当たり前だった。

俺は友達なんて作れず、作らずに生きていた。きっとこれからもそうだと思っていた。


だけど、不思議とこの二人を見ていると安心する――そう感じてしまう。


俺は答えを思わず呟いてしまった。

「暫く、一緒に生活してみたいです……」

「よぉし!!そうと決まったらレナ呼んで来るぜ!!」

すると、刹那的にフォンのテンションは急激に上がったらしく構内に響くような大声出して、レナという女性を探しに走り出した。

「うるっさ……って!君は待ち合わせ場所分からなかった癖にレナの居る場所分からないでしょ!!」

ヨークは急いでフォンの後を追って行った。


俺は呆然と座り込んでいると、後ろからカルミアの幻聴が聞こえた。


『ほれ!追いかけぬか』


……分かったよ。


俺は勇気を振り絞りヨークの後ろ姿を追いかけた。

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