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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
二章:雷鳥の騎士
54/72

第四十八話「ニゲラの過去:崩壊の誘い」

【お詫び】

1ヶ月以上、投稿遅れてしまい申し訳有りませんでした。

仕事が忙しいかったのも有ったのでしたが、「ニゲラ追憶編」を後二話で終わらせようと執筆が進んでは消してを繰り返していました。

結論からして、「ニゲラの過去編はまだ続く」事になりました。


出来るだけ、調整をして第二章を早めに終わらせる様に頑張ります。

今回のお話で、(ギリギリ)第二章の進行度は5/12です。

カルミアの養子兼弟子になってから、三年経ちました。今日は3月5日、学校に入学するまで後1ヶ月。

楽しみ半分と不安半分を抱えながら、今日も僕は日々を過ごしています。

今日は勉強する日では無いので、図書館でゆっくり過ごしていました。


「ふむ、あの小説が打ちきりか……。最後がマンネリだったからな、ヒロインが積極的にアプローチすれば――まあ、仕方ないな」


カルミアは一瞬悲しげにある本を閉じると、暫く目を閉じていました。まるで、悲しい別れを整理するかの様に。

そして、いつも通り神妙な面に戻りました。その本を本棚に戻すと、僕の隣に座りました。僕はどうにかカルミアとの会話が盛り上がる様に何か気が利く様な事を言おうとしました。


「終わりなんて作らずに、そのまま続けば良いのにね。永遠に」


「ふふ、仕方あるまい。物事には始まりと終わりが必ず有るからな。終わりがあるから、今を愛せるのだ――」


僕の意見にカルミアは苦笑いすると、別の本を読み始めました。


思い浮かべた言葉を羅列したとはいえ、僕には理解出来ませんでした。

好きな小説や演劇が永遠に終わらず、続編やなんやらが出れば良いのに。

今だってそう。楽しい一時が永遠に続けば良いのに。


だけど、次の日は最悪でした――。



「なんで、ですか……?」


「カルミアが忙しいからだろう?分からないのか?1255京4907ちょっ――ニゲラ」


そう、図書館でのアイビーとの授業です。本来はカルミアとの授業たのですが、カルミアの政務が忙しい為アイビーが急遽代わりに授業をする事になりました。

これで、9回目です。

というか、噛むくらいならその良く分からない年数を言わなければ良いのに……。本当に、コイツが嫌いだ。


アイビーはカルミアがいつも座る椅子に腰を掛けました。僕を見ずに涼しげな嫌みったらしい表情でそっぽを向きます。


「嫌みったらしいは君の主観だろ?やれやれ……」


「ぼ、僕は思ってませんっ……」


予知なのか、僕の心を……


んっ?なんで?

アイビーは動揺している僕を余所に、今日の授業を始めようとした。


「さて、分かりやすい君の表情は置いといて、今日は国語……と言いたいところだが――」


すると、アイビーの懐から墨で汚れた本を取り出した。汚いな……、カルミアがこんなのを見たら『本を大切にしないとはッ!!何処の愚か者だッ!!!』と激昂しそうだ。


「何者かによって悪戯されてしまった。だから、今日は授業ではなく、君に買い物をさせようと思う」


「嫌です」


冗談じゃない、誰がアイビーに頼まれて行くものか……!

すると、アイビーは席を立つと、僕に近づきました。そして、僕に耳打ちします。


「想像しろ。このような悪戯は過去一度も無かった。しかし、君が来てから悪戯が増えている。しかも、カルミアが知ればどうなるか分からないものばかりだ。……何を言いたいか、分かるな?」


「僕を――脅してるの……?」


僕が尋ねると、アイビーはため息をしてこう答えた。


「最悪な未来を望むなら、好きにすれば良いさ」



『路地裏を右に曲がると、本屋が有るだろ?外に中古の本が並んでる。そこから、本を取り出して店員に払え。お金ならオレがやる。因みに、本の名前は「ダリアは散る」の4巻だ』


「なんで、僕が……」


誰にも聞こえない様に、ひたすら愚痴――独り言を言いながら街を歩いてました。

マントを被っていれば、誰も僕がニゲラだとは気付きません。しかし……


「あの人、独り言激しいわ」「気味が悪いね」


「……っ」


アイビーのせいで、街の人に不審がられてしまいました。


ああ、もう!

本買ったら、アイビーを本の角で殴ってやろうかなっ……!


イライラしながら歩いていく内に目的地に辿り着きました。


嵐になれば、全ての窓が割れるのでは?と思う位には脆そうな本屋です。アイビーの言った通り、店の前にテーブルの上に本が羅列されてました。テーブルに貼られた紙には「中古の書籍を259ハルで販売中」と書かれてました。


因みにアンモビウム王国ではワティラス連邦国の通貨『ウェン』ではなく、通貨『ハル』が使われています。


「ささっと買って、早く帰ろ――」


「おいおい、ゆっくりしようぜ」


いつの間にか、誰かに肩を組まれました。僕は恐る恐る横を向くと、そこには知らない青年の顔が有りました。僕はびっくりして手を払うと、彼は苦笑いしていました。


彼は背が高く茶髪で、アンモビウムの獣人にしては耳が垂れていて何処か可愛らしかった。


「ああ、ごめんな?仲良く出来そうな年下が居たから、ついついちょっかいを掛けちまった」


「べ、別に良いよ。それより――」


それよりも、気になる発言が有りました。


『仲良く出来そうな』


これって、つまり……僕と友達になろうとしてるのかな……?

友達が、居ない僕には絶好のチャンスだと思いました。見た感じヤンチャそうな人だけど、もしかしたら良い人かもしれない……。


「仲良く出来そうって言われたのが気になるのか?はは!言葉通りの意味だよ!」


「そ、そうなの……?僕は友達なんて生まれてから居なくて……」


「へぇ!奇遇だな!俺もなんだ!よろしくな♪︎」


彼は僕の両手を無理やり掴むと、強引に握手をしました。若干痛かったけど、友達が出来る嬉しさでどうでも良く思いました。


「ところで、おと――お前の名前は?」


「ニゲラです。君の名前は?」


「パセリ・パースレーだ。今後ともよろしくな?」


彼と本を買った後、路地裏で一時間以上話していたと思う。「どんな本が好きなのか」とか「得意な魔術は何なのか」など他愛の無い話ばかりだ。カルミアや城に住んでる事は言わない様にしていた。


「そろそろ君のお母さんも心配してるだろうから、帰ろうか。またね、クローバー君」


「うん。また、会えたらね。パセリ」


僕は本を片手に持ちながら、パセリに手を振りました。パセリは満面の笑みで同じ様に手を振ってくれました。パセリに見送られながら、僕は城に帰りました。



「長い買い物ご苦労様。良く良く考えたら、『ダリアは散る』で勉強するのは違うよな。無駄骨ご苦労様」


「はぁ……!?」


こ、コイツ……!

こんな事を言われる位なら、アイビーの金で食べ物でも買えば良かった!!

僕がアイビーを睨み付けると、アイビーは何一つ無表情のまま図書館から出ていった。


「アイビーなんて……!」


思わず、本をアイビーが出ていった方向に投げつけようとした――その時


「ん?まーた、アイビーに嫉妬か?」


「!?」


後ろから現れたカルミアに驚き、声にならない叫び声を上げてしまいました。本を投げつけようとしたのが、バレたらマズイ……!

咄嗟に振り上げた本を素早く、尚且つ丁寧に机に置きました。振り替えると、カルミアは訝しげに僕を見つめていました。


「……?どうしたのだ?」


「な、何でも無いよっ!それより、カルミ――師匠はどうだったの?政務は?」


すると、カルミアはしんどそうに溜め息をすると、僕の隣に有る席へ座って話し始めました。


「……何も、成果は無い。見えないスイレン国が未だに我が国を狙っているのを、ひたすら指を咥えて怯えているしか無いからな……。何人集まって会議しようが、結果が出ない事には意味が無い」


「スイレン国……?」


「ああ、そうだ。我が父、アザミ前国王の姉――アルカチュア・アイリスが治めてる国だ。国と言っても、実態はならず者達の集まりだがな」


「師匠に伯母さんが居たなんて知らなかったよ……」


すると、カルミアは益々渋そうな表情になっていった。僕が心配に思いカルミアの顔を覗くと、カルミアは少しぎこちない微笑みを見せた。


「我が伯母は、父によって追放されたからな。闇の魔術にのめり込み過ぎたのだ……。それ以降、アンモビウム王国だけでなく、他の国にも呪いを振り撒いているそうだ」


「呪い……?」


「詳細が分からないが、国を崩壊させる事が出来るそうだ。我は闇に関しては専門外だからな……。良くわからん……」


カルミアは立ち上がると、僕の頭を撫でて何処かへ消えた。カルミアの様子からして、かなり疲れてそうだから寝室に行ったのかもしれない。


僕はカルミアに撫でられた場所に手を触れながら、図書館を出て僕の寝室に戻りました。



その日、夢を見ました。

僕は誰かに寝かされていました。


『良い子じゃ……、良い子じゃ……』


黒い髪の女性が僕をあやしていました。髪はボサボサで、アンモビウム王国の住民みたいに獣の耳が生えていました。黒い女性は何とも言えない、不気味な笑みを浮かべていました。


「妾の、恨みを、にげらの――で晴らしたもれ……」


(え……?貴女は誰なの……?)


黒い女性は桶から黒くドロドロしたものを手で掬い上げます。そして、ゆっくりと僕の顔へ近づけます。


(や、やだっ……!止めてッ……!!)


「さぁ、たっぷり、お食べ……」


そして、僕の口元に近づけさせ、無理やり飲み込ませました。

その後の事は覚えていません。只、目が覚める直前に黒い女性の声が聞こえた気がしました。


『運命はにげらに託した――』



「はぁ……はぁ……」


目を覚ました時には、布団やシーツがずぶ濡れになっていました。汗でべったりと濡れた感覚と、夢の中で口にしたナニかの味は――


何とも言えないモノでした。



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