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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
二章:雷鳥の騎士
51/72

第四十五話「ニゲラの過去:誰かの贈り物」

2024/23:00に追記


【お詫びのお知らせ】

暫く更新をせず、申し訳御座いませんでした。最近の投稿頻度が遅くなる一方だった為、一旦話をストックしてから投稿をするつもりでした。

暫くの間は、投稿頻度が上がると思いますのでよろしくお願いいたします。


【謝礼】

この作品で初めてイイねを頂きました。本当にありがとうございました。最終話までイイねをされないと、覚悟をしていました。しかし、今回して頂いたお陰様で、モチベーションが以前より増えました。

とっとと、じめじめした『ニゲラの過去編』を終わらす様に頑張ります!


僕がカルミアの養子――弟子になってから三週間経った。

基礎的な魔術や学校に入る為の勉学を学んできた。……(素人に毛が生えた程度の実力しか無い)剣術も。


「さて、今日は魔術の相殺についてだ。太古では五大元素というものが信じられていた。しかし、――」


カルミアと演劇行ってから、カルミアを見る度に胸の心拍が大きく鳴り響く事が増えました。それだけではなく、カルミアの事しか考えられなくなっていました。


「現代での魔術の相殺は理屈で考えない。例えば、()属性ならば、風には風で対応する――」


カルミアとの授業だって、頭に――


「とうッ!」


「痛っ!?か、カルミア……!?」


「授業中、集中しろ。戯けが!」


カルミアに本で叩かれた頭を押さえながら、僕はカルミアと黒板に集中する事にしました。それでも、カルミアを見ると何も考え――。


「痛ッ!?」


「集中しろっ!」



「カルミア……?何処行くの?」


「課外授業だ。今日は森で魔術の授業をする。我に付いて来い」


この日は城から南にある森、そしてそこにある廃屋へ、カルミアと共に来ていた。

古びた看板には以前住んでいた人の名字だろうか、『マリーゴールド家』と書かれていた。二階建ての建物は(つたに覆われていて、それを見たカルミアは何故か笑い堪えていた。


「ブッ……!」


「カルミア……?」


「ふふっ……す、すまない。いやぁ、らしいなと思ってな……!アイビー(ツタ)だけにっ……」


「……?」


カルミアは暫くすると、再び威厳のある表情に戻った。


「ふぅ……、気を取り直して。古代語の練習を始めるぞ」


今回、ここに来た目的は『古代語の詠唱』による魔術の練習でした。『古代語』はゴニク語とは違って、意思疎通の為にある言語ではない。古代語は()()()()()()()()()()()()()()()()()――らしい。

カルミアはここに来る前に長々と説明してくれたけど、全く分からなかった。

「分からない」と正直に話そうもんなら、説教と更に難しい話を聞かされるかもしれない。

だから、僕は古代語を「魔術を強くさせる凄い言語」だと理解する事にした。


「では、始めっ!!」


「はいっ……!ウィン――」



「はぁ……はぁ……、無理だよぉ……」


まるで、両腕の芯が焼ける様な痛みと強烈な眠気に近い目眩が僕を襲っていた。足も血管全てが金属に変わってしまったのか、と思う位に気だるく動けなかった。

只只座り込んで居る僕をカルミアは渋い顔しながら深い溜め息をした。


「はあぁ……。情けない、しっかりとせんか……」


「うぅ……、だってぇ……」


「全く……!見せてみよ。そんぐらい寝れば――」


カルミアは少し強引に僕の腕を掴んだ。筋肉痛みたいな痛みに堪えながら、カルミアを見つめた。

暫くカルミアは僕の腕を凝視していると、段々と暗い表情になっていく。それはまるで、僕の未来に死が待っているかの様な暗さだ。

僕は息を呑みながらも、尋ねた。


「そ、そんなに悪いの……?」


カルミアは目を背けながら、ゆっくりと話始めた。


「……まあ、神経が傷んでしまっただけだ。2日で治るだろう……。只――」


「只、なんなの……?」


カルミアは目を瞑ると、ゆっくりと息を吸い込んだ。まるで、告げるタイミングを合わせる様に。そして――。


「貴様は、古代語の魔術を使えない。いや、使えなくは無いが、魔力量がこの国の中でも一番足りない。だから、習得は出来ないっ……」


「へ……?」


それだけ……?予想していた内容とは大分違っていた。何だ、それだけか。

僕は思わず安堵の溜め息をした。まあ、古代語無くても魔術は出来るし良いよね、と思っていた――その時。

カルミアは、今までに無い暗い声で叱り始めた。


「楽観的になるな、馬鹿者……」


「カルミア……?べ、別に古代語出来なくても、良いでしょ……?カルミアが直々に魔術を教えてくれたんだし……!」


そう、これまで魔術の基礎基本を学んだ。無言で魔術を行うのは出来ないけど、風の魔術を自由に操る事が出来る。

僕はもう十分に学べた、と思っていた――。しかし、カルミアは……。


「そうだな……。別の国なら十分だろう。しかし、()()()()()()()()()()()()。古代語を使えない国民は誰一人居ない……。因みに、貴様の現状はどういう事か分かってるか?」


僕の現状……。この城に来てからカルミア以外の人は冷たかった。だけど、別に何か嫌がらせされているわけじゃないし……。

カルミアは僕が考えている事を察したのか、両手で僕の頭を掴んだ。掴んだ手の力は強かったけど、ゆっくりと僕の視線をカルミアの目線に合わせた。

そして、残酷な事実を伝えた。


「貴様は未だに敵だと思われてるのだっ……!そんな状況でだ、この国で当たり前な魔術を使えない者が、我の目が届かぬ場所に居たら――もう、分かるなっ……?それが、貴様の現状だっ!」


ショックだった。

僕は別に何か悪い事をするわけじゃない。耳が違うから、髪が黒だから、――皆と違うのがそんなにいけないのだろうか……?

でも、一つ救いは有るはず。何故なら――


「でも、カルミアが居てくれたら大丈夫だよね……?」


そう、カルミア。師匠であり母であり――その、大切な人でもある。そして、女王だ。

カルミアさえ居れば、救われる。


しかし、カルミアは――


「我がこの国の全てを操れるとでも……?甘い事を言うな……」


カルミアの目は睨み付ける様にも見えるし、何処と無く悲しげに見えた。怖気付(おじけづく僕を見つめながら、カルミアは淡々と話を続けた。


「良いか?貴様を弟子にしてるのは、煩わしい大臣達への言い訳の為じゃない。息子として生きる(すべを身に付けてさせる為だ。厳しい大人の世界を生き抜く為に――」


「……」


大人……。僕にはよく分からなかった。

大人って、そんなに厳しいものなのだろうか?

でも、そんな質問をこの時の僕はする勇気は無かった。



「どうすれば、良いだろう……」


意気消沈しながら、寝室で天井を見上げながら転がっていた。大量の魔力が無ければ、この国では生きていけない。そんな事言われても、どうしようも無いじゃないか……。


「はぁ……、あれ?」


呻き声に近い嘆息を吐きながら、扉の方向を見ると置き手紙が置かれていた。

誰からだろう?カルミアからかな?

嬉しさ半分、弟子としては焦り半分で急いで手紙を手に取った。


『魔力を向上させたければ、町を抜けて草原に向かいなさい。円状に枯れている場所で数分位滞在しなさい。そうすれば、カルミアも君に惚れてくれる筈。自慢の愛弟子だってね。君を想う者より愛を込めて』


草原……?カルミアは確か『数十年前から数は減っているが、魔獣が居るから行くなよ?』と言ってた筈……でも。


『ふふ、良く頑張ったな。ニゲラ――いや、我の愛弟子』


「……えへへ」


カルミアが褒めてくれる姿を想像しただけで、心臓の高鳴りが全身へ響いてしまいそうな位に浮かれてしまった。僕は早速マントを被り、草原へ向かった。



城を脱け出すのは容易でした。いつも、カルミアとお忍びで行く際の図書館にある暗い隠し通路を通れば、城から先ほどの森に出る事が出来ます。


「カルミア、待っててね……!強くなって帰ってくるから……!」


そして、城下町を迂回して漸く草原にたどり着きました。見渡す限りに新緑が地面に広がっていて、草の青臭さが鼻を刺激していました。耳を澄ませば、何かの可愛らしい鳴き声が聞こえます。


――アイリス草原。

カルミアが言うには、昔は百匹以上の危険な魔獣が生息していたらしいです。しかし、近年減少しているようです。最初は大きな獣、その次に中ぐらいの獣――と。今は小型の獣が生息しているらしいです。


「うーん……、何処だろう……あ!」


草原を見渡していると、一ヶ所だけ赤みがかった場所を見つけました。そこは半径が僕の身長と同じくらいの大きさでした。魔力に疎い僕でもそこに何かを感じました。


「ここに、入れば――」


全てが変わる。

僕を嫌ってる人も、きっと僕を好きになってくれるかもしれない。もしかしたら、僕を認めてくれるかもしれない。

カルミアも……


『良く頑張ったな?我が弟子』


きっと、今以上に好きになってくれるかもしれない。


「……僕、頑張るね――」


僕はカルミアを思い浮かべながら足を踏み入れた。枯れた場所の中央に立った、

その瞬間――。


「うがあ"あああっ……!?」


全身に激しい痛みが響き渡りました。有りとあらゆる血管に茨を入れられたかの様でした。心臓の音が段々と太鼓の音みたいに大きく鳴り響きました。

手足が痺れ、立つ事も出来ません。這いつくばりながら、進みました。

しかし、進むに連れて痛みと目眩が強くなりました。


「ぐすっ……母さん(カルミア)っ……たす、け――」


視界は真っ暗で、何も見えませんでした。泣き続いているのかすら、もう分かりませんでした。

そして、意識が遠退く中に何かを見ました。


黒い鱗のドラゴン。

青い瞳をぎろぎろとさせながら嗤っていました――。

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