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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
二章:雷鳥の騎士
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第三十九話「第一の試験:逃げ惑え若者よ(その2)」

【2024/03/18 0:31】大変お待たせ致しました。投稿が遅れてしまい申し訳有りませんでした。


漸く、四月の転勤に対する準備が整ってきたので、ペース――上げる事出来たら良いなー……と思います。


四月からの生活は未知なので、(基本的に一週間以内は考えていますが)投稿頻度はどうなるか分かりませんが……


絶対にこの作品は完結させる。その事だけは約束します。

あれからどれくらい歩いたのだろう?

歩いても、歩いても、似たような場所に辿り着いてしまう。暗い枯れ木だらけの森だから、そう感じているだけで進んでいる様に思おうとしていたけど……。


「これ、ボクが付けた印だよねぇ……?」


「印と言うより落書きですけどね……」


「このやり取り、三回もしてる気が……」


「いや、四回目です……」



やっぱり、迷わない様に付けた印の場所に気付いたら戻っている。


これは間違いない、俺達は迷っている……。

危険な魔獣が居る森で(恐らく)二人だけしか居ない。食料も無い。


こんな絶望的な状況は今まで有っただろうか?

いや、精神的な絶望は有っても、今まで無い。


俺が内心焦り始めていたが、トネリは何かを閃いた様で手を打つ。


「良いこと思い付いた!!迷ったら空から見れば良いんだよ!」


空から……?何を言ってるのだろう?

トネリは自信満々に地面に手を(かざ)すと、トネリの周囲が光輝き始める。


「木よ、生えてっ!」


次の瞬間、大樹がトネリの地面から生えてきた。トネリは大樹の天辺を掴みながら空を昇る。大樹は100年以上生きて居る位に立派だ。そんな長い年月をこの数分で体感すると、木の成長は止まった。


「あ!丘はあそこですっ!」


トネリの声が天から聞こえる。何処を指してるか分からない……。聞き返したいけど、俺はそこまで大声出せないからトネリを待つ事にしよう。


周りを警戒しながら、後数分で消えるだろう大樹に寄り掛かって休もうとした――その時!


「うわあああっ!!メテルだっ!!」


トネリの悲鳴が聞こえた。俺が空を見上げると、そこには巨大な鳥がトネリを襲っていた……!


メテルという鳥はシルエットからして、図体がトネリ三人分の大きさだ。メテルは少し上へ飛ぶと、下に居るトネリへ体当たりする様に近づく。

トネリは悲鳴を上げながら、木の天辺で掴みながら(かわ)していた。


俺は助けに行こうと大樹を登ろうとしたが、手が大樹の中に入ってしまう。大樹は徐々に透けていく……。


魔術で生成した大樹の消滅が始まっていたのだ。

俺はトネリが落下する筈の地点で構える。


「あっちに行っ――うわああっ!!?」


大樹が完全に消えると、トネリは逆さまで落下する。徐々に大きくなるトネリのシルエットに向かって、俺は両手でを(かざ)して唱えた。


「ウィンニス・イーショナァ!(風よ、激突から守れ!)」


俺の両手から、旋風(せんぷう)を作る様にイメージする。魔術の起動をトネリがここに叩きつけられる前に間に合わせようと集中する。


トネリの身体がここへ落ちる寸前、両手から微かな風が作り上げた。弱かった風は一気に巨大な旋風(せんぷう)へ成長する。周りの落ち葉などが旋風に飲み込まれていった。


「わああっ!?ふぁっ!!」


トネリは旋風によって弾む様に飛ぶと、地面に尻餅ついた。痛がっていたけれど、命からがら助かった喜びの方が(まさ)った様で直ぐにへらへらと呑気に笑っていた。


「はは、良かったぁ……」


「本当に良かったです……。アレは一体……?」


俺の問いかけと同時に、トネリは青ざめながら俺の手を掴む。その手は先ほどかいた汗なのか、今かいた汗なのか分からない位に濡れていた。


「そ、そうだっ!!急いで逃げようよっ!!あの魔獣は獲物を執拗(しつこ)く追いかけるんですよっ――」


「――――ッ!!!!!」


聞いたこと無い位の高い鳴き声に俺達は思わず耳を塞ぐ。トネリは涙目で空に指を指して何かを言おうとしている。俺は恐る恐る指を緩めた。


「メテルは鉄以上に硬いから、突進されたら絶対に避けてねっ……!!」


次の瞬間、空高く飛んでいたメテルは滑空しながら俺達に向かって来た。トネリの時と同じ様にシルエットは次第に大きくなるが、唯一違うのは速さだ。瞬きをすればする程に、メテルの大きさが小鳥みたいに可愛らしいものでは無いと分かる。


「避けてって!!」


トネリの小さな手に服を引っ張られ、俺は(しゃが)んだ。メテルがいよいよ俺達――いや、俺達の真上を通る。


そして、トネリがメテルを怖がっていた理由が漸く分かった。


メテルは両翼を伸ばしたまま、枯れ木を次々に()ぎ倒してきた。聞いた事が無い様な凄まじく恐ろしい音と無理やり倒された木の音が俺達の前方から後方へ通りすぎて行く。倒れた木の振動なのか、恐怖で震えている俺自身の振動なのか分からなかった。

前方をふと見ると、先程まで見通しがあまり良くなかったのに、いつの間にか一直線に奥まで見える様になっていた。奥に一瞬だけエンヒィが見えたけど、命の危険を感じたのか逃げて行った。

動物の危機管理能力は素晴らしいな。


「――――ッ」


俺達が恐る恐る立ち上がると、上空でメテルの鳴き声が鳴り響いていた。見上げれば、俺達を狙う様に円を描きながら飛んでいた。


「見上げてないで、逃げよう!!」


「でも、このまま何度も襲われ続けるのはっ……、うわっ!?」


すると、間髪入れずにメテルは滑空して来た。俺とトネリは言い合い出来ずに(しゃが)んでメテルに備える。


「――ッ――ッ!!」


「ひっ……!」


メテルは再び俺達の上を横切った。しかし、先ほどよりも少し低く飛んでいた。このまま逃げていては無事で済まない事を想像する事は安易だ。


トネリは怯えながら、俺に耳打ちをする。


「じゃ、じゃあ、どうするの!?」


俺はこの刹那、深呼吸して今出来る事を考えた。


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