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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
一章:都忘れの花束を君に
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第二十二話「救出の準備」

5月12日


あれから一週間経過した。

俺達はフォンを救出する準備を着々と進めていた。現在、各々の役割で準備をしている。



アウルスさんとヨークは共に作戦を練っている。毎日、激論を交わしながらより良い作戦を作り上げている……と思う。


「いやいや、なんで侵入した後に爆発させるんですか!貴方泥棒ですよね!?」


「煩いなー!爆発は男のロマンなんだよ!!侵入した時に派手じゃなきゃつまらないだろ!?」


「失敗出来ない作戦に面白さを求めないでください!!」


廊下まで聞こえる怒号。

この宿が賑わっている場所だったら警備隊に通報されていただろう……。



レナは何やら綺麗なドレスと(かつら)を手作りしている。この前も思ったが、レナは裁縫が職人並みに上手いし早い。六日前には俺が被る覆面を完成させていた。

そして、覆面の被り心地はかなり良い。試しに半日被っていたがある練習をしていても違和感を感じる事は無い。


「そのドレスって……?」


「アスィミさんから頼まれたの。私も当日参加するみたいだから!」


「あれ?そんな事聞いてないけど……」


「とにかく!頑張っちゃうね!」


レナはそう言うと再び裁縫に集中し始めた。

どういう事かアスィミさんに聞いてみようか――。



「ああ、アウルスの兄貴はいつも作戦を練る時に迷走するから最後にオイラが代案を提供するんでヤンス」


アスィミさんは宿の裏口で青色の魔石を(のみ)金槌(かなづち)で少しずつ削っていた。アスィミさんの役割は道具作成みたいだ。手元には金色のチェーンがあった。ネックレスでも作るのだろうか?


「レナとオイラが舞踏会で侵入して、ニゲラとアウルスの兄貴が二階から侵入する。それで、兄貴達がピンチになったらオイラ達が騒ぎを起こすでヤンス!」


「でも、それってかなり危険なんじゃ……?」


「オイラはこんな見た目だけど、機転が利く盗賊でヤンス。だから、心配はご無用でヤンスよ」


アスィミさんはこちらを振り向く事がなく、話終えると作業に再び没頭し始めた。


俺は邪魔しないようにその場を離れた。


さて、そろそろ俺も作業――剣術の練習をしようか……。



俺はアウルスさんと侵入する際に、警備の召し使いと戦う事になった場合の戦闘要員だ。

但し、怪我させたり殺さない様にしなければならない。


「……難しいよな」


俺は宿の廊下でアスルに貰った二本の剣を持ちながら思い(わずら)っていた。

ブルディア村での騒動では、(故意的では無いとは言え)テロリストの腕を切り落としてしまった。

古豪(こごう)の剣士でないと無理では無いだろうか……?


『四の五の言わずに練習せぬか、馬鹿者』


久しぶりにカルミアの幻聴が聞こえた。思わず振り向いたが、カルミアの姿は見えなかった。


「……わかったよ」


俺は見えない幻影に返事をすると、両手の剣を振った。


今しているのは双剣術だ。

剣を交互に振る事で連続的に斬撃(ざんげき)を行う。または、相手の斬撃に剣で防御し、隙を突いて反対の剣で刺す。もっと熟練した人なら身体を高速に回転して相手に斬り付ける事も出来る……かも。


しかし、交互に意味が有る様に振るのは難しい。

右手で振った後に左手で振るが、どうしても振る時にぶれてしまう。


「――ハァッ!!」


今度は身体を回転させてみたけど、未熟な俺には半回転までが限界だった。

回転して斬撃するのは諦めよう……。


気を取り直して、もう一度交互に斬撃する練習をする事にした。今度は縦に斬る様にしてみようか


「もう一度……、ハッ……!ヤッ――ああ!?」


左手に持っていた剣がすっぽりと抜けてしまった。剣は回転しながら綺麗に前方に飛ぶ。すると、間が悪い事にアウルスさんが廊下に現れてしまった。


「よう!調子は――うわああぁ!?」


アウルスさんの顔をスレスレに横切る。アウルスさんと俺は固まってしまったが、剣が壁に刺さる音がした瞬間にアウルスさんは涙を浮かべながら目を血走らせて怒鳴った。


「ば、ば、馬鹿かあぁ!!死ぬかと思ったぞ!?」


「す、すみません!!すみません!!」


「毎回毎回!!お前は俺の顔に恨みがあんのかあぁ!!!」


暫くの間、俺はアウルスさんに怒られ続けた。


本当にすみません……。



「なるほどな?双剣術をしていたと……」


怒りが収まったアウルスさんは俺が持っている二本の剣を凝視していた。


「人に貰った剣なので、使おうと……」


「良いけどさ。ニゲラ慣れてないんだから一本で良くないか?」


「……あ」


良く考えればそうだ。なんで、双剣術をしようと思ったんだろう……。俺のハッとしている様子を見てアウルスさんは呆れる様に溜め息をした。


「はぁ……。しっかりしろよなー……。二本の剣を使えたら格好いいだろうけどさー」


「格好いいからした訳では……」


「いっその事、その剣を俺様に貸してくれよ?そうすれば、お前が無理する事無いだろ?」


「あっ!ちょっ――!?」


アウルスさんは俺の左手に持っていた剣を無理やり取ろうとした。だが、その瞬間に剣の刃がどんぐりの様に小さくなってしまった。


「な、なんじゃこりゃ~!?剣が俺様を拒否するのか!?」


「くれた人曰く魔力に反応してるみたいなので、魔力が少ないのでは……」


すると、アウルスは拗ねる様に奪った剣を押し付けた。その瞬間、剣は俺の魔力に反応して元のサイズに戻った。


「うぅ……、どうせ俺様は格好良い事出来ないオッサンだよっ……。魔力がお前や姉御みたいに有ればなぁ……」


「あ、あの……」


アウルスさんは肩を落とすと、振り向く事なく哀愁を漂わせながら去っていった。本当にすみません……。


この後、俺は夕食まで再び双剣術の練習をした。アウルスさんの言う通り剣は一本で良いかもしれない。しかし、何故かこうしなければならない――そんな気がした。

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