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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
一章:都忘れの花束を君に
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第二十話「危険な骨董品店」

翌日。


俺とヨークはアウルスさんに頼まれた品の買い物をしていた。雨は漸く上がったが、暗い雲が狭い空を覆っている。町中は雨が降らなくても暗いみたいだ。


そんな町に毒されているのか、俺達の雰囲気も暗い。


「あの人なんでこんなに買うんですかね?こんなのが必要になるんですかね……」


「どうなんだろう……」


「さっきから、『どうなんだろう』しか言ってないですね。……まあ、良いですけど」


ヨークはイラついているよりかは、フォンを救出出来るかが分からないから不安が一杯なのかもしれない。

こういう時に気が利く言葉が思い付けば良いけど、頭に浮かぶのは淡白な返答位だ。

こういう時にフォンが居てくれたら、と思ってしまう。


すると、ヨークは咳払いをすると少し明るい声を捻り出した。


「と、取り敢えず!何も考えずに買い物しましょうか!」


「そ、そうですね!何なら帰りに少し値段高めな食べ物でも買いません?」


俺も合わせて明るめな声を出すと、ヨークは滅多に見せない笑顔で答えた。


「それ良いですね……!」



今回の買い物は一度では買いきれない。

支払いはアウルスさんの大金で大丈夫だけど、問題は宿に持って行くには品物が大量過ぎるという所だ。二人で何往復しながらで無いと全て宿に持って行く事は出来ない。


その為、昼から夕方に掛けて大体四往復した。

そして、最後の品物達を買いに路地裏を二人で歩いていた。ヨークはアウルスから貰った紙切れを(いぶか)しげに見ていた。


「最後の品物が『雷の魔石』と『火薬』だなんて……。しかも、違法な道具屋に行かせるとか……!とんでもないですね!!」


「雷の魔石って商店街には売ってないんですか……?」


「魔石の中で雷の魔術が使える物は一番希少ですからね。商店街に売っているにしても何千万はしますよ」


暗い建物の通り道を歩きながら俺達は話していると、一ヶ所だけ古びた木造の扉が見えた。

扉の周囲には窓が無く、まるで急に扉が現れたかの様に錯覚させられる。


ヨークと俺は互いに顔を見合って頷くと、ゆっくりと扉を開けた。


扉の先は一言で表すなら、薄暗い骨董品店(こっとうひんてん)の様だ。フレンチさんの家よりカビ臭く、部屋が暗いせいで骨董品(こっとうひん)らしき物がガラクタの様に見える。照明になる物は有るには有るけど、まるで黒い霧の中で輝いている位に淡い光だ。


二人で店の雰囲気に呆然としていると、前から店主らしき老人の声が聞こえてきた。


「いらっしゃい……若造二人。今日は何がお望みかね?」


前方に目を凝らすと、髪がボサボサのお爺さんが立って居るのに気付いた。俺は透かさずお辞儀をして用件を話した。


「こんばんは……。雷の魔石と火薬が欲しいのですが」


「……ほう?なんだい?お前さん方、テロでも起こすつもりかい?まあ、金さえ貰えばどうでも良いが……」


「違いまっ――」


否定しようとしたが、店主は物音を立てずにカウンターの奥へ消えた。ヨークはまだ見えない要で、目を細めながら前屈みの体勢で前方を凝視していた。


「全然見えないですね……。ニゲラは良く見えましたね」


「暗い部屋に住んでましたから……」


すると、何処からか店主の声が響いて来た。


『雑談してないで、とっとと探したらどうだい?儂は探してあげる程優しくはないのでな。』


「はい、分かりましたよ!ニゲラ、品物を見つけてこんな店から早く出ましょう!」


何処と無く愛想の無い声にヨークは苛立った様で、足音を煩く鳴らしながら右の通路に向かった。置いていかれた俺は仕方なく左へ進む事にした。


通路の両側は小瓶や石みたいな物は無く、良く分からない機械や札らしきものが貼られた家具等の大きな品物が並んでいる。どうやら此方の方向はハズレの様だ。

ヨークの方に向かおうとした――その時。


「何これ……?」


三面鏡のドレッサーが青白い光で怪しく輝いていた。鏡が特に濃く強い光に包まれている。

俺は興味本位で恐る恐るドレッサーに近づくと、鏡を包んでいた光が一瞬にして消えた。そして、鏡に映っていたのは俺ではなかった――。


「か、カルミア……?」


鏡の向こうにはカルミアが居た。鏡の中に居るカルミアは俺を見ずに真っ直ぐ前を見ている。

少しずつ俺は鏡に近づこうとすると、カルミアは俺に気付いた。


カルミアは俺に優しく微笑み口を開いた。


「なんだ?どうしたって言うのか?」



「え……?」


俺は気付くとアンモビウム王国に居た。

しかも、カルミアに毎回勉強させられた城の図書室だ。

これは瞬間移動装置なのか……?なら、俺が此処に居るのは不味い……!

俺は一刻も早く逃げようと、扉を開けた瞬間――!


「わわ、ど、どうしたのだ……?ニゲラ」


扉の先にカルミアが居た。今の姿は最後に見た時と変わらず、綺麗だ。

――いや、そんな事思っている場合じゃない。流刑された筈の俺が、カルミアと鉢合わせしているのはかなり不味い。

変な汗が出るわ、目頭が熱くなるわで頭の中がごちゃ混ぜになる様に混乱していると、カルミアは予想外の反応をした。


「貴様、午後の授業をサボる気だな!?けしからんぞ!」


「な、何言ってるの……?俺は、流刑に……」


「ん?貴様こそ何を言っている?夢でも見ていたのではないか?ほら!」


カルミアは手鏡で俺を映すと、そこには頬に本の角で押さえ付けられた跡が付いている俺自身が居た。しかも、口元の左には涎付きだ。

涎を拭くと慌ててカルミアは苦笑いしていた。


「ふふ……。仕方ない奴だな!なら、今日は授業を休むとしようか!」


そうだ夢だったんだ――。


「夢うつつな奴には城下町でのんびり私――我と散歩するのが良いだろう!」


あれは悪い夢で、これが現実なんだ!


「そうだ!久しぶりに我が父上の建てた劇場へ行くか!貴様は演劇好きだったろう!それが良い♪」


カルミアに嫌われず、失望していない。

そして、アイビーが殺される前みたいに笑顔で溢れているカルミアが目の前に居る……!

こんなの――


「……!どうした!?ニゲラ、何故涙を……?」


「うぁ……」


気付いた時には涙で目の前が歪んでいた。カルミアが心配そうに見つめている。何か言わなければ、そう思うけど上手く喋る事が出来そうに無い。


カルミアは何かを察したのか、俺が抱き付いても良いように両手で差し出した。


「辛かったな。だが、もう大丈夫――いえ、もう大丈夫よ。さあ、私の胸に飛び込みなさい。何も怖くないから!」


「カルミア――!」


カルミアの光輝く様な優しい笑みに俺は飛び込もうとした――その時!


「甘い香りのする夢ね、素晴らしいわ♪」


聞いた事が無い声が聞こえた途端にら誰かが俺の首根っこを掴まれた。

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