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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
一章:都忘れの花束を君に
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第十八話「最高(?)の助っ人」

あの後、俺達は途方に暮れていると、警備隊が通り掛かってきた。

警備隊の男は最初は愛想の良い雰囲気だったのだけれども、『ムナカ』と言う名前を聞いた途端に豹変した。


「何なんですかそれ!?僕達の友達が拐われたんですよ!?」


ヨークは今まで聞いた事の無い怒鳴り声で警備隊に問い詰めた。


「だから、ムナカ家の方々が関わる事件は有り得ないので捜査はしませんよ」


「それでも、政府の警備隊なんですかっ!?この状況って、所謂隠蔽ですよっ!?」


「はいはい、君達が不利なの分かりましょうね」


警備隊は無視する様に馬に乗り立ち去った。ヨークは顔を真っ赤にしながら警備隊を睨み続けていた。

レナは宥める様にヨークの肩を触れると、ヨークは深呼吸して暫く黙った。

少しの無音が続くと、意を決した表情で俺とレナに向けながら話し始めた。


「……こんな提案するのはアレですけど、ムナカの屋敷に乗り込みませんか?今すぐに!」


「よ、ヨーク君。それは流石に……」


「警備の人が居るかもしれないから、落ち着いて下さい!死んじゃいますよ!」


ヨークは俺とレナの反応を見ると、再び顔を真っ赤にして頭を掻き(むし)った。少しすると、息を荒げながら何処かへ行こうとした。


「あの……何処に……?」


「はい?何処って屋敷ですよ?お二方が行かないなら僕だけ行きますが、何か?」


ヨークは丁寧な口調だけど、怒りで我を忘れている様で少しトゲのある言い方だ。異様な早口で噛まずに言うと、俺とレナを置き去りにして何処だか分からない屋敷へ向かう。

レナと共にヨークの後ろ姿を見ると、レナが不安そうに話す。


「こ、これ、大丈夫?ヨーク君も捕まらないかな……?」


「……後を追いかけよう。屋敷の警備を見れば頭冷やすかもしれませんし……」


淡い期待を抱いてヨークの後を追うことにした。

雨が降る暗い町をヨークは迷いながら進んでいる。最初はかなり足が早かったけど、段々と疲れで足が重くなって来てるようだ。


ヨークは普段より少し遅い歩調になって暫く歩くと、左側を見た途端に足を止めた。俺とレナはヨークに歩み寄る。


「ヨーク、どうしたんですか?」


「あ……、ニゲラとレナ。着いて来てたんですね……。それよりも、ムナカの屋敷見つけましたよ」


ヨークの指した方角を見ると、そこには青い屋根の大きな屋敷が雨の中輝いていた。屋敷の前方にはさっき見たドレスの女性にそっくりな石像が佇んでいて、誰がどう見てもムナカの屋敷だと分かる。

門に先ほどの召し使いが守る様に佇んでいた。屋敷の庭を絶え間無く歩いている召し使いも見えていた。

フォンを瞬時で縛る人達だ、侵入をしたらすぐ捕まるのは目に見える……。


ヨークは暫く屋敷を見ると、目を瞑り深呼吸をした。そして、俺とレナを見て頭を下げる。


「少し頭を冷やします……。すみません。」


「いえ、大丈夫ですよ。取り敢えず、宿に戻って今後どうするか考えませんか……?」


「うん、そうだね!どう乗り込むか作戦を考えよう!」


「「乗り込まないから!」」


レナのボケ(?)にヨークと同時に俺はツッコミと、いつもの雰囲気に戻った。三人の表情が軽くなるのを確認して去ろうとした――その時


「へー、お前らムナカの屋敷に乗り込むのか?」


後ろを振り向くと雨の中、長身の男がフードを被りながら佇んでいた。俺達は一気に背筋が凍った。


このまま警備隊に告げ口されたらどうしよう……!?


そんな不安が三人同時に襲っている最中、長身の男は予想外な反応をした。


「――乗り込むなら、俺様なら~、やっぱり爆弾でドーンッてやるだろうな~!注意を()らしてから~ザザーンッとやるんだよ!」


何、この人……?


緊張が走っていたこの場は一気に良く分からない雰囲気になってしまった。この人酔っ払いなのだろうか?酒臭い……。

酔っ払いに絡まれるのは面倒だと良く聞くから適当な事を言って去ろうかと思っていると、レナがある人物の名前を口にした。


「もしかして、アウルスさん?」


「え……?何故俺様の名を……?」


すると、長身の男はフードを外した。そこにはいつも付けていた覆面は無く、癖毛のある中途半端に長い茶髪が有った。しかし、先ほどの声を思い出すとアウルスの声なのは間違いない。


アウルスは俺を凝視すると、唖然しているような表情をしていた。まさか、また会えるとは……。再会を機に、積もる話を沢山出来るかと思ったが――。


アウルスは急に青白い表情へ変わった。そして――


「に、逃げろ!!」


「なんで!?」


まるで、俺を竜か何かを見たかの様に逃げ出した。後を追おうとしたが……、アウルスは地面のタイルに(つまず)いてしまい顔面を強打した。鈍い音しながら地面と顔を擦り寄せた。

心配して三人でアウルスの元に駆け寄ると、アウルスは顔面擦り傷だらけで気絶していた。


「こ、この人がレナを拐った人ですか……?」


「うん……」


「この人いつも顔面を怪我してるな……」


三人で気絶したアウルスを宿へ運ぶ。宿に向かう最中、すれ違う度に町の人はアウルスが死んでいると勘違いして手を合わせる始末だ……。



「ま、まさか、俺様とニゲラがまた出会うとはなー……」


アウルスの顔面はレナに雑な応急措置によって包帯でぐるぐる巻きにされていた。鼻の穴には鼻血止めとして丸めた布を入れられていた。何とも言えない格好だ。

部屋にはヨークが居たけど、アウルスの顔にツボにはまってしまい離席している。レナはアウルスの応急措置を終えてから夕飯を買いに出かけてしまった。


アウルスと俺の二人っきりだ。アウルスは酔いが覚めても、俺を見ると怯える様にしていた。俺は先ほどの件を問い(ただ)し始める事にした。


「……あの、先ほどは何故逃げたんですか……?酷いじゃないですか」


すると、アウルスは周りを見回してから耳打ちしてきた。


「フレンチが脅す様に警告して来たんだよっ……。ニゲラに今後関わらない方が良いって。ニゲラに関わるのを良く思って無い奴が襲ってくるから気をつけろって……」


関わらせたくない人……?

一瞬、リュテリウス島で遭遇したあの白い男を思い出した。何故だか分からないけど、納得した。

アウルスは俯きながら続けて言う。


「フレンチって予言者なんだろ?流石にそうなると、信じざるを得ないからさ……。じゃあ、さいなら。元気でな」


アウルスはそそくさと立ち去ろうとすると、俺は思わずアウルスの腕を掴んでしまった。アウルスは驚いているけど、俺自身も驚いていた。

無意識にこの状況をどうにかしたいと思っていたからだろう。そして、口が勝手に動いてしまった。


「俺の友達――フォンを助ける手伝いをして下さいっ!頼れるのはアウルスだけなんですっ!襲ってくる人を俺が何とかしますから!!――あ……」


無責任な事を思わず言ってしまった。アウルスに呆れられてしまうと思ったが――


「えー?俺様を頼るのか~?いや~、でもな~。ニゲラが守るって言うなら良いけどさぁ~」


アウルスは満更でも無い様にニヤニヤしている。

この人単純だ……。

でも、これならアウルスを味方に付ける事でフォンを助けられるかもしれない……!

俺は不器用にアウルスを褒めちぎった。


「アウルス……さんなら、成功します!アウルスさんは格好良い……と思いますし!」


「だ・よ・な~!そうだよな!俺様格好良いもんな~!そんな俺様ならニゲラ達を助けられるもんな~!」


「こ、この件が成功したら、フェレスさんと並ぶ伝説になるかもしれませんね!」


「姉御に並ぶか~!伝説始まっちゃうか~!」


「よ、よっ!色男!イケメン!大根役者!!三枚目!!」


「よっしゃ~!!後半、何言ってるか分からんが!ニゲラ達を助けてやるよ!今からアスィミ呼んでくるから、待ってろよな!!」


アウルスさんは窓を開けると、助走を付けて飛び降りた。心配して俺は急いで窓から様子を見ると、裸足で元気良くアウルスさんは走り去るのが見えた。


そして、翌日にアスィミとも再会した。アスィミは覆面を外すと少し白髪混じりで薄毛の短髪だった。


何故かアウルスさんは前日よりも怪我が増えていた……。フェレスにシバかれた物による怪我なのは言うまでも無い……。

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