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ポインセチア・ノート  作者: 紫音
一章:都忘れの花束を君に
1/66

プロローグ(改稿)「五分後の君にアンモビウムの花束を……」

――ああ、(ぼく)はまたこの夢を見るのか。


僕はもうすぐ好きだったカルミアに殺される事になる。

崖に佇む処刑台に居る僕は地平線を眺めていた。

背後から罵声と石が飛んでいたが、ただただ泣いたり怒ったりする気力なんて僕にはもう無かった。


「謀反を企てたんだ殺せ!」

「死んで詫びろ!謀反人!」

「何故まだ生きてるの?早く処刑してよ!」


汚い、冷たい、鋭い言葉が何度も僕を突き刺して来た。そこに混じっていた城の時計台の秒針は僕の心と寿命を(すり)り潰すように時を刻んでいた。


「死刑囚……いや、流刑だから違うか。被告人ニゲラ・クローバーよ、貴様はアンモビウム王国に災いをもたらした。よって十三代目王女カルミア・アイリスの名の元に、貴様を流刑に処す。……何か言い残すことは?」

罵声の中を駆け巡る美しい声が僕に届いた。その声は市民よりも僕にとって彼女の声が一番傷つく凶器だ。


――そんなつもりはなかったんだ。許してよ……。


そのような言葉は皆にも、そしてカルミアに届くわけがない。

皆は僕が嫌いなのだから。そして、皆は僕がただの疫病神なんだって、忌み子なんだって信じているのだから――。


後ろを振り向き玉座を見るが、カルミアは冷たい視線を刺し込んでくる。カルミアの冷淡な瞳を睨み付けると、カルミアはため息をして目を反らしながら言った。

「……そうやって誰も愛してくれないから睨み付けて終わるのか?大人になれ」


――大人って何だよ。

この何も分かっていないくせに罵声を浴びせる野次馬を大人だとでも?

僕を陥れたあいつが野次馬の後ろでニヤついているのが大人だとでも?

カルミアや近衛兵、護衛隊長みたいに冷たくするのがか?

カルミアの元恋人みたいな無責任な人間がか?


もう良い。

全てに嫌気が差した。この世界が、この国が、この市民が、カルミアが――


「もういい……。こんな世界、国、市民なんか消えてしまえ!!分かっくれない君も消えてしまえ!!」

「はぁ……。貴様の言い分は良く分かった……。貴様を我は――」


その時、世界が揺れた。

伝承で聞いたことがある地震という現象。

人々は慌て騒ぎ、城が崩れる寸前の小屋みたいに揺れる。

カルミアは護衛隊長によって安全な場所に避難しようとした。

「女王様!早く避難を!」

「だが!――」

カルミアは何故かその場に(とど)まろうとしていた。


それが、悪手となった。


「え……?」


真上に有ったシャンデリアがカルミアへと落ちた。


――嘘だよね?カルミア?


ここからだと良く見えない。だが、直視する勇気は無い。

ただただ、城が崩れていくのを見るしか出来なかった。


何でこんなことに……?


僕が望んだからなのか?


放心していた僕と処刑台は崖から崩れ落ちた。

海まで落ちる時間はゆっくりと進むように感じた。


――僕は悪くない。

皆が優しくしなかったからだ。

皆が分かってくれなかったからだ。

この世界には希望なんて無いんだ。

だから、何も悪くない――


水中を沈んでいく中誰かが僕の腕を掴んだ。

誰なのか分からないけど、その人は水中ではっきりと僕に言った。


『全部お前のせいだよ。じゃあな、ロクデナシ』


我に帰った途端に全てがはち切れそうになった。

そうだ、僕が悪い。

こんな僕が居たから……。


意識が無くなる瞬間。


シャンデリアが落ちてきた時のカルミアの表情が焼き付いた。


それは、僕に向けたなんとも悲しい表情だった。


『そして、俺は何年もこの悪夢を永遠に繰り返すだろう。

君と二度と

出会わない日を

願っている――』


幻聴だったのか分からないけど、ブザー音が聞こえた気がした――

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