拓海の恋:めでたしめでたし
翌日午後、吉岡のところの幼稚園児・チビスケと遊んでいる結莉に、電話が入った。
「どうしたの? 拓海」
「あ、ん…あの…」
「何な~に?」
「あのさぁ、オレ…」
「何よ! 男ならハッキリ言いなさいよ」
「ん、オレ、ミミと、ちゃんと付き合うことにした…、昨日、自分の気持ち伝えた。ミミのご両親にも、ちゃんと挨拶に行く」
「ほ~、そう~。……えっ? ええっ!?」
結莉は、一度ソファに倒れたが、「うん!よかったよかった!」
と、平静を保ちつつ、拓海の電話を切り、結莉は慌てた。
「どうしよう…写真…、もう遅いよね…どうしよう」
朝一でポストに投函した写真は、すでに郵便局へと、運びこまれている。
☆☆☆☆☆
数日後……。
「なに…、これ…」
結莉が、首を捻った。
「どれどれ~? 拓海たちの写真載ってる?」
修平が雑誌を覗き込んだ。
結莉が写真を送ったゴシップ誌発売日、朝一、二人は、コンビニの雑誌コーナーに立っていた。
トップページは、拓海と美里が、かわいくキスをしている写真。
「修平くん、私、こんなシーン撮った覚えないよぉ? 加工もした覚えないし」
見出しは、
『FUNNY FACE・拓海熱愛発覚!お相手は一般女性・Mさん(22)』
『すでに家族ぐるみのお付き合い!兄貴分リフィール・修平も参加!?』
爺さんの誕生日会の日、食事を終えた結莉を含む7人がレストランから出てきた写真も載っている。
「結莉…ねぇ、ここ…」
修平が、指を指した。
見開きページの隅に、木の陰に隠れてカメラを構える結莉と、後ろにくっ付いている修平の写真が小さく載せてあり、下には(拓海を見守る怪しい二つの影!)と、書かれている。
結莉たちが尾行せずとも、写真カメラマンがすでに拓海を張り込んでおり、だいぶ前から拓海と美里の写真は、何枚も撮られていた。
ついでに変装をしている怪しい結莉と修平も。
カメラマンが決定的瞬間・拓海が美里に告白した日の写真が撮れたため、出版社は掲載した。
結莉が自信を持って送った写真は、一応封は切られたが、担当編集者が流し見しただけで 「何これ、下手くそ~没!」と、放り投げられ、封書の山の中に埋もれたまま、いつの間にか消えた。
そして、リフィールのツアーが終わり、五月末、結莉と修平は婚約発表をし、マスコミを賑わし、秋になる頃、結婚式を挙げた。
拓海と美里の結婚は、もう少し先のお話だ。
長い話数でしたが、最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。