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(6)結莉という人


***************



「どうだ? 結莉。リフィールって」

 モニター室で収録を見ていたプロデューサーの小沢が、結莉に訊く。

「ん? いいんじゃない? 別に興味はない」

 結莉は、棒が付いた飴をクルクルと回しながら、言った。

「それは、彼らが売れているからいいってこと?」

「うーん、それもあるし。私の分野じゃない、彼らは」

「でも、おまえがプロデュースしたら、ドドーンといくと思うぜ」

 そう言いながら小沢は腕を斜め上に上げた。

「リフィールは、私がやらなくても、この先確実に、上っていく気がする。それに誰もプロデューサーの名前でCDを買うわけじゃない。所詮、私たちは裏方でしょ?」

「そうか。おまえの目は確かだからな。おれ、あいつら、リフィール好きだからさぁ、この世界で残ってもらいたいんだ」

 小沢は、モニターに映るリフィールを見ながら言った。


「うん。大丈夫だよ、あの子たちは」 

 結莉は、棒飴を銜え腕を組み頷くと、震えるポケットに手を入れた。

 マナーモードの携帯の相手は、ナベだった。


「おまえさぁ、リフィールの修平に抱きつかれたんだって?」

「あっははは、うん。でも挨拶よ挨拶~で、なんで知ってるの? そんなこと」

「さっきリフィールのマネージャーから連絡が来て教えてもらった。でさ、なんかおまえのこと知りたがっていたから教えといた。作曲家のKeiちゃんです…と」


「Kei」という人物は世界的にも名の知れた作曲家だ。

 しかし、本当の姿を知るものは少ない。

 テレビにはもちろん出ない。

 取材にも応じない。

「Kei」のスケジュールはマネージャーの吉岡がすべてをしきり、「Kei」は作品を作り出すことだけに集中し、時折プロデュースの仕事もしていた。

 公の場にはたまに出没しているが、自己紹介をするときは本名の森原結莉を名乗ることが多い。

 彼女はオーラを消し自分のリズムで生活をしていた。


 ナベと話している途中で、小沢が代れというしぐさをしたので結莉は携帯を小沢に渡した。

 結莉はモニターに映る修平を見た。

 いきなりハグされたことを思い出していた。

「この子、海外にでも暮らしていたのかしら?」

 結莉にとってハグやキスくらいは、挨拶とかわらない。

 修平の思いなど、結莉には全く届いていなかった。


 電話を切った小沢に言われた。

「結莉、JICのパーティ来るんだろ? ナベも今回は出席しろって言ってたぜ」

「ん? あぁ…うん」

結莉は生返事で答えた。


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