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拓海の恋:忘年会

 拓海が思い悩むうちに世間が仕事収めに入り、仲間内の忘年会の日がやって来た。


 結莉は、予定の時間より少し早く美里と待ち合わせをし、カフェでおしゃべりをしたあと、二人仲良く忘年会場の店に向かった。

 座敷に入ると、テレビでよく見る顔やクリスマスパーティでの面子が揃っている。


「おっせーぞ、結莉!」

 修平がお出迎えの一声を発した。

「ごめんごめん」と言いながら、結莉の目は拓海の姿を探した。

―――あれ? まだ?

 修平の所を見ても、いない。

 とりあえず、美里を連れて自分は修平の隣に座った。


「ねぇ、拓海は?」

 結莉は、背を向け後ろに座っているFACEの洋一に訊いた。

「もうすぐ着くと思います。なんか、電車で来るって言ってたから…」

「はぁ? 電車? わかった…。珍しいね、電車って」

「なに拓海のこと気にしてんだよ…」修平が小声で拗ね始めた。

「なんにもないわよ! 居ないから聞いただけでしょ? ったく!」

 コツンと修平を叩いた。


 十分ほどして、拓海がやって来た。

「すみません、遅くなりました…」

 一応みんなに謝るが、声は…小さい…。


 今日は酒を飲むと思い、久しぶりに電車に乗って来たが、切符の買い方がわからずもたもたし、ホームでファンの女の子たちからサインや写メを求められ、電車乗換えの駅を間違え、引き戻り、やっと目的地の駅についた。

 その駅につくなり、またファンの人たちに囲まれ、断れない性格の拓海はサインをし、ヨレヨレで辿り着いた。

―――なんでオレ、電車なんかできちゃったんだろう…。



「拓海? こっちおいで~」

 結莉の声に顔を上げ、結莉の所に行った。


―――えっ!? ミミ?! どうして?


 美里が拓海のために、結莉の隣を空けようと立ち上がろうとした。

「あっ、いいよ…そこに座ってて。オレここ座るから」

 そう言って拓海は美里の横に座った。

 何も知らない美里は何も思わないが、部屋にいた全員! 全員が「ええーー!」という顔をして拓海の方を向いた。

 いつも結莉の両脇は修平と拓海が確保し、必ず喧嘩をして奪い合いになる。

 そんな拓海が結莉の隣に美里を座らせたまま、自分が美里の横に座った。

 目がほくそえんでいる結莉を除いた全員が驚いた。


「拓海…病気にでもなったのか?」 

 修平が結莉の耳元で囁いた。

 結莉は微笑むだけだ。

―――あ~~~なんか、楽しい今日この頃。というか、今日今頃!


(結莉の企みは何?あの目は何かある) BY  結莉マネージャー・吉岡。

(結莉…今度はなんなんだ?) BY ナベ&小沢。

(結莉さん、なんでしょうか、そのお目目の形…) BY リフィール&勘太郎&卓。

(結莉さん…目がクロワッサンになってますが、それは?) BY そこにいる人々。

 FACEのメンバーは、結莉をよく知っているが、まだ実害は受けていないため結莉に対しては何も思っていない。

 ただ、拓海の行動は完璧にメンバーを驚かせた。

 あっ、あと、端からなにも疑問を持たず、結莉だけをみている男・修平は嬉しそうに結莉を見つめ続ける。


 結莉の携帯にメールが立て続けに入る。

(何を企んでいるの?) みんなからの同様な内容だ。

 メールを送ってきたみんなの顔を一人一人見ながら結莉は(別にぃ)という涼しい顔で対処した。



「来てたんだ」拓海が美里に訊いた。

「うん。結莉さんに誘っていただいたの」

「ぁあ? 結莉に?!」 

 思わず拓海は美里を挟み座っている結莉の顔を覗いた。

「んふふふふ~」結莉はニンマ~リ笑い、拓海に軽い会釈をした。

 結莉の笑みの意味がわからず、拓海は首をひねった。


「この間はありがとう、送ってもらって」美里がお礼を言った。

「あっ、え、うん…連絡先…聞くの忘れちゃったから…ごめん、連絡できなかった」

「ううん。口約束だったし、拓海くん忙しいだろうから、気にしないで。それに

 今日は結莉さんに誘ってもらったし! お肉いっぱい食べれる! ははっ!」

 美里はそう言うとうれしそうな笑顔で拓海を見た。

 拓海も笑顔で返した。

耳をダンボにしている結莉のニンマリ顔はおさまりがつかず、自分の顔を擦ったりして元に戻そうと頑張っている。

 周辺の人たちは、結莉の顔にまた疑問を持ち、拓海の態度に釘付けだ。

 みんな今日は、肉を食べながら監視しなければならないので忙しい。




「今年もみなさん、お疲れさん! 来年もよろしく!」 

 勘太郎の乾杯の音頭で忘年会が始まった。


 わいわいガヤガヤいつものように盛り上がる。

「うわ~、分厚~い。こんなの初めて見た!」

 美里がタン塩を見て感激。

 そんな美里を見ながら、拓海はクスクスと笑う。


「拓海くん? お肉だけじゃなくて、野菜も食べないとだめだよ?」

 美里はサンチュを渡した。

「え? いらねーよ、葉っぱなんて!」

「ダメだってば! 食事はバランスが大切! ん!」

 美里は葉っぱにお肉を巻き、拓海に渡した。


 素直に受け取り食べる拓海。

 ほくそえむ結莉。

 拓海へのみんなのまなざし。

 なんの疑問ももたず食べつづける修平。

 幾度となくこの光景が繰り返された。




 デザートの少し大きめのマンゴープリンを食べ始めた拓海は、中に入っている果肉のマンゴーだけを取り出した。


「えっ?! 拓海くん、マンゴーだけ食べるの?!」

 美里が不思議そうに訊いた。

「うん、プリン要らないし」

「そんなもったいないよ!」

「じゃ、あげるよ」

 拓海はプリンの部分をどんどん美里のマンゴープリンの上に乗せていった。


「じゃ、ミミの果肉ちょうだい?」

「ええーー?! ちょっ、ちょっとぉ~」

 拓海は美里の果肉を全部自分の器に入れ始めた。


「ん、食べなよ、早く」

「え? お腹こわすよ…こんなに食べたら…」

「大丈夫だって!」

「これはいくらなんでも…」

 てんこ盛りにされたプリンに美里が困った。

「ほら~食えよ~」

 拓海は楽しそうに美里をからかう。


 結莉はその様子に俯きながら肩を揺らす。

 みんなは結莉を見つつ、拓海を見る。

 何も考えず嬉しそうにデザートの「まるごとりんごシャーベット」を、その名の通り、丸ごと喰らい付いている修平。

 エンドレス……。




 忘年会が終了し、家に帰る人、二次会のクラブ・「W」に行く人に分かれた。

「ミミ、どうする?」

 結莉に訊かれた美里だが、翌日に正月の買い物を家族と行かなければならないと断り、拓海を探したが少し離れたところで他の人たちと話していたので、拓海によろしく伝えてもらうように結莉に言ったあと、駅まで行く人と一緒に帰って行った。



「あれ? ミミは?」離れていた拓海が結莉の所に戻り、訊いた。

「ん? ん~帰った。明日お正月のお買い物に行くらしい。拓海によろしくって!」

「えっ……」

「残念だったねぇ」

 結莉が首を振りつつ、拓海の肩をポンポンと叩いた。

「何がだよ!」

「おやおや~。あっ、ところで、ミミの携帯、聞いたの?」


―――わ、忘れた…


「あれ? 聞かなかったの? でもまぁ、ミミも焼肉食べて満足気に帰って行ったし…よかったよかった!」

「…つーか、結莉なんでミミの連絡先知ってんだよ。この間は知らないって言ってただろ?」

「へっ?! あーなんか、名刺貰ってたの思い出したんだわよね~うんうん」

「だったら教え、」

「結莉ぃぃぃぃぃぃぃぃ」 

 修平がシッポを振ってやってきた。


「早く行こうぜ、寒むいよ~」

 足をバタつかせ、結莉に負ぶさった。

「はいはい。ほら、拓海も行くよ」

「う、うん…」


「どうした? 拓海?ん?」少し元気のない拓海に修平が訊いた。

「なんもねーよ。ポチくん!」

「何がポチだよ。誰がポチだよ!!」

「修平にきまってっだろ! シッポが揺れてるよ、尻のとこ! ポ~チく~ん」

「テメーこのやろー! 俺のシッポは後ろじゃなくて、前に付いてるんだはははぁぁああ」

「ぶっははははぁぁ、くだらねぇー」

 じゃれ合う二人を無視し、るんるんる~んと結莉はみんなのところに行った。



「W」に向かう途中で結莉は美里にメールを入れた。


『ミミ、今日はお疲れさん。あのね、拓海にミミの携帯教えていい?』 



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