拓海の恋:どうしよう…
クリスマス明け翌日。
拓海が目を覚ますと、夕方の四時だった。
リビングに下りてくと、ママちゃんがのんびりと時代劇を見ている。
「何時に帰ってきたの?」
「え~? 明け方…近所に住んでる子がいて、一緒に帰ってきたんだ」
拓海はレドリバーのポチ雄を撫でながら言った。
『一緒に帰って来た人は女性なのか、どこら辺に住んでいるのか、業界の人? 年齢は?』
ママちゃんが根掘り葉掘り訊き、拓海は素直に答えた。
「へぇ~、そ~なの? ふ~ん」
結莉以外の女性の話をする拓海を、ママちゃんは楽しそうに見ている。
「昨日は結莉と一緒だったんでしょ? 修平くんも来てたんでしょ?」
「修平は相変わらず、結莉にべったりだよ、ははは~」
「ふふっ。そうみたいね。この間も家に来て結莉に怒られながら引っ付いていたわ」
「笑える…兄貴の仏前で?」
「そうよ。修平くんにはそんなこと関係ないみたいで、ほんと楽しいわ。でもいいコンビよね? あの二人」
「うん…そうだね。結莉しあわせそうだし、修平じゃなきゃダメなんだろうね」
「そうね。修平くんでよかった。慶もそう思っているわね、きっと」
ママちゃんは嬉しそうに話した。
夜、拓海は結莉の携帯に電話をしたが、出たのは修平だ。
「なんで、修平が出んだよ。結莉の携帯だろ?」
「うっせ! 結莉の携帯は俺の携帯だぁぁぁぁ!! ははははーーー」
修平は、片手を腰に当て、上を向き笑いながら答えた。
「……相手にしてられないぜ…結莉は?」
「今、風呂! 出たら折り返すよ」
「うん。あっ、この間の特番の収録んときさぁ―――――」
二人は結局、結莉が風呂から出てくるまで話続けた。
何気なくというか、とっても仲がいい二人である。
結莉が風呂から出てくると、電話を代わった。
「拓海? どうした?」
「あのさ、森山さん…」
「ん? ミミ? が、どうした!」
「あのさ、連絡先…知ってる?」
「ぁあ? ん、昨日、送って行ったんでしょ? 聞かなかったの?」
「うん、家まで送ったけど、聞くの忘れた」
―――ふ~~ん。連絡先知りたいんだぁ~
結莉の目はほくそえんでいる。
「ええ~、私も聞いてないよぉ? あれ? あの子、誰が連れて来たんだっけかなぁ」
結莉はすっとぼけた声で言った。
「げっ! わかんないの?」
拓海の残念そうな声に、結莉はニマニマしながら落ち着いた声で話した。
「ん~~~~~、思い出せん! でも、拓海、ミミのお家わかってるんでしょ?」
「え、う、うん」
「じゃ、待ち伏せでもしてみたら? 普通のOLみたいだし、七時ごろには帰ってくるん
じゃないの? わかんないけど…ん? そうしてみれば?」
「はぁ? 待ち伏せって…ストーカーじゃねーし、オレ」
「しょうがないでしょ? わかんないんだもん」
「そうだけどさぁ~」
「とりあえず、記憶をたどってみんなに聞いてみるから、ね? 気落ちしないの」
「わかんなきゃわかんないで、べ、別にいいし…」
―――おいおいおいおいおい~別によくないだろ? そのお声!!
「そ~お? じゃぁ、別に聞かなくてもいいか…私も忙しいし」
「ええっ!!」
―――きょほほほほほ~。あせってる? 拓海ちゃ~ん。
「じゃぁ、私もう寝るから、切るよ~」
「えっ!! ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってよ。もしもし? もしも…切れた…」
―――え~、なんだよ、結莉…切るなよ。どうしよう…
拓海はソファに座り、考え込んだが、どうしていいのかわからない。
―――誰もしらねーよな、彼女の連絡先なんて…やっぱりマンションの前で待つ?
でもなぁ~、怪しすぎるよな、そんなの…。修平じゃないからそんなことできねーよ、 オレ…。どうしよう。
**************
―――よっしゃよっしゃ! 拓海の恋の始まりで~~~す。
拓海との電話を切った結莉は、また良からぬ作戦を立て始め、頭の中でゴングの鐘を鳴らした。
「なになに~? なんの話?」
修平が聞きたそうに結莉にハグる。
―――今、コイツに教えるわけには行かない…めちゃくちゃになる!
しかたない…せっかく風呂にも入って寝ようと思ったが…
「ん~~? 修平く~~ん?」
結莉がエロ声を出しながら修平の首に腕を回した。
「な、なんだよ…急に…」
修平はいつにない結莉の怪しい態度に、疑いの眼差しを送る。
「…なによ。人がせっかく誘ってるのに!もう、いいっ。ふん!」
結莉は修平から離れてベッドルームに歩きだした。
「えっ! ちょっとまてよ~結莉ぃ~~~~」
修平はしっぽを振って追いかける。
「知らない! もういいです! ついて来ないでよ!」
「ごめん~ってばぁ~。待てよ~ごめ~ん。ごめ~~~~ん」
足早になる結莉を、自分は悪くないのに、なぜか謝りながら追いかける。
もうこの時点で、修平の頭の中は電話の内容ではなく結莉だけだ。
単純で扱い易い男である。