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拓海の恋:結莉、営み苦悩

 怒り収まらずの結莉は拓海の事務所に着くと、ソファにドテッと座り、

「ゆきちゃん!コーヒーブラック!」と、人の事務所ながら、態度がデカイ。

 そんな結莉の横に拓海はダランと寄りかかった。


「どうしたの? 結莉。まだ怒ってるの? あのこと」

 拓海は楽しそうに、結莉の頬を人差し指で突付いた。


「ねぇねぇ、あのことってなに?」メンバーの泰蔵が結莉に訊いた。

「うっさい!あんたは、大人しく牛の乳でも飲んでな!」

「…はい」

 結莉に言われた通り泰蔵は、大人しくホットミルクを飲んだ。


「結莉、昼飯食っていくんだろ?」

 マネージャー・卓に聞かれたが、スタッフの村田に少し用があって来ただけでこれから吉岡と約束があり、帰ると話し、拓海がすねたが、結莉は用事を済ませたあと、事務所を後にした。

 結莉が帰えると拓海はますますご機嫌ななめになる。


「すねるなよ、拓海。どっちみち結莉さんはすでに修平さんのものだ!」

 メンバーの洋一に言われた拓海の肩が落ちた。

「認めたくねぇ…。って、まだ結婚してないし、あの二人…」

 ポツリと言った拓海にみんなが顔を見合わせ笑った。

「そうやってずっと思ってろ」

「無駄だと思うけど、な!」


「うっせぇ!」




**********************



 夜十時過ぎ、結莉が仕事の打ち合わせと食事を終えて、マンションに帰ると、北海道からすでに、修平は戻って来ていた。


 リビングンに行くと、修平が、結莉と自分のツーショット写真を編集したものを大画面のテレビに映し見ている。

 すでに何十回も見ては、一人喜んでいるアホな男である。

 結莉は横目でそんな修平を見つつ無言のまま、キッチンに行き水を飲んだ。


 結莉に気付いた修平がキッチンに飛んできた。

「おかえり~~~~~~っていうか、なに無視してんだよ! ただいまのご挨拶しろよ」

 修平の言葉にチラッと見ただけで何も言わず、浴室に向かおうと一歩踏み出した。

「な、な、なんだよーーーー。なんでシカトなんだよ!なんか言えよ~結莉ぃ~」

「ふん!!!!!!!」

「えええーーーーーー!!」

 無視される理由がわからない修平は結莉を抱きしめた。

「どうしたんだよぉ。五日振りじゃねーかよぉ~、俺淋しかったぁ~」

 甘えてみたが、結莉に思い切り振り払われた。

「ふん!!!!!」

「……ちょ、ちょっと結莉、わけわかんねーから~。俺なんかしたか??」

 修平はあせるだけだ。


「私、お風呂入るから!」

「じゃ、一緒に入る! 待ってたし~」

「一人で入るから、邪魔しないでちょうだい!!」

「……」

 ドスドスと大股で結莉は廊下を歩いて行き、修平はボー然と立ちすくんだ。


 結莉がお風呂に入っている間、修平は結莉のマネージャー吉岡に電話をしてみたが、これといって何も変わったことはないことと、別に修平の話は出てなかったと言われ、余計わけがわからずドンドン落ち込んでいく。



             ☆☆☆



「修平め! 外で適当なこと言いやがって!! 許さねーーーーー!」

 結莉は湯船に浸かって二匹のアヒルちゃんを沈めた。

 カチャッと浴室のドアが開き、ジャグジーの中の結莉が振り返ると、顔は非常に落ち込んでいるが、いつものように下半身は元気な修平が仁王立ちで立っていた。


「な、なに勝手に入ってきてるのよ! 出て行きなさいよ!」

 あひるちゃんを投げつけた。

「なに怒ってんだよ! 教えろよ! ……っつーか、ヤル!? 五日振り~」

「ちょっとーーーー!きゃ~~~」

 ツカツカと自分も湯船に入り、逃げようとした結莉を掴み「事」を行なった。

 野生の王国である。

 結莉の力では修平に敵わない。


 いつものことであるが、力が抜けた結莉はタイルの上にヨレヨレとしゃがみこんだ。

―――だ、だめだ…こいつ…性欲強すぎ…、耐えられない…うっ…。

 結莉は下から修平を見上げた。


「結莉ぃぃぃぃ~!気持ちいいぃぃ?」

 また抱きついてきて言った。

 気持ちいいのは自分だけである。


「で、なんでシカトしてんだよ…教えろよ」

「もぉーー!! 修平くん、みんなに私が『女王様』で困るとか言ってんだって!?」

「…えっ…え…へへへ…」

「何笑ってごまかしてんのよーーー。夜の営みが辛いとかも言ったんでしょ? 無理ヤリヤッてんのはどっちよ!!地方に行っているとき以外、毎日毎日!! 体がもたないのは私の方でしょ!!」

 真剣な顔で結莉は訴えたが、「へへへ~ははは~」と、修平はごまかしながらシャワーを浴び、とっとと出て行った。



「やっべー、なんでばれてんだよ、おかしいなぁ」

 修平がシャワー室から出てリビングに戻ると、拓海から電話が入り、事情がわかった。

「…拓海、その情報、もう遅い…」

「わりぃ~わりぃ~。連絡するの忘れてた! で、怒られたんだ、やっぱり」

「シカトだよシカトーーー。でもさっ! 今さっき力づくでヤッたけど、俺!!」

「…そ、そうなんだ…」

 拓海は電話の向こうで、元気に言う修平の言葉に赤くなっていた。

「んじゃ! 俺、結莉が風呂から出てきたら、今度はベッドの上で愛を育むから! なんせ、五日ぶりだから!!じゃぁな!」

「……」

 拓海はもう何も言うこともなく、切れた携帯を見つづけた。

 とっとと電話を切った修平は、ベッドの中で待機だ。



 結莉はシャワーを終え、リビングを覗いたが修平はいない。

「もしかして寝室に…?」

 ちょっとためらった。

 修平の行動は見えている。

「はぁぁぁ…」 深いため息と共に寝室に行った。

 ドアを開けると修平は、すでにベッドで眠っている。

 ホッとした結莉は、静かにベッドに入り、修平に背を向け目を閉じた。


 ヒシッ!! っと修平が抱きついてきた。

「……」 結莉の顔が曇る。

「ゆ・う・り……」

 耳元で囁き、首にキスをしてきた。

「……」結莉は無視だ。

「こっち向けよ~」

 ガンとして動かない結莉。

 修平がごそごそと布団の中で結莉が向いている方に移動し、結莉と向き合った。

 目を瞑ったままの結莉のおでこにキスをして、頬にキスをして、唇にキスをしようとした時、結莉が反対側を向いた。


「んなっ! なにそっち向いてんだよ~結莉!」

 修平は、またごそごそと反対側に行った。

 結莉がまた反対側を向く。

 数回繰り返した後、修平が結莉を仰向けにし、上に乗った。

「結莉、機嫌直せよ、ん?」

 結莉は目を瞑ったまま寝たふりを続ける。


 修平は結莉の目を自分の指で無理やりこじ開けた。

「ぶっははははーーーー。おもれ~~~~~結莉の顔」

「……」

 結莉はニコリともしない、白目のままだ。

「怒んなよ~…。ヤろうぜ~」


―――…でたよ…この欲情の塊男。


「…やだ」

「俺、ヤリてーよ~~。五日ぶりに会ったんだよ?」

「さっき、出したでしょ?! 今さっき!」

「不発!! あれ不発! だって結莉イってないだろ? さっき~」

「別に! 毎日やらなくても私は充分です!! それに一日二回も体力持ちませんし! エッチなんて月に一回か二ヶ月に一回くらいで十分でしょ!なんなら一年に一回でも、」

「んなこと言うなよ~。俺毎日ヤリて~し~~~~」修平はうれしそうに言う。


「…そんなにやりたきゃ、外でやってきな!! 若くてかわいいおねーちゃんいっぱい寄って来てくれるでしょ!?」

「……なんだよ、それ! 本気で怒るぞ!! 他の女なんか興味ないって知ってるだろ? 遊びでも他の女なんて抱きたくねーよ。結莉じゃなきゃ俺の人生意味ねーし、結莉以外必要ねーんだよ、俺は!!」

 もう何回も聞いている言葉。

 わかっているが、タンパクな結莉には営みが辛い…。


 修平は我慢できなくなり、またまた無理やり力づくでヤッてしまう。


―――裁判起こしたら完璧私の勝利で慰謝料がっぽりで、別れられるこの状況。


 などとヤラれながら、泣きの結莉は考えている。



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