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(46)二人のはじまり(完)

 秋から始まったコンサートツアーも、四月の追加公演を最後にやっと終わる。

 四月のアリーナライブの二日間は、少し演出を変えることになった。

 そして、俺には一つの計画があり、メンバーと照明さんと音響さんだけに相談をした。


「あのさ、お願いがあるんだけど…」

「なんだよ、おまえのお願いは、結莉さんがらみだろ~」タカが言う。

「まったくその通りでございます」俺は、直角に頭を下げた。

「で、今度は、なに」利央の言葉にみんなの視線が俺に集まった。


「勘ちゃんには、絶対言うなよ」



          ☆☆☆




 長かったツアー、追加公演最終日、俺はリハを終え、楽屋でリラックスしていた。

「リハお疲れ~、どう。調子は」

 結莉が来てくれた。

「すんげー調子いい~、今日の俺!」

「あそっ。それはよかったわ」

「結莉の席って、ちゃんと俺が渡したチケットのところだろ?」

「うん。よっちゃんと小沢とナベさんと並んでる」

「よしよし…」


「ん? それがどうしたの? でもアリーナ席なんていらなかったのに。ファンの人たちに譲ればいいのに」

「どうして?」

「私たちは、いつもリフィールに会ってるじゃない?」

「というか、俺、結莉のだんなさんだし…うほほほっ」

「…まだ結婚してないっていうの!」

「あ~照れない照れない」

 結莉からパンチが、左右に飛んできた。

 ライブ前なのに…、顔、腫れちゃう…。


「と、とりあえず、ちゃんとライブ見てよ! 席から動くなよ!」

 俺は両頬を擦りながら、言った。

「わかったわよ。変なの~」

 結莉は、差し入れの天むすを食べながら、首をかしげている。

 俺は、メンバーの顔を見たあと、みんなとうなずき合った。



 開場が始まり、楽屋には知り合いの芸能人や音楽関係者などが来てくれ、少し慌しくなった。

 結莉は、会場の方にきている関係者たちに挨拶に行くと言って、そのまま楽屋には戻ってこなかった。


 スタンバイの声がかかり、俺は携帯で会場にいる音響さんと照明さんに「例の件、よろしくお願いします!」と、連絡をいれ、メンバーとサポートの人たちで円陣を組み、気合を入れて、ステージに飛び出した。


 会場のファンの黄色いギャルデシベルを受けて、リフィールのツアー最後のライブが始まった。



 ライブが始まって二時間くらいして、一旦照明が落とされ、会場が真っ暗になった。

 ピンスポが俺だけを照らすと、ハンドマイクで俺は、話し始めた。


「みんなには申し訳ないですが、次の曲は……俺の愛するたった一人の人のために、歌わしてください」


 ファンの子たちのデシベルが静まるのを、待った。


「俺には、とても大切な女性がいます。何年も彼女だけを追いかけて…、彼女しか見えなくて、俺の気持ちは、彼女だけのものです。今でも、そして、これからも…、永遠に…」


 俺が、自分の気持ちを話すと、会場は静かになっていった。


 そして、俺が話し終え、全ての照明が点けられ、淡いオレンジ色になった会場は、一人一人の顔がよく見えた。

 俺の合図と共に、この日のために練習してくれたタカと利央と裕のピアノ三重奏の演奏が、始まり、俺はそれに合わせ、歌いだした。



「僕が歩いてきた道と

 君が歩いてきた道は

 同じところにたどり着く


 終わる事のない 君への愛は

 しあわせの中に とけていく

 瞳を閉じて 君を感じて やさしさに包まれる


 僕をめぐる月は君

 もう離れることのない 

 君は僕をめぐる月


 触れる頬 触れる唇

 もう手を伸ばさなくても いつも君はそばにいる」






 広いドームの中央に作られたキャットウォークを、ゆっくり歩いた。

 メンバーの三重奏を背中に受け、キャットウォークを下り、俺は、結莉だけを見つめて歩いた。

 舞台を下り、結莉の前に来ると、結莉は困った顔をしていて、横にいた吉岡さんと小沢さんとナベさんは微笑んでいる。


 俺は、結莉を抱きしめた。

 そして「愛してる…」と、言った声は、マイクを通して、会場に響き渡った。


 会場からファンの子たちの悲鳴にも似た声と、拍手と、声援が入り混じった中、心の中でガッツポーズの俺の耳元で、結莉にボソっと、言われた。


「で、この状態から、次にどうやって移る気なの?」


 あ、相変わらず落ち着いている…結莉…

……俺は…、この先を考えていなかった…


「ど、どうしよう…」小声で言ってみた。

「もぉ…お馬鹿!」



 チリンチリンチリーーーン、チリチリチリーーーーン。


 どこからとも無く、自転車のベルの音が、会場に響き渡った。

 キョロキョロすると、中央扉の向こうから、自転車に乗った警官が一人と、その後ろに五、六人の警官が走って、俺の方に向かってくる。


「ごらぁーーー、そこの二人―――」

 自転車に乗った警官は、マイクを胸に付けていた。


「おまえらはみんなの前でイチャイチャしやがってぇ~、迷惑罪で捕まえてやるぅ!」

 自転車に乗った警官は、勘ちゃん…?


―――ど、どうしてぇぇ?


 俺は、何が起こったのかわからず、ボーっとしていた。


「おまえは、女のケツばっかり追い掛け回して! 今度はこの女か!! ったく、しょうがないヤツだ。こっちに来い! とっとと、ステージに上がってライブを続けろ! ライブをぉ!」


 勘ちゃんの演技に会場はもちろん、結莉は腹を抱えて、笑っていた。

 俺だけは、笑いも起こらない、唖然とした心境だ。


 後ろから走ってきた警官たちに俺は囲まれ、強制的にステージに戻された。


 勘ちゃんたちは、ステージの上まで上がってきて、俺をメンバーの前まで連行し、警官たちは「せいれーつ!」「番号」「右向け左~」などと、コントをして、帰って行った。


 その直後、裕のドラムスティックのカウントと共に、リフィールのライブは続けられ、無事に最終日を終えた。






 汗だくで楽屋に戻ると、待っていたのは、勘ちゃんからの大目玉だった。

 今日は、メンバーだけでなく、照明さんと音響さんも一緒並んで、怒られた。


 勘ちゃんが言うには、ライブで披露するはずもないピアノ、バイオリン、チェロをなぜかものすごく一生懸命練習しているメンバーに疑問を持ち、俺たちの行動と言動を影でチェックしていた。

 俺の作戦はバレにバレていた。

 そこで演出のように見せかけるため、勘ちゃんと事務所スタッフが自ら寸劇を披露してくれた。


 勘ちゃんから怒られている時、JICの会長と社長と結莉と拓海が楽屋に来て、

「修平くん、結莉をよろしく頼んだよ。今日の演出、私はとてもうれしいよ」

と、会長から言われ、思わずヨボヨボの会長を、力いっぱいハグってしまったが、

「ふぉっふぉっふぉっ~~」と、会長はハグリ返してくれた。

拓海は、横で笑っていた。



 次の日のスポーツ新聞とテレビのワイドショーでは、演出なのか本当なのかで、話題になった。

 もし、本当なら「あの女性は誰だ!」ということになり、マスコミに張り込まれる前に、俺と結莉は、カメラの前で婚約発表をした。




       そして、結莉と俺の二人で歩いていく、人生の幕があがった。


読んでいただきありがとうございました。

一応、このストーリーは終わりですが、別ストーリー「見上げた空は…」の方で

「結莉と修平」が暴走夫婦で出現します。

お時間があるとき、そちらも読んでいただければ、うれしいです

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