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(39)みんな香港に集合

 翌日、俺は、六時三十分きっかりに起こされた。


「はいはい! 起きなさい!」結莉の声で目を覚ました。

「んん~、何時?」

「六時三十分。ちゃんとご飯食べて行ってよ。体もたないんだから」

 結莉は、ちゃんと朝食を用意してくれていた。

 今日は、観光ロケを行うが、結莉も同行する。

 なんか一緒の仕事って、初めてで、うれしさ倍増。

 朝からニヤけてしまう。


「一緒に仕事するの初めてだよね」

「まぁ、私は、仕事じゃなくて付き人なんだけどね、今回は…」

 結莉は、別に出演するわけでもなく、スタッフに加わるわけでもない。

「小沢とポンたちに頼まれたの! 修平の付き人というか子守?」

「えっ! 俺専属なの? 結莉!」

「そうよ! ただ働きよ! これ終わったらなんか頂だいよ」

 俺専属という言葉に、俺の顔は、ニンマリしてしまった。


「ちょっと、聞こえてるの? なんか頂だいって、言ってんのよ?」

「えっ? いいよ~俺あげる」

 結莉のものすごく冷たい視線を、受けた。

「げっ! うそうそ。なんかプレゼントするから!! 何がいい?」

 俺は知っている。

 結莉は物欲なんか、ないってこと。

 俺が何か…たとえば指輪とか、アクセサリーとか、ブランドのバックとかプレゼントすると言うと「いらないから、そのお金どっかに寄付してきな」と、言う。


「んじゃ、そのプレゼント代で、おもちゃ買って子供たちにあげといで」

 ほらっ、自分の物は要らない、子供たちのために使えってことだ。




 結莉と俺は朝食を済ませ、久しぶりに一緒にマンションを出た。

 マスコミが、たまにうろうろするので、外出の時はいつも別々に出て、下のショッピングアーケードで待ち合わせをし、出かけていた。

 でも、今日は一緒にマンションの正面玄関からタクシーに乗り、ホテルに行った。



 ホテルに着くとファンの子たちが集まっていて、警備員の人が配属されている。

「どこから情報ってもれるんだろうね?」 

 結莉は、車を降りる前に呟いた。

 なんで俺たち二人の情報はもれないんだろう…

 漏れても全然かまわないのに。


 タクシーから降りると、黄色い声が俺に大波になって、振りかかってきた。

 キャーキャーうるさい香港ギャルたちに、マネージャーのフリをしている結莉は顔をしかめ「うっさい! 静かにしろ! 他の人達に迷惑がかかる、あっち行け!」と広東語で怒鳴っていた。

 世界的に知名度があるkeiなのに…俺のマネージャーやってるよ、今日は。

 だけど、結莉はマネージャーに向いていない…

 ファンの子たちに、そんなこと言っちゃダメだよ。

 もっと優しく言わなきゃ…。

 俺は、デシベルガールたちに愛想を振りまき、昨日のミーティングルームに行き、スタッフに挨拶を交わしたあと、準備に入った。


 ロケバス二台で移動を開始しすると、行く先々でキャーキャーと人に囲まれ、香港人の女の子たちから 一番人気だった利央は、「オレ…香港住んじゃおっかなぁ」と、ルンルンステップだ。

 なんだか香港のファンの人から、メンバーの名前を呼ばれると、俺は嬉しかった。

 みんなリフィールのことを知っていてくれるんだと…実感がわいた。


 俺は、歩いて移動するとき、たまに結莉の腰に手をまわしたり、肩に手をかけたりしたが、全て叩かれ、振り払われていた。

 いつものことなので構わないが、俺は、凝りもせず同じことを繰り返す。メンバー達は苦笑いだ。

「いつもそんな感じで歩いてるの? 二人で」タカに言われた。

「そうだよ。いつも振り払われてるけど…」

「本当にみんな何とか言って! このおバカちゃん修平に!」

 結莉は、溜息まじりに言った。


「いいだろー、ちょっとくらい」

「ちょっとじゃないでしょっ!」

「じゃ、こんなことしちゃおーかなーー」 

 調子に乗った俺は、街中の人々が見守るなか、思い切り後ろから、結莉に抱きついた。

 きゃーきゃーと、外野の女の子たちの声がする。


「…………」

 結莉は、俺を振り這わずに、低い声で言った。

「ホントだったら投げ飛ばすけど…この手を離さないと、もう…私とは、一生会えないと思ってね…本気だからね、私」

 俺は、すぐさま手を離した。

 恐かった…結莉の低い声が。


 勘ちゃんが、俺のところにきて、頭を叩いた。

「っ!」

「修平、頼むから、普通にしてくれ。普通に…」

 勘ちゃんに泣かれるが、俺はいつも言っているが、いつも普通だ。

 メンバーには、いつものおまえだ! と言って笑われた。


「修平くん…帰ったら、反省会ね…おしおき」

 と、恐い顔の結莉に言われた。

「お仕置きって…夜の営みで?」と小声で聞くと、みんなの注目も無視し、ボコボコと殴られ、本気で蹴りを入れられた。


 結莉の顔は、本気の怒りモードに入っていたので、少し距離を置いて行動した。





**********



「ごめんね、結莉さん。あんな野生児押し付けちゃったみたいで」

 勘太郎が結莉に言った。

「あははっ、なんかもう、慣れちゃったですよ。慣れって恐いですね」

「アイツ、本当に結莉さん一筋で…本当に好きなんですよ」

「はい。わかっています。小沢やナベにも言われたし、リフィールのメンバーにも、よろしくお願いしますって…言われちゃいました」

 結莉は、そう言って笑った。


「なんか修平、香港に来てからというか、結莉さんの傍にいると、すごくしあわせなそうな顔するんですよ。僕もそういう修平見てると、嬉しいんですよ」

 勘太郎は、ポンたちとふざけている修平を見ながら、やさしい顔で言った。


「私もしあわせです、修平くんといると…。周りの方たちには、私たちのことで迷惑かけちゃってるかもしれないけれど、私、楽しいし、幸せです」

 結莉は口角を上げて、勘太郎を見た。

 また勘太郎も微笑んだ。


「一人の人と…たった一人の人と出会っただけなのに、全ては変化していくんですね。修平くんに出会って気づかされました。先に進む楽しさ…」



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