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(29)作戦開始

 次の朝、事務所は、とてもにぎやかだったらしい。

 情報が流れるのは、早い…


 俺はマンションから「一歩たりとも外出をするな」と、きつく言われ、家の中でゴロゴロしていた。

 結莉からは、仕事を終えて「夕方に来る」と、連絡があったと、勘ちゃんに言われた。

 俺は、まだ結莉の連絡先を、知らない…

 夕方が来るのが、待ち遠しくて、外のマスコミの賑わいなど気になどせず、部屋の中でウキウキとスキップをしていた。


 一応、被害者である拓海の事務所サイドが、早々とカメラの前に出て、

「今回の件は、本当にただの仲間内の酔っ払いのふざけ合いであり、刑事事件になるようなことではないし、昨日も、そのまま一緒に帰った」と、強調してくれた。

 俺は、明日カメラの前に出ることに決まったと、事務所から連絡が来て、勘ちゃんがマンションに戻ってから、打ち合わせをすることになった。



 六時前にチャイムが鳴り、玄関を開けると、結莉が立っていた。

 俺は、何も言わず、結莉を抱きしめる。

 そして、結莉も、いつものように俺の背中をポンポンと叩いた。


 普通の挨拶のハグだ……ガクリッ。


 俺は、抱きついたまま訊いた。

「自分ちなのに、チャイム鳴らすの?」

「うん、一応。あっ、下にマスコミ沢山来てたよ。ここバレてんだねぇ」 

 お気軽に言ってくれた。

「ねぇ…」

「ん?」

「キス…していい?」 

 俺は、おもいきって訊いた。

「うん、いいよ~」 と、結莉の軽い返事に、俺は、おもいきり深いキスをした。

 結莉は、俺から逃れようとしていたが、今回は力を入れて、離さないように頑張ったが、

「って! 痛っーーーーーーー!!」

俺は、結莉から急いで離れて、ピョンピョン飛んだ。

「な、なにすんだよーーー! キスしていいって言ったの結莉じゃないか!」と、股間を押さえ、飛びながら訴えた。

 蹴られた…急所を…

 加減と言うものを持っていないのか…結莉は!

 俺の、大事な…息子ちゃんが…。

 涙だ。


「あ、あ、挨拶のキスは軽くでしょ!? さっきのフレンチ、キ、キスは、な、何だったのよー」

 久しぶりに結莉の普通じゃないトーンの声を、聞いた。

 あっ、もしかして、ちょっと動揺している…?


 多少痛みの残る股間を押さえながら俺は、ドスンドスンとゲスト用のリビングに入って行く結莉の後ろに付いて行った。

「あっ、ひさびさ。このお部屋!」 

 そう言いながら結莉は、ソファにドカッと座り、テレビのスイッチを入れた。

 テレビの中では、夕方のニュース番組の芸能コーナーが映っている。


「あっ、このマンションだ! ちょっと修平くん、窓から手でも振ってみれば? でも二十五階だから、下からは見えないか」 

 結莉が楽しそうに言うが、マスコミさんたちに手を振るのは、勘ちゃんが泣くので、却下だ。


「俺、明日会見なんだ…」

「そうなの? お疲れちゃんだねぇ」

 少し悲しげに言ってみたのに、結莉はテレビから目も話さず言った。

 一体誰のためだと思っているんだろう…この人は。

「あれっ? そういえば、荷物は?」結莉の荷物が、見当たらないので訊いた。

「なんの?」

「部屋…戻ってくるんでしょ?」結莉の隣に腰を掛け訊いた。

「どうして?」

「…どうして…っって」俺が訊いてるのに…。

「ホテル戻るよ」テレビに目を向けたまま言われた。

「…なんでーーー!?」



「ねぇ、いつ香港戻るの?」

「来週の水曜日」

 そう答えた結莉の目の前に手を出しながら、俺は言った。

「ん! 頂だい」

「何を? 現金? 著作権?」 

 結莉の冗談は、本当におもしろくない…

「香港の連絡先!」さらに手を出し、要求した。

「…なんで?」

「ええー、な、何でって…」この期に及んでそんなこと言うの!?

「どうして?」

「ええー、どうしてって…」 

 そ、そんなぁ。


「俺…」と、言いかけたところで、携帯が鳴った。

 …っんだよ!!

 もう離さないから結莉のこと!って言って抱きしめようと思っていたのに…

 ステキなシチュエーションが台無しだ!


 邪魔な電話の主は、勘ちゃんだった。

 マネージャーなら、もっと気を利かせてほしい…。

 自宅に戻って来たので、「すぐに下に下りて来い」ということだ。



 結莉と俺は、勘ちゃん宅に下りて行った。


「あっ! 結莉ちゃ~ん」 

 リビングに入るなり、チビスケが結莉の所に飛んできて、抱きついてホッペに、チュッチュッとキスをした。

 テメェー! このやろ~!

 俺は、結莉からチビスケを引き離し、暴れるチビスケを抱えて勘ちゃんの座っているソファまで行った。

「なにすんだよぉ! 修ちゃん!」 

 チビスケは抵抗したが、チビの力では、俺には敵うまい。

「俺の女に手を出すんじゃねぇ!!」

 俺は、三歳児相手にすごんだ。

「んだよっ! 結莉ちゃんは、僕のお嫁さんになるんだよぉぉ」 

 チ、チビのくせに生意気なことを言いやがる。拓海のようなヤツだ。

 俺は、チビスケのケツを、ビシビシと叩いた。


「おいおい、修平~、子供相手に何やってんだぁ?」

 勘ちゃんは、苦笑いで呆れた声を出した。

「勘ちゃんのガキ、教育しなおした方がいいんじゃね?」

「おまえに言われたくはない! そんなことより、明日の会見の打ち合わせだ!」


 チビスケを離すと、ヤツはすぐさまダイニングに結莉を追いかけて行く。

 女のケツばっか追い掛け回しやがって!



 勘ちゃんが事務所側と相談した結果、会見には低姿勢でちゃんと反省の色を見せつつ、大人しく俯き加減で臨めと…

 で、形的に一ヶ月ほど芸能活動の自粛をすることになった。


 拓海の事務所の会見で、本当は俺と拓海は仲がいいことを強調してくれていたので世間からの非難はほぼないようである。

 でも暴力を振るってしまったのは俺の方だから、そこらへんの反省はしろ、ということだ。

 俺は、勘ちゃんの話を「うんうん」と一応聞いていたが、「自粛」という言葉に、心の奥底でニンマリしていた。

 とても素晴らしいことを考えつていしまった俺である。



 その日は、勘ちゃん宅でご飯を食べ、結莉は、そそくさとホテルに戻って行ってしまった。

 結莉は次の日朝からレコーディングの仕事だそうだ。




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