(19)拓海の気持ち
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夜、十時過ぎ、自室ベッドの上で、寝転びながら雑誌を読んでいた拓海の携帯が、鳴った。
「結莉? どうしたの?」
「どうしたの? じゃないでしょ? 今日、修平くんに何を言ったの?」
結莉の声は少し怒っている。
「……アレンジの変更部分チェックしたよ」拓海は、結莉の問いに答えず、言った。
「どうして修平くんに嘘つくの? 拓海が私の家に泊まったとか合鍵持ってるとか…」
「へぇ、アイツ、結莉に話したんだぁ」
結莉に訊かれた拓海は、体を起し、小馬鹿にした言い方をした。
「…た・く・みぃ、また修平くんに変なこと言ったら、本当に怒るよ」結莉は、溜息まじりに言う。
「わかったってば!……結莉、修平のこと好きなんだ…」
「何言っちゃってんのよ。どうしてそうなるのかなぁ」
「じゃ、オレのことは?」拓海の声は、真直ぐだ。
「もちろん嫌いじゃないわよ。好きよ」結莉は素直に言った。
「ふ~ん」
「何!? その、ふ~ん、って! 人が好きって言ってあげてるのに!」
結莉は、電話の向こうで怒鳴っていた。
「ぎゃははは。おもしれー、結莉!」
「あんたね~。……もうプロデュース、降りようかな。爺ちゃんのお願いだから聞てあげたんだけど…別に私じゃなくてもいいでしょう?」
「うわー! 待って待って! 反省します! オレ、反省するから!」
結莉の冗談に、拓海は、本気であせった。
「ば~か。うそよ、ちゃんとプロデュースするわよ」
「っだよ! でも…、結莉は爺ちゃんのお願いだからFACEのプロデュースしたの?もし、爺ちゃんがいなかったら、オレとの仕事したくなかった?」
拓海の声は弱気だ。
「そんなことないよ。爺ちゃんのお願いだったけど、私はそんなことくらいで自分の仕事は決めない。ちゃんとFACEの音聞いて興味を持った。だから私の意思で、FACEとの仕事してる。これは本当よ」
その言葉に拓海は、ホッ、肩の力を抜いた。
結莉から今日のことを反省するように叱られ、少し、他愛の無い話をして、電話を切った。
「結莉……どうしてオレじゃダメなんだよ…」
拓海は、ベッドの上で天井を見ながら呟いた。