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(12)チャンス到来!

「た、だずげでぇぇぇ~」

 俺が、目を覚ますと、枕が顔に乗っていた。

 苦しいはずだ。


 あれ…? 自分の部屋。

 どうしたんだっけ? 俺。

 思い出せない。


 過去をさかのぼってみた。

 電話をしていた結莉の横に座って、結莉が電話を終えるのを待っていたんだっけ。

 そして、結莉と同じ物を頼んで飲んで…んーーーーっと。

 記憶をなくした。

 ぜんぜん結莉と話してないじゃん!!何やってんだよぉ、俺…

 ショックのあまり、もう一度、起こしていた体をベッドに沈めると、枕元に置かれたメモ書きが目に入った。

 ん~なになに?

 よく見えないがテキトーに読んでみた。

「起きたら電話しろ! 勘太郎」

 あー、めんどっちー、頭痛いし…


 とりあえず俺は、携帯を取り、勘ちゃんに電話をすると、勘ちゃんは電話に出たとたん、ものすごい大声で怒鳴った。

「うわ~頭にひびくよ~もっと静かにしゃべってよ~」

 俺の願いは聞き入れられず、勘ちゃんは、怒鳴りっぱなしだ。

 頭にガンガン響いてよくわからないから、ブチっと切って寝た。

が、すぐにコールが鳴る。

 出ないでそのまま切った。

が、また鳴る…エンドレスか。


 コールが続く携帯を放り投げたまま、風呂場に行き、少し熱めのシャワーを浴びて鼻歌まじりで出てきた…ら、勘ちゃんがソファに座っていた。

「は、早っ。来るの早っ!」


 俺に向けられる勘ちゃんの目は、メラメラと怒りの炎を発している。

「熱っ、その目の炎でスクランブルエッグでも作ってくれよ~俺、腹減ったぁ」

 俺の冗談にも勘ちゃんは何も言わず、今度は全身から炎を出していた。

 チキンの丸焼きできそう…。


 その後、正座をさせられ勘ちゃんからノンストップで怒られ、夕べの出来事を聞かされた。

 お、俺…結莉に付き添ってもらってたのぉ? そんなぁ~。

「嬉しすぎるぜぇぇぇ」 

 反省の色も何もない俺の言葉に、勘ちゃんは力を失くしたようで「おまえに何を言っても無駄なような気がしてきた…俺はマネージャー失格かもしれん…」

 勘ちゃんを落ち込ませてしまったようだ。


「とりあえず、今日はナベさんと小沢さんにお詫びしに行く!」

 勘ちゃんは、みんなにアポを取ってあるようで、これから行動に移すらしい。

 結莉は、今日は時間がとれず、山ちゃんは、休みの日のため、二人のところには明日お詫びに行くことになった。

 明日になれば結莉に会える~と、俺はルンルンだ。


 その日は、勘ちゃんと二人でデパチカで菓子箱を買い、最初はナベさんの事務所に行き、その後、LTV局にいる小沢さんに会い、頭を深く下げ謝った。

 ナベさんも小沢さんも、笑って許してくれた。

 ただ、「アイツは人間じゃないから、くれぐれもこの先、結莉のまねをしてテキーラのがぶ飲みはやめるように!」と、全く同じことを、二人から言われた。




***********



 結莉は、大谷家のダイニングテーブルで、鼻歌まじりで餃子を作り、大谷家の社長夫人はキッチンで料理を作っていた。

 六時過ぎに次男坊・拓海が、仕事の打ち合わせから帰ってきた。


「あっ、おっかえりぃ~」

「ただいま。すんげー疲れた…」

「なになにな~に、若いくせに、たかが打ち合わせだけで疲れてんじゃないわよ」

「だって、朝帰って来て、睡眠二時間で事務所行って、ずっと打ち合わせだぜ?」

 拓海は、だるそうに言い、結莉の隣に座った。


「飲めもしないのに調子こいて飲み歩いてるからでしょ? 未成年なんだから止めなさい」

「もうすぐ二十歳だよ。結莉だって昨日はパーティのあと、ナベさんや小沢っちと一緒だったんだろ?」

「あ~た、私は自分のお酒のペースを知っているからつぶれないの」

 結莉が説教を始めようとした時、テーブルの上の携帯が鳴った。

「拓海、それ耳に差して」

 手が塞がっている結莉は、拓海にイヤホーンを差すように、指示をする。

 結莉の髪、耳…、拓海は、結莉に触れることに少し顔が紅潮した。


「もすも~す。どした? よっちゃん」マネージャーの吉岡からだった。

 拓海は、結莉の横でダイニングテーブルの上に、ダラリと顔をつけ、結莉を見つめた。

「ん? 明日? 今日は、ここに泊まるけど、明日は昼前に帰るよ」

「うん、ん? 修平くんが?」

 修平と言う名を耳にし、伏せていた拓海が、眉を寄せ、顔をあげた。

「ふ~ん、別にいいのにね、気にしなくても。ん、わかった。はいはい、じゃあね!」


 電話を終えた結莉の耳から、イヤホーンを取りながら、拓海は訊いた。

「修平って…リフィールの? 昨日のパーティにも来てたね」

「ん? あぁ、修平くん、明日家に来るって」

「どうして!?」拓海が驚いたように訊いた。

「昨日さぁ、テキーラ飲ませたらぶっ倒れてさぁ。あははは、おもろかったぁ。 だってさ

私のまねしてロンググラスで一気しちゃって倒れた。おかげで私は、ナベや小沢に、大目玉だったんだけどね!」

 結莉は、餃子を包みながら、あはは、と一笑いした。

「昨日、一緒だったの…? 俺、聞いてないけど…」

「うん、ナベと小沢が誘ったらしくて。W行ったら来てた」

「で、なんで明日、修平が来んだよ、結莉の家に」拓海の顔がどんどんふくれっ面になっていく。

「なんか、お詫びに来ますってマネージャーさんから連絡が来たんだって。 それで、今日は、私いないから、明日にしてもらったって」

「お詫びって? 修平が勝手に飲んだんだろ? 結莉には関係ないじゃん」

「私が見張り番役で、修平くんが帰るまで見てたから、そのお詫びだって」

「なんだよ、それ! なんで結莉が修平の面倒見てたんだよ。俺も明日、結莉の家に行く。車で送ってってやるよ」

「…拓海く~ん、明日は何の日でしょうか? ん? PVの撮影でしたね。あんたは、お仕事ちゃんとやりなさいよ? 新人なんだから」

 脹れたまま拓海は、またテーブルに顔を、伏せた。



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