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(11)話せないまま




**********



「げっ! ちょっと! 修平くん!? マジ? やばい? ねぇ、山ちゃんヤバイ? これ」

 結莉と山崎は、急にカウンターに伏せて動かなくなった修平に、あせった。

 結莉は電話の相手に、「かけ直すから」と言い、電話を切った。

「修平さん? 修平さん?」 

 山崎はカウンターから出てきて、修平を揺すった。


 結莉は、VIPルームに戻り、小沢とナベを呼んだ。

「一人潰れた…」人差し指を立てた結莉に「誰がぁ!?」と、小沢が驚いた。

「修平くん…」結莉の言葉に「…テキーラか?」ナベが冷ややかに訊いた。

「そうで…すぅ…」

「おまえなぁ~、ったく」

 ナベと小沢は、部屋を出て、修平の元に行くと、カウンターで伏せている修平の顔を山崎が冷たいおしぼりを当てていた。

「ナベさん~、どうしましょう」山崎が心配そうに言った。

「まぁ、大丈夫だろうけど、とりあえずバックヤード入れとこか」

 ナベと小沢は、修平を担いで山崎に付いてスタッフルームに運び、ソファベッドを広げてもらい、そこに修平を寝かせた。

 その間に結莉は、勘太郎の所に行き、事情を説明しスタッフルームまで来てもらう事にした。


 勘太郎が、スタッフルームに入ると、ソファの上に修平は寝かせれていた。

「僕が悪いんです。修平さんに結莉さんと同じ物って言われて…作っちゃったから。サイダーででも割っとけばよかったんですが…本当にすみません」

 山崎は、勘太郎に頭を下げ謝った。

「いやいや、たぶん修平が無理矢理作らせたんでしょうから、気にしないでください。本当にこちらこそ申し訳ない」

 勘太郎は、恐縮しながら頭を下げた。


「山ちゃん、仕事戻っていいよ。後は、俺ら見とくから。ありがとね」

 ナベが言うと、山崎は仕事に戻っていった。


「結莉なぁ、なんで止めなかった…? 誰もおまえについて行けるヤツはいないんだぞ!」小沢の喝が入る。

「はい。反省しています。勘太郎さん、すみませんでした」

 結莉は、直角に体を曲げて謝った。

「そんなに謝らないでください。山崎さんにも言いましたが、本当に修平が勝手に飲んでしまったのは目に見えております…」

 勘太郎は、修平のしあわせそうな寝顔を見てから、ガクンと首を下げた。


「でもすげーな、修平くん。これも愛か? ははは!」

 小沢は、笑いながら濡れたタオルを、修平の額に乗せた。

「何? 愛って!」結莉が、不思議そうに訊いた。

「あっ、いやいや~、あの~」

「尊敬してるんだって、結莉のこと。いい音楽家だから!」焦る勘太郎に、ナベが助け舟を出した。

「あら~ん、そんな尊敬だなんてぇ~ん」結莉は、手で頬を包みクネクネとした。

「調子にのるな!」小沢が、結莉の頭に拳骨を落とした。



「じゃ、ちょっと寝かしとこっか!」

「結莉、おまえ見張り番な!」小沢が言った。


「あっ、ボクが見ますので、結莉さんは部屋に戻ってください。みなさんも待っていらっしゃるだろうし」勘太郎がそう言ったが、

「勘太郎さん、いいっていいって。結莉に責任があるんだから。反省の意味を込めて、ここで修平くんの見張り番でも、してもらいましょう」

 ナベが勘太郎の肩を叩いて、外へ誘導した。


「いや、でも…マネージャーとしてですね…」 

 勘太郎の声を無視し、小沢も後ろから勘太郎を押しながら「おい、しっかり見とけよ!」と、結莉に言い残して出て行った。


「見とけよ…って、見ててどうすんのよ。寝てるし…ここじゃタバコも吸えないじゃん」結莉は、ふくれっ面でブチブチと一人、文句を、言った。


 ぬるくなったタオルを換えるために、修平のおでこのタオルを取った。

「ん~、なかなかいい顔してんだぁ~修平くんって!

 当たり前か、人気バンドのボーカルだもんね…顔も商売道具の一つか」

 結莉は、修平にデコピンをした。



*********



俺は、夢を見ていた。

リゾート地の高級ホテルのプールでスイスイと泳いでる結莉を見つけ、勢いよくそのプールに飛び込んだ…プールの水は水ではなくテキーラだった。

俺は溺れ、プールの底に頭をブツけた痛さと、テキーラの強さにもがいていた。





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