第077話目―阻止①―
本日二回目の更新です!
今僕がするべき事は、なんだろうか?
これを見てみぬフリをする事は、容易い。けれども、見知った仲の半人半魔のあの子たちを、見捨てる事が出来るのか?
その問に対して僕は、否、としか答える事が出来ない。
これから僕は、父親になるのだ。子どもが大きくなった時に、育てて行く時に、胸を張れる男でありたいのだ。
こんなお父さんは嫌だ、と思われるような人物には、なりたくない。
子どもたちが、自慢の出来るような、そんな父でありたい。
僕自身が、父親の件では苦労をしたからこそ、似たような想いだけは絶対にさせたくは無いと思えた。
つまり、目の前の問題を解決する行動を取る事は、もう決まっているのだ。
とはいえ……何の考えも無しに、今、飛び出す事は得策ではない。だから、順を追って一つずつやって行こうと思う。
まず、ヴァルザについては後回しだ。
最初にやるべき事は、半人半魔の子たちを、脅威から救う事である。
憲兵に頼る、という手は取れない。
その方法を取るという事は、あの子たちの存在が、公になる事を意味する。そうなれば必ず捕まり、続けられていた研究も暴かれる事になる。
それでは駄目だ。
あの子たちは、ただ、ひっそり生きているだけなんだ。
この国の地下で、ただ、生きていたいだけなのだ。
僕はその気持ちを尊重したいし、彼らが合法的に捕まるような所も、苦しむような所も見たくはない。
僕は唇を強く結ぶと、ヴァルザたちの様子を窺う。
すると、話が終わったのか、ヴァルザが踵を返し、ゴロツキたちも散会し始める。僕は、物陰に隠れて、一旦は見つからないようにやり過ごした。
「……」
気配が薄まって来た頃合いを見計らって、僕は動き出した。追ったのは、ヴァルザから渡された小袋を持っている男だ。
仲間の姿が見えず、単独行動のようだけれど、それは、大勢でいると周りの視線があるからだろう。
あの子たちのいる地下への入り口は幾つかある。
けれど、そのどれを選んだとしても、ヴァルザ達がいた場所から向かうには、必ず一度は大通りを横切らないといけない。
大人数で横切れば、さすがに、目につく。
それを嫌ったようだ。
まぁ、内密な話でもあったようだし、本来であれば、一人でも問題は無い。僕見たいなのに、盗み聞ぎされていなければ、だけどね。
ともあれ、まず、あいつをどうにかしよう。
でも、槍はホテルの中だし、どうしたら良いかな……。
色々と方法を考えながら、後を追っていく。
すると、ふと、僕の服が日の光を反射した。
よく見ると、銀の欠片がひっついていた。
どうやら、次力の新しい使い方を試した時に、槍の形に戻しきれなかった一部が、跳ねて服にくっついていたようだ。
「これ……使えるかも」
僕は、その小さな銀を引っぺがすと、次力を通した。制御はまだ完璧には行かないから、思い切り最小限にして通した。
小さな銀の欠片が、肉眼では見えないほどに縮まる。
僕の目にも見えないけれど、球体……になるようにしたから、そうなっていると思う。
「――いけ」
僕は見えない銀球を撃った。
狙いは、一人で歩く、あの小袋を抱えた男の脚である。
一瞬の間を置いて、がくり、と男が地に膝をついた。
命中してくれたようだ。
僕にも見えないほどの小ささだから、当たったかどうか少し心配だったけど……なんとかなって良かった。
「な、なんだ脚が……」
走る。
僕は走って、そのまま、男が放り投げた小袋を手にして、走り去る。
「――なっ⁉ だ、誰だお前っ⁉ か、返っ……ぐぐっ」
僕に気づいた男が、驚きながらも、小袋を「返せ」と叫ぶ。追いかけて来る様子は無い。どうやら、銀球はかなり痛い所を貫いたようだ。
立つのがやっと、と言った所である。
そのうち、男の姿はすっかり見えなくなった。
――まずは、これで一つ解決だ。次は、ヴァルザ本人だ。




