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第074話目―エキドナ、喋ります―

※※※※


「なんじゃ一体……」


 中に入ると、白衣の老人――先生が、すぐさまに、僕とセルマに視線を移した。

 だが、隣にいた半人半魔の子どもたちに気づくと、無表情のまま後頭部を引っ掻く。

 僕たちが敵や侵入者の類ではない、と察したようだ。


「新しい友達か?」

「友達っていうか、なんていうか。先生……あのさ、へびを見なかった? この人たち探しているらしいんだよ。わるい人たちじゃないから、もし見かけてたら……」

「蛇……?」


 はて、と先生は首を捻り――ぽん、と手を叩く。


「蛇の魔物は見たのう。この部屋に居たんじゃよ。なぜ居たのかは分からんが……」

「それだ! 先生多分それだよ! どこに行ったか分かる?」


 先生の視線が、大きなガラス容器を向いた。

 その中にいたのは小さな女の子である。

 肌の所々に蛇の鱗のようなものがあり、それは、エキドナの鱗に凄く良く似ている――というか、そのものなのだけど……。


 ……まさか。


 嫌な予感がした。

 そして、それは当たってしまう。


「助けなければいけない子がおった。手遅れかも知れん子だったが、僅かな希望に縋りたくてな。そんな時に、なぜかは知らんがこの部屋に丁度良く魔物がおったから――使ったが?」


 先生の口から発せられたのは、衝撃の事実だった。


「そんな……」

「なんということでありますか……」


 僕だけではなく、セルマも驚いている。

 当たり前だ。

 冷静でいろ、という方が無理がある。

 半人半魔になる、ということは、エキドナがエキドナでは無くなってしまうかも知れないのだ。

 ここまで案内してくれた半人半魔の子たちも、目を大きく見開いて、「どうしよう」と言った面持ちになった。


 僕らの様子に戸惑いながらも、先生は、ゆっくりとガラス管に近づいて中の水を抜き始める。


「……ともかく、この子が助かっていれば良いのだが」


 完全に水が抜けると、ガラス管の中の女の子が、目を覚ました。

 ぱちり、と瞬きを繰り返す。


「どうじゃ。自分の名を言えるか?」

「えきどなだよ?」

「なんと……。この子の名はそうではない。となると、魔物の方が勝ってしまったのか。駄目であったか。残念だが……元から助かる見込みは少ない子じゃった。今の自分に出来るだけのことはやった。仕方あるまい」


 エキドナの意識が消えたということはなく、無事なようだ。

 いや、無事と言って良いのかは分からないけれど。

 半人半魔になってしまったワケだし……と、僕が混乱しているとエキドナが駆け寄って抱き着いてきた。


「――ぱぱ」


 え、えぇ……。

 僕どうしたらいいんだろうか。

 悩んだ末に意見を求めるべくセルマを見る。

 が、セルマはすぐに顔を逸らした。


「うん? なんだお主ら、この魔物と何か関係があるのか?」

「……先生が勝手に使っちゃった蛇の、飼い主さんかな」

「な、なんと……」


 エキドナは、ひとしきり僕をぎゅうっと抱きしめると、次にセルマにも抱き着いた。


「ど、どうしたでありますか」

「いつも遊んでくれて、ありがとね!」

「御主様……これはどうしたら」


 とりあえず、セルマにやられた事と同じ事を僕はした。顔を逸らした。


※※※※


 僕は先生に事情の説明をした。

 そのうえで、エキドナを元に戻せないかと聞いて見たのだけれど……。


「無理じゃな。元には戻せない」


 どうやら、一度半人半魔になると分離する事は出来ないそうだ。

 ……困ったね。

 このままエキドナを連れて帰るとなると、アティに説明しないといけなくなる。

 でも、どう説明すれば良いのか。


「どうしたの? えきどな、だめなの?」

「駄目じゃないけど……」

「せるまは?」

「別に構わないでありますが……。ただ、調子が狂うでありますね……」

「にしても、アティになんて言おう」

「御主様に一任するであります」


 逃げたな……。


※※※※


 元に戻す事は出来ないけれど、このままずっと地下に居るわけにも行かない。半人半魔になったエキドナを連れて帰ることにした。

 そうする以外に出来る事が何もないからである。


「俺たちのことは、ひみつにしておいてくれよな」

「分かったよ」


 そんな約束を交わしつつ、半人半魔の子たちに案内をして貰い最短ルートで外へと出る。

 そして宿へと戻り――


「……」


 ――翌朝、言葉を失い目を丸くするアティを見る事になった。

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作者ついったー

こちら↓書籍版の一巻表紙になります。
カドカワBOOKSさまより2019年12月10日発売中です。色々と修正したり加筆も行っております。

書籍 一巻表紙
― 新着の感想 ―
[良い点] ほっこり担当が誕生しましたね。 これでイチャイチャ担当のアティとダブルで美味しい展開が期待できます(笑) あと一人、昼メロ担当がいますがそれはスルーしときましょう(笑) [気になる点] 気…
[良い点] 2巻おめでとうございます! [一言] そうか〜、幼女の方だったか〜
[一言] 再開、待ってました! 2巻も楽しみです‼
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