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第021話目―港街―

※※※※



 ヴァレンとセシルの二人組とは、

 行き先が同じ西大陸である為、

 つまりは港に向かうのも同じであるから、

 ずっと顔を突き合わせていた。


 彼らとは時折世間話を挟み、

 その折に、僕らも西大陸に向かっているのだと言う事も話した。

 ただ、その理由については――伏せた。

 特に言う事でも無いし、僕らも彼らの理由を尋ねる事はしない。

 雰囲気で向こうも察してくれたのか、その話題が持ち上がる事は決して無かった。


 特に問題のない道中と言える。



 風がくれば、肌がざらつくような空気が纏わり付く。

 凪がくれば、潮の香りが鼻の奥をくすぐる。

 馬車の小枠窓から、行く先を眺めれば――港街が見えてきた。




「腰が痛うてのう……」

「それウソだって分かってるから」

「バレとるか」


 ヴァレンとセシルの二人が、

 相変わらずの漫才のような会話を繰り返しながら、

 馬車から降りる。

 そして、僕らを見て言った。


「ではの、若人よ。道中楽しかったぞ」

「……じゃあね、お二人さん」


 行き先が同じだからと言って、向かう船まで同じとは限らない。

 僕らは乗る船がまだ決まっていないけれど、彼らは既に決まっているようだった。


「まあ、またすぐに会う可能性もあるがのう」

「それもそうね。――ねえ、私たちはバレスティー号って言う船に乗る予定なの。乗る船がまだ決まってないのなら、少し気にかけて見て」


 バレスティー号、か。


「ハロルド様、どうされますか? 同じ船に乗りますか……?」

「値段にも寄るけど、極端に高い船でもなければ乗っても良いかも知れないね。ともかく、色々と見てみよう」

「はい」


 ヴァレンとセシルの二人を見送った後、

 僕とアティも港町の人ごみへと溶け込んで行く。




※※※※




「西大陸行き? 幾つか船はあるが……、どういうのが良いかだな。あんたらは運が良い。今は色々と停泊している。速さ重視、値段重視、豪華客船みたいなのも全部揃ってる」


 停船所の入り口にある案内所で話を聞いてみると、

 今は時期が良いらしい。

 色々な船が停まっているとの事だった。


 しかし、こうも種類があると迷う。

 ひとまず、名前の分かっている船について聞いて見よう。


「バレスティー号と言う船は、どういう船か分かりますか?」

「普通の船だよ。特に面白みは無い」


 別に船に面白みは求めていない。


「お二人さんのようだから、バレスティー号だと船賃は280万ロブになるね。小さい寝室一部屋を貸切で、朝と夜の二食付き。船の中には、為替を扱ってる店や小売店も少ないけど入ってる。……航行速度は普通、到着までの日数はおよそ一ヶ月と言った所かな」

「なるほど……」

「ちなみに安さを求めるなら、特別こいつは運賃が低い船なんだが、一人分で20万ロブって言うのもある。ただ、数十人の大部屋だし、食事は一食しかつかないし、汚いし、変な病原菌持ったネズミ連れ込んでる時あるし、店なんか当然入ってないし、船に穴開いてたまに沈んでサルベージされてるし」


 安いのは危険過ぎるようだ。

 と言うか、変な病原菌持ってるネズミだけでもアウトなのに、たまに沈んでサルベージもされるって、それ人乗せて良い船なの……?


「ハロルド様、私が乗ってた奴隷船でもそこまで酷くは無かったですよ……? 五人一部屋でしたけど、食事は普通に二食出ましたし、ある程度は清潔な船でした」


 奴隷船以下の船……。


 安すぎる船に乗るつもりは無いものの、その内情の酷さに僕は表情を歪ませる。

 すると、案内所の人が大きく息を吐いた。


「……まあ、どの船も出港まであと一週間はある。気長に考えると良いよ。切符はここで取り扱ってるから、買いたくなったら来ると良い。ただ、部屋が埋まる可能性もあるから、乗るのが決まったら早めにね。……で、他に何か聞きたい事はある?」

「では、他の船について……」


 案内所の人はにこっと笑うと、僕の問いに色々と答えてくれた。


 豪華客船だと1000万は掛かるとか、

 速さ重視だと運賃はバレスティー号と同じくらいになるけど、

 食事が質素になったり、揺れが酷くて気分が悪くなりやすいとか。


 そうして色々と話を聞いて。

 僕とアティは一旦、一日二日くらい考える時間を置く事にした。



※※※※



 夕暮れ時。

 鮮やかな濃い蜜柑色に変わった太陽が、

 海の向こうに沈んでいく。


 町並みには明かりが点って、

 祭りでもないのに屋台のような店が立ち並んでいた。

 魚介類の素焼きとか、

 即席の砂糖菓子のようなものも売っている。


 港町は随分と活気が溢れている。

 王都の方が人は間違いなく多いハズなんだけれど、

 ここまでの活気は無い。


 アティが言うには、

 停泊船が多い栄えている港町は、

 実際の人口以上に活気があるのが普通、らしい。


 まあともかく。

 折角出店が沢山あるのだからと、

 僕らは食べ歩きをしながら、泊まれる宿を探す事にした。

あとがき。


この場を借りて、読者の皆様には改めて御礼を言いたいと思います。

一週間近く日間一位のままで居る事が出来て、週間一位にもなりました。

これも読者の皆様方のお陰です。

この後書きを書いてる現在はもう日間一位ではありませんが、一位であった期間は大変嬉しく喜ばしかったです。

本当に、本当にありがとうございました。


∩(・∀・)∩ ワッショイ∩(・∀・)∩ ワッショイ

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作者ついったー

こちら↓書籍版の一巻表紙になります。
カドカワBOOKSさまより2019年12月10日発売中です。色々と修正したり加筆も行っております。

書籍 一巻表紙
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