第108話目―四人は欲しい―
漫画版が無事に発売されておりました。アティがとっても可愛いです。
「まず龍の秘宝が何を与えるものなのか覚えているかな?」
「はい。確か”祝福を与える”と言っていましたよね?」
「その通り。それで使い方だけど、もったいぶっておいてなんだけど実は簡単なんだよね。玉を握って祝福を与えたい人物を思い浮かべるだけ」
容易な使い方で拍子抜けであったけれど、ともかく、僕は龍の秘宝を握り祝福を与えたい人物を思い浮かべた。
宝物として取って置こう等とは思わなかった。
龍の秘宝を見てマルタのように興味に持つ者が現れるかも知れず、そうなった時に盗られたりしては敵わないからだ。
すぐに使ってしまえば誰にも盗られない。
龍の秘宝は淡い暖かな色の光となり霧消した。
「……もう使ったんだ?」
「ですね」
「誰に祝福を与えたんだい?」
「……アティとこれから産まれて来る子どもに」
僕にとって大事な人は誰かと言われれば、それはアティとこれから産まれて来る子どもだった。
祝福を与える相手は他にいない。
「使えるのは一回でも対象人数の制限は無いから二人同時も出来るけど……まぁ何にしろ、優しさがある使い方だね」
「優しいというよりも、愛する人の幸せを願うことで頭がいっぱいで、それ以外のことは考えられなかっただけですよ。僕は器用ではないので」
肩を竦めて僕がそう答えると、パスカルは嬉しそうに笑っていた。
「そうかい。でも、人間なんて不器用なくらいが丁度良いと思うけどね。完璧に成れてしまったら、きっと、世界は色あせて見えるようになる気がするよ」
パスカルの言葉はとても抽象的だったけれど、なんとなく僕には理解出来た。
苦笑しながら歩いて玄関に向かう。
すると、大きくなったお腹を撫でながら僕の帰りを待っていたアティがいた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
「今日は少し遅かったですね」
「色々あって……」
僕が荷物を置くと、パスカルがこそっと床に降りてどこかへ行った。エキドナに見つからないところにでも隠れたに違い無い。
「明日からは早く帰って来るよ」
「そうして貰えると嬉しいです。早く帰って来てくれないと、私も凄く寂しいですから……」
「分かった」
口を尖らせるアティのおでこにキスをして、それから肩を掴んで転ばないように体を支えてあげた。
身重な体に万が一があったらいけないのだ。
「ところでハロルド様、最近夜のお相手が出来ずに本当にすみません。この子が産まれて少し落ち着けば大丈夫ですから」
「前にも似たようなことを言われた気がするけど、別に気にしなくても大丈夫だよ」
「いえ、私がもっとハロルドさまに愛されたくて、それにこの子も兄弟姉妹がいた方が喜ぶと思いますし」
な、なるほど。
どうやらアティは子沢山を望んでいるらしい。
でも、ダークエルフと人間では子どもが出来にくいので、またすぐに次の子が出来るとは限らない。
しかし、それが望みなら叶えてあげたいと思った。
「……何人出来るかな」
「それは分かりませんけれど、希望としては四人は欲しいです。……人との間に四人も子どもが出来たダークエルフは記録にも残っておらず存在しないと思われますが、それでもハロルド様と私なら出来ると思います」
どうやら、前例が無い数の子どもをアティは求めているようだ。
それは不思議と実現する気がした。
力尽きるまで何度でも何回でも愛していれば、出来る気がしたのだ。
問題があるとすれば、僕の体力がどこまで持つかである。
今のうちに体力作りしておこうかなとか僕はそんなことを考えつつ、アティがすやすやと眠るまで頭を撫でたりお腹をさすってあげた。
まもなくして寝息が聞こえて来た。
安心しきった穏やかなアティの寝顔が可愛かったので、僕はそのおでこにもう一度唇を優しく押し当てた。




