夏
真夏のうだるような暑いなか、僕はクーラーも扇風機もつけずに5.5畳の狭い部屋でただ窓から吹き抜ける風に煽られている。
今年は実家に帰れるだろうか。
去年は帰れなかったから、今年は帰らなければ。
家に帰れば父さんが炎天下で車を洗っていて、僕に
「おかえり」
と声をかけて、
「今日は桃買ってきたから一緒に食べような」
なんて言って、玄関から家に入って
「ただいま」
って呼びかけるように言えば、母さんと弟が居間から出てきて
「おかえり、お父さんが桃買ってきたから、みんなで食べるわよ」
なんて言うから、僕は
「さっき、父さんから聞いたよ」
って少し笑いながら言うんだ。
ああ、懐かしい。
きっとみんな、僕がいなくなって寂しがっているだろう。
異常気象が続くこの夏は、僕が死んで一年目の夏。
さあ、早く帰ろう。
僕を待つ家族のもとへ。