第一章 6
いやちょっとまて…俺は寝ぼけているのか?
おかしいぞ。
「なんで俺が戦ってるんだぁ!?」
言ってみたがが答えは一人しかいない。
絶対に咲桜だ。
でもどういうことだ?
なんでわざわざ俺になってまで引きつけてるんだ…?
せっかくの決心が無駄になったと感じている俺とそれでも安堵していまっている俺がいて…そんなことを考えている途中ゴッと強い力で叩き落とされたような音が聞こえてきた。
耳鳴りが聞こえる。
言ってはいけない気がしてならない言葉を出しそうになる。
だめだ。それを言ったら認めてしまう。
だめだ…言っては…
「さ…咲桜…?」
俺は堪えられずその言葉を発してしまった。
その言葉は耳鳴りなんて関係ないほどはっきりと聞こえた。
その瞬間最悪なイメージが浮かんでしまう。
どうか違ってくれ。お願いだから。
そんな自分の感情とは裏腹に悪い予感しかしなかった。
俺は咲桜が飛ばされた場所へと我を忘れて走った。
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「ここか!おい!…ってやっぱ咲桜かよっ!」
俺は大きなくぼみの中にいる血だらけの咲桜を見た瞬間駆け寄り、抱き上げた。
「えへへ…やられちゃったよ。ごめんね?レイ。」
何がごめんだよ。
お前が悪いわけでもないのに、それなのになんで笑えるんだ。
というか、何で目の前で好きな子が死にかけにならなきゃいけないんだ?
俺は自分の行き場のない感情にどうすればいいかわからなかった。
「…レイ。そんなに泣かないでよ。男の子でしょ?」
咲桜が俺の頬を流れる涙を拭いたあと頭を撫でてくる。
しょうがないじゃないか。こんなの耐えれるわけ無いだろう。
「な、なんで…お前は、笑えるんだよ。意味、わかんねぇ。」
俺の質問に対し咲桜は少し悩むようにうーんと唸ってから
「好きな人、守れたからまぁいっかなぁって。一応これでも地面に当たる寸前に死なないように頑張ったんだよ?」
なんて言いやがる。それもいまだに笑顔で。
なんで今頃言うんだよ。俺もだよ。すきだよ。助けたいよ。いろんな言葉が頭をよぎったが言葉を発するする気力が出てこない。あまりに非現実的すぎて。
咲桜はさらに伏し目がちにいう
「レイ泣かないで?あなたが生きていられれば私はいいの。それで満足なんだ。」
「なんでそう、いうことを、言うんだよ…」
咲桜は少し困ったように苦笑いをしながら話を変えた
「ふふふ。そだ怪物消えた?」
そういえば…いつの間にかいなくなっている。
「確かに、いない、けど…見ればわかる…だろ?」
「えへへ…もうあんまり見えなくなってきたし…体もなんだかポカポカしてきた。」
すると何故か咲桜の体が光の粒子に変わっていくようになった。
「な!?なんでお前光になってんだよ!」
「んー…わかんない!そっか。消えちゃうのかぁ。」
なんでそんなに物分り良さそうにいられるんだよ!
「…なよっ。消えんなよっ!なんで消えるんだよ!俺も好きなのに!やっと…やっと咲桜の気持ちを知れたのに…!」
あふれる涙が止まらない。もはや涙なんて気にならない。頭の中では罪悪感とかあるわけがない咲桜を助ける方法を考えることでいっぱいだった。
「しょうがないよレイ。しょうがないじゃん。こうなっちゃったんだから。」
咲桜はそう言いながら俺の頬に手を添えてきた。
自然と咲桜の方を見ると今まで流していなかった涙が一滴、一滴と増えていき大洪水のようになっていく。きっと俺もおんなじようになっている。
「…しょうがないけど、やだよ。私レイと離れるなんて。死んじゃうなんて、やだよぉ!」
喚くように、叫ぶように。
咲桜は大きな声で泣き続けた。
俺も更に涙が出てきた。けどできるだけ声は出さないように頑張った。
少しずつ光が空に飛んでいく。それと同時に咲桜も薄くなっていく。
何時間泣き続けただろうか。お互いある程度落ち着いて来る頃には、咲桜は抱き上げているはずなのに支えている俺の足が見えるほど薄くなっていた。
「ねぇレイ。顔近づけて?」
咲桜は突然俺にそんなことを言っていた。
俺は言われたとおり近づけると咲桜の柔らかい唇が自分の唇とぴったりと合わさっていた。
最初はかなり驚いたがその直後になぜか体に不思議と力が溢れてくる感覚が襲ってきた。
「ふぅ、なんとか成功みたいだね。あー!幸せだった。悔いはもちろんあるけど、十分満足。」
それじゃまるで最後みたいじゃないか。やめてくれよ。まだ、まだそばにいてくれないと俺は…
「レイありがとね。大好きだよ。…いつか、また会おうね…!」
「さ…咲桜ぁぁぁぁぁ!」
その瞬間俺の腕の中にあったはずの咲桜の体は光と共に消えていなくなっていた。
コトッ
不思議なものを残して。
あと少しで一章を終えれそう。
次がすんごく短いかもです。