第一章 4
なんだこの音と思った瞬間強い風が吹いてきたと同時にコケてしまった。
風圧おかしくね?とおもいながら後ろを振り返ってみるとそこには…
「な、なんだこりゃ…」
歩道から車道まで横一文字。もともとあったアスファルトは切り傷のようにえぐられてこのままじゃ車は通れないレベルだった。
一体何があってこうなったんだ?
って言ってと明らかにあそこにいるやつのせいだよな…
「ねぇ…レイ大丈夫?立てる?」
「あ、あぁ。なんとか。」
「それなら良かったよ…」
「なぁ、咲桜…あそこにいるやつって?」
咲桜の安堵した表情を横目に見ながら指を指した方向にいるのは、俺が何人いればあの高さになるかわからない馬鹿でかい人型の化物だった。
「え!?レイ見えるの!?」
「な、なんだよ!?あれか!?見えちゃ悪い系のやつか!?」
「いや、そういうのじゃないけど…ひとまず、逃げるよ!」
は?どうやって、と言おうとしたときには咲桜が俺の制服の襟を強引に掴んで人間ではありえない、自転車よりも、なんならバイクなんかより早いんじゃないかなって速度で走り始めた。
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「やっぱり追いかけてきてる…てかなんでこんなことに?レイにも見えてるし…」
「…だ、ずげでぇぇぇ」
聞いたことのないうめき声に気づいて止まってみるとレイが顔面真っ青になりながら死にかけていた。
急いで掴んだところが襟元だったみたい。
「あっごめんレイ!考え事してて気付かなかったよ…」
「ごほっごほっ、お、お前、俺を殺す気だったろ…ごほっ」
「違うの!あいつがなんで追いかけてるのかわかんなくて悩んでたら忘れてて」
「どっちにしても俺死ぬやないかっ!」
「えっと…ナイスツッコミ?」
「あぁありがとよっ!」
ってこんなことしてる場合じゃない。
ここは私がひきつけながらレイを逃すしか…
「そういや咲桜、さっきのあれはどういうことなんだ?あの怪物もお前のさっきの足の速さとか…」
「…あのね?」
怪物も離れていたので私は簡単にレイに説明をした。
ホントは悪いんだけど見えてしまったものは隠しようもないし。
それにレイにはわかってほしかったから…
「なるほどな。道理でたまに部屋にいなかったりしたわけだ。」
「そういうこと、てか部屋にいるかどうか確認してたわけ?」
「えっあっ、ごほんっ…とりあえずあいつをどーすんだよ。」
怪物の方向を見てみると離れたと思っていた距離はそこまでなく、また逃げなきゃいけない。
「はっきり言って策はないよ。あっちは私たちに用があるみたいだし。」
「じゃあ戦うしかないのか?」
「そういうことになるかな。とりあえずレイ。あなたは逃げて?私はあの化物を引きつけながらなんとかするから」
これしか私には案がなかった。
私が囮になればきっとどうにかなる。
「そんなのできるわけ…」
「ほらもう来ちゃう。もう行ってこいっ!」
私は全力でレイを蹴飛ばして、怪物の手がぎりぎり届くくらいの距離を保ちながら逃げ始めた。
見てくれてる人がいるといいなぁ…。