第一章 2
住み慣れた住宅街を抜けこの街の大通りを表示されたルートに従いながら進んでいく。
その間交差点を通るたび何度見ても慣れないけど、止まったままの車や人を見るとなんとも言えない感覚がやって来てしょうがない。
なんかよくわからないけど異世界の犯罪者トラベラーがこっちにやってくると時間が止まる仕組みになっているらしい。
初めて聞いたときはそんなのどうやってやるんだろうって思ったなぁ…。
そして大通りを外れ見慣れない住宅街への道に入ってからくねくねと何回か曲がったとき少し広めの空き地が見えるとそこに緑色のドラゴンがいた。
ほんとこれもそのたびに思うんだけど…あまりにも現実とかけ離れた存在がこの人間界にいるのを見ると少し面白く感じてしまうんだよね…。
そんなこと考えてたってしょうがないけど…さてと。
「あなたが連絡にあった犯罪者さんかな…?」
「ん?なんだ?お前。ちなみに私は低能で野蛮な犯罪者とは違うぞ!私はドラゴン族の…」
こういうやつの建前はながいからなぁ…
私は話を完璧に無視して両手に雷の魔力を集め始める。
私がこの仕事にスカウトされた理由はある能力のせいなんだけど、それが魔法を使えるって言う能力。
鍛錬すれば最終的にはすべての魔法が使えるってあの人が言ってたな。
今のところ一番得意な魔法は雷と身体能力上昇、日常でも使える瞬間移動とかそういう魔法。
ドラゴンの方は未だに自分の凄さアピールをしていたのでこれはチャンスと集まった魔力を片手だけ細長い棒の形に変えて数本作り足の方に投げる。
「だからお前みたいな小むすぎゃぁっ!?」
「よっし的中♪」
投げた雷の棒は足と地面を固定するようにしっかりと深々と突き刺さっていた。
これならすぐ終わりかな?
「お前…いきなりは卑怯だぞ!」
「何が卑怯よ。戦いに卑怯なんてあるもんですか。勝てばいいの勝てば♪」
「おのれぇ…」
「まっそういうことで…おやすみ♪」
「え?」
私はもう片方に溜めていた先ほどとは違う魔力の量の雷の玉を思いっきり顔面に投げつけた。
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「こちら矢吹咲桜です。目標の確保完了しました。」
報告したと同時に気絶していたドラゴンが不思議な空間に取り込まれていった。
私が倒したり説得した相手の手に手錠をかけると事前に組み込まれている空間移送術式?ってやつが作動してくれる。
そのおかげでわざわざ送り届ける必要がなくて楽なんだよね。
正直物語とかによくある倒したらみんながいる基地へ…みたいな流れを少しは思い描いていたけど実際はあんまりない。
仲がいい人と集まることはあれど私は手錠がなくなりかけてたり、その基地から収集がない限り行ったりすることはなかった。
「では私はこれで…ってえ?これから一週間は休みですか?」
基本この仕事に休みなんて定義はないと思っていた。
だって連絡は急だしっ!
人の都合無視だしっ!
「え?神クラスの化物?なんでそんなやつがこの世界に?…んーよくわからないけどいろんな世界を転々としていて今度はここに来ると…?なるほど、了解です。じゃあ失礼します。」
ピッ
「うー…おわったぁ。とりあえずこの一週間はレイと帰れるのね。よっし!この一週間はがんばるぞー!」
話の内容よくわからなかったけど、とりあえずそれだけはわかったので少し元気が出た。
そしてこの一週間の間にまだできてないあれも達成しなきゃ…
「早く明日にならないかなぁ」
私はゆっくりと明日からの作戦を考えながら家に帰った。
こんなの見てくれる人いるのかなぁとか思い出した今日この頃。
でも見てくれている人のために…てか見てもらうためにも頑張ります。