Episode.0 「追憶の欠片」
あけましておめでとうございます。
初めまして。上手くはないですか、なるべく伝わるように書いていきたいと思いますので、暖かい目で見て頂けると幸いです_(._.)_
後で、これとは別にもう一作品。異能力バトル物を執筆させて頂きます。
炎がゆらめく。
赤い灯りに照らされ、向かい合う二人。一人は少年。一人は中年の男。その場に屈む少年の腕の中には少女の姿があった。
静寂に包まれた世界、それは二人の間だけ。辺りは起爆の影響で、火柱が舞い上がる。とても静かなどとは言えない空間。
それでも二人は視線を外さなかった。お互いに睨み合う。
いや、一方的に少年が――という方が正しいか。中年の男は眉一つ動かさない。寧ろ、深い彫りの顔には厳格な表情が窺える。目の前に佇む男の瞳は、ただ静かに少年を見下ろしていた。
少年は少女の体を強く抱き寄せ、口を開く。そして沈黙の時を破った。
「あんたには感謝しているさ。でも、これが俺の出した『答え』なんだよ、親父」
俺の示した「答え」は、拾ってくれた、育ててくれた、教えてくれた、その恩を仇で返すことになってしまうだろう。
けど、自分で考え、自分で動き、今がある。後悔はない。
少年に“親父”と呼ばれた中年の男は「答え」という言葉を聞いて、一瞬表情が緩んだようにも見えた。懐かしの記憶を思い返したような、望んでいた光景を見ることができたというような微笑。
夢が叶ったのだ。こんな状況になって、やっと、やっと叶った。これで全てが終わってもいい。嬉しさ、悲しさ。これで満足だ。いや、でも何かが足りない。
その笑みの受け取る側としてはどれが「答え」なのかは分からない。知るのは“親父”のみ。
「なら、好きにしろ。お前の出した答えに文句は言わない」
遂に重い口が開く。もうそこに、少年のよく見知った顔は無い。
でも、微かに残る記憶の片隅にその顔はあった。もう思い出せないけど確かにあった。子供に手を差し伸べる大人。光で遮られ、その顔は見えない。
それが誰だったのか。今はもう関係ないか。どうして今になって思い出した?
少年は手に持つ機械の蓋を開け、起動ボタンに指を掛ける。
「……さよなら、そしてありがとう。父さん」
少年の頬を一筋の光粒が伝っていく。
指に力が入り、押し込む。ボタンは凹む。
初めて“親父”を「父さん」と呼んだ。これが最初で最後。
その言葉を最後に、全ては業炎に包まれて消えていくのだった――。
駄文失礼します。
読んで頂き、ありがとうございます。