夏は海!
「海だー、妹よ!」
「そうだな」
「元気がないぞー、妹よ!」
「恥ずかしいから大声出さないで」
兄妹は今、海に来ています。広い砂浜には家族、カップル、友人達等、たくさんの人々で溢れている。
「兄貴、せっかく仕事の休みがとれたのにわざわざ海に来なくたって。家でゆっくりすれば良かったのに」
「久しぶりの祝日休み。なんかもったいないじゃん!それに海は癒されるからねー。夏といったら海!これ常識だから」
「どうせ、女性の水着目当てでしょ」
「え!?なぜ分かった?」
「はあー、目がさっきから女の子の方ばかり見てるからね。ばればれです」
「はい。すいませんでした」
「いや、別に謝らなくても。男だからしょうがないけどあまりジロジロ見たら通報されるかもよ」
「僕ってそんなに危ない人間に見える!」
「うん、ほとんど危ない人間です」
「妹!兄貴はショックだよー」
「うわー、寄るな寄るな!それが駄目なんだよ、このバカ兄貴!」
「ぐほぉ!妹パンチ…………効いたぜ…………」
「バカやってないで早く水着に着替えてくれば?私はここで待ってるから」
「え?妹は着替えないの?」
「着替えないよ」
「なぜ!?」
「嫌だから」
「なぜだ!?」
「だから嫌だから」
二回目の嫌だからを聞いて兄貴はトボトボと浜辺に設置しされているロッカー室へ向かう。
(10分後……)
「妹ー、着替えてきたよ。こうなったら僕一人で遊び尽くしてやる…………ってあれ?」
兄貴の目の前には白い水着姿の妹が立っていた。
「あれ、なんで?」
「普通に服の下に着けてただけだよ」
「え?でもあの会話の流れでは持ってきてなかったのかと」
「誰も持ってきてないとは言っていない」
「うー、妹よおおおおおお!兄貴に対しての照れ隠しだったのかー!」
「バカな兄貴の前で服を脱ぐのが嫌だっただけだよ」
「ぐ!少し寂しいよ」
そして、兄妹はゆっくりと海に入る。夏とはいえ少し冷たい感覚が体を刺激した。
「うーん、浮き輪でも持ってくればよかったかな」
「まあ、良いんじゃない。こう波に揺られながらボーッとしてるだけで私は満足だよ」
「まあー、そうだね。うん?妹よ、僕の足元に何かが……」
兄貴は足元で踏んだグニャリとした感触の物体を手で掴み妹に見せた。
「あ、妹。これナマコだよ」
「…………………………」
「知ってる?ナマコって防衛本能でお尻から内臓を出すんだって!凄いよねー、内臓をだよ内臓を!ってあ………言ったそばから白い内臓さん達が飛び出てきた」
「…………………………」
「ん、どうした妹?顔色が青ざめてるが……」
「その………」
「え、何?」
「そのグロテスクな塊をさっさと戻せええええ!!」
「え?何で攻撃の構えをとってるの?何で手をグーにしてるの?」
兄貴は手のひらをパーにしナマコを海に落とす。
「ふー、兄貴があと一秒離すのが遅かったら今、海に沈んでるのは兄貴だった」
「妹、ナマコにあの殺気は大人げないよ。だってナマコだよ。酒のアテには欠かせないよ。見方によっては高級食材だよ」
「あんなグロテスクなものを見せられて平気な女子の方が少ないわ」
妹は海から出て砂浜に置いてある荷物まで向かう。
「どうしたの?」
「バックに入っている麦茶を飲みにいくだけ」
「あ、じゃあ僕も」
兄妹は砂浜に座りながら麦茶を飲み干す。
「ねえ兄貴」
「どうした?」
妹は兄貴の手を握り体を寄せる。
「え、どうした妹!」
「うるさい……なんとなくよ、なんとなく!」
妹は海を眺めながら手の握りを強くする。
「兄貴は私と一緒で疲れない?」
「何をいきなり言ってるんだ?」
「たまにの祝日くらい私から離れてゆっくりすれば良いのに」
「え、嫌だよ。だって妹の事は大事だし、僕の疲れは妹といれば万事解決さ。今も楽しいし、また来たいな」
「ぷ、なんか……恥ずかしい言葉だよ」
妹はクスッと笑いながら立ち上がり兄貴の手をとる。
「もう一回海に入ろうか」
「よーし、日焼けするまで遊ぶぞー」
「ほどほどにね」