森の中で一軒家見つけたった
森の中を竜也とエクレールは、足場が悪い状態にも関わらず普通の道を歩いているかの様に進む、進む、進む、そんな中森の雰囲気は幻想的ではあるが来るものを拒んでいるかの様に何処か不可視の威圧感でも発せられているかの如く異様な雰囲気であった。
だが、そんな雰囲気であるにも関わらず森は非常に静かであり、逆に静かすぎるが故に流石の竜也も警戒心のレベルを上げることにした様ではあった。
「森が静かなのは解らんでもないが、それでもこの静けさは流石に気味が悪いな。鳥の鳴き声や虫の鳴き声も聞こえないし、よくよく考えて見たら異世界に転移させられてからこっち、肉食獣みたいなのに一回も遭遇していないんだよな。」
『ワフゥ!ワフ!』
「ん〜〜っ!!幾ら何でもこれだけの規模の森で、あれだけそこら中に食料があるのにそれを獲物とする肉食獣がいないのは流石におかしい。出会ったのはホーンラビットと魚くらいだし、此処からは気を引き締めて動いた方が良いのかもしれないな。偶然と考えるには流石に出来過ぎている様な感があるからな。」
『ワフ!ワフ!』
「それはさておき、やっぱり1人じゃないっていうのは素晴らしい。相槌返してくれるこのモフモフッ子に出会えたことに感謝感激だなぁ〜〜。」
こんな状況でありながらも、場を楽しむ節が見られる発言をする事から実は、竜也の心臓にはすごい剛毛でも生えているんじゃねえ?と思える様なことに対して全くツッコム者がいないこの現状はいささかキツイものである。(今後出てくるかもしれないツッコミ担当は、きっと突拍子も無い発言とタイミングに苦労するであろう) 南無〜〜(>人<;)
そんなこんなで、警戒段階を上げて移動すること暫く、あたりに生えている木々に蒔きを取ったかの様な切断跡が数カ所見られ始め、遂に念願の道を発見するに至った。
道というには若干はばかられる様な獣道に毛が生えた様なものではあるが、道は道である。
「やっとの事で道らしい物を見つけるに至った訳だけど、どうにも心配になる位にはしょぼい道だな。周辺に人が居なければ先ず無いような採取跡もあるから、おそらく其れなりに知能がある生物がいるのは間違いないと思うんだけど。こんな森の中に住んでいるであろう事を考えると不安がない訳じゃ無いけど、こんな所で悩んでいても始まらないから先に進むとするかな。」
『ワフゥ!ワフゥ!ワフゥ!』
「エッ。早く先に進もうって?分かったからそんなに急ぐなよ。危ないぞ〜〜。」
何気にエクレールの足が速い事がここで判明するのだった。
道と言えなくも無い道を歩き続ける事1時間弱、遂に、遂に人家を発見した、それは単純に丸太を組んで作ったログハウスであったが、それなりに大きい作りになっている様で立派な佇まいをしており、周りの環境にも溶け込んだ、まるでその存在を隠すかのごとく非常に分かりづらい様に建てられていた。
「兎に角先ずは、人がいるかの確認かな?この世界に来てから初めて人に会うことになるから自分の態度が少し心配だな。」
竜也達は勇気を出して扉の前に立ち第一声を発するのだった。
「たのも〜〜〜う」
『ワフゥ!ワフゥ!ワフ!』
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「何の反応もない。まるで屍のようだ。」
「あえてもう一度言おう。何の反応もない。まるで屍のようだ。」
遂に異世界初の陣族発見になるのか?はたまた、全く異なった生物との出会いが待っているのか?
ドキドキ、ワクワクしながら今か今かとその瞬間を待ちわびる竜也達出会ったが、予想に反してログハウスからは何の反応もなく、このやり場のない気持ちをどうしようか?と割と真剣に考え始める竜也であった。
エクレール以外は周りに誰もいない状態ではあるものの、異様な空気に耐えられず、恥ずかしさのあまり再度、ドツボにハマるような何かをする前にログハウスの扉がゆっくりと開き始めるのだった。