森は続くよ何処迄も
足場と見通しの悪い森を進む中であっても、竜也の歩みに疲れは見えず、いっそ軽快と言っても良いほどのスピードと距離を稼ぎ出していた。
「しっかし日本と違って凄く自然豊かな場所だなこの世界は、こりゃ精霊もさぞかしたくさん居ることだろう。」
基本的に精霊がいない場所は無く、より自然に近い場所ほど多い傾向にあった。
竜也本人は未だ、精霊は見えても感じてもいないが・・・・・精霊術師の一般常識として割と普通である。
「動植物も豊富みたいだから、食料に困ることはなさそうだな。そろそろ今日の飯の種でも捕獲しますかね。」
竜也はおもむろに小太刀を抜きさり一方の刀の切っ先にもう片方の小太刀の柄の根元に当て狙いを定め掛け声と同時に一気に押し出した。
「陰陽○止!!」
押し出された小太刀は狙いどうりに藪の中を30メートル程突き進み『ピギュ』の鳴き声とともに獲物に突き刺さった。
「いや〜上手くいってよかった。小太刀を二本持ったからには日本男児として一度は試して見たくなる技だよな〜♪」
あくまでも竜也の技量と、気の使用によって成された結果ではあるが本人は全く気にしていない。
竜也自身、此れまでどんなに努力を重ねても一切、一族に評価されることが無かったことから、自分がどれだけ凄いことができているのかイマイチ理解していない。
早速獲物を回収し、血抜きと解体を始める。こういったことに対しても無駄に手際の良いのが竜也である。
「なんか立派な角が生えてるウサギだけど、取れてよかったな〜。結構ウサギって美味しいんだよな。」
因みに普通ウサギには角は生えていないものである。
モンスター ホーンラビット 魔獣 狩るのが容易な魔獣で美味ではあるが、毎年数名の者が角に刺され死傷していると言う見た目に反して何気に油断できないモンスターである。
解体が済んだ肉をアイテムボックスに収納し、本日の野宿場所を探し始める。
「気を聴覚に集中してっと、水の音がかすかに聞こえる。あっちの方か。」
迷いなく森の中をズンズンと7分程進むと目的地は予定通りに見えてきた。
「さてと、川に到着。暗くなる前に早速、野宿の準備と肉の調理しますかねと」
森を歩いている最中に拾っていた枯れ木をアイテムボックスより取り出し、気を全体に巡回させる事によって強化された筋肉の力を使い、あっという間に摩擦熱で火をつけ肉を焼く準備と明かりを手に入れるのだった。
河原の岩場に囲まれた安全地帯において焚き火を前に焼けた肉に齧り付き至福の笑みを浮かべて夢中に食事をする竜也であった。
「ふう〜っ!!食った食った異世界のウサギもやっぱり美味かったなぁ。調味料があればもっと良かったんだがこの状況で我儘を言っても仕方がないか。」
「そう言えば昼間にステータスを確認した時に装備品で気になる表示があったな。ちょっと確認してみるか。」
ステータス 装備品表示
冒険者の服
冒険者が身につけている一般的な服である。
革の靴
世間一般で使用されている靴である。
精霊術阻害の指輪
精霊術を行う上で、精霊との意思疎通ができなくする為の指輪であり、精霊術行使補助の指輪と見た目は一緒である為分かりにくい迷惑な指輪である。
「んっ?精霊術阻害の指輪って・・・なんじゃそりゃ〜っ!!今まで精霊術が全く使えなかったのってそれが原因かよ(怒)」
「チックショウ〜〜〜!!今までの苦労を返しやがれ。人に与える前にちゃんと確認くらいしろよ。て言うかなんでそんな物が必要だったんだよ。紛らわしいもんを造るんじゃねぇ〜。」
森の中心で怒りのあまり叫びまくる男の図
「叫ぶだけ叫んでスッキリしたっと、とにかくさっさとこんな指輪なんか外しておこう。何か変化があるかもしれないし。夜も更けてきたからソロソロ眠りますかね。おやすみなさい。」