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しばりプレイでよろしく

作者: たとい

異世界に飛ばされてきた当初、俺は途方にくれていた。

なんともご都合主義な流れで、RPGだとかファンタジーな異世界にご招待されることになったときは、そりゃあもう嬉しかったよ?

しかも言葉は通じるし装備も万端だし能力はどれもチート級にしてくれるってんだから待遇良いよね。

でもさ。


それだとツマラナイって思わない?


だから俺は言ってやったのさ。「それ、チートすぎない?」って。

そこで俺は提案した。

「そこまで強いなら、縛りプレイさせてくれない?」と。

何でもできちゃうのも良いけどさ、その方が面白そうじゃない。


とはいえ、だ。


「物理的な意味で言ったんじゃないんだけどなぁ!?」


相手は、縛られた状態で俺を異世界に送り込みやがった。


それはそれで、たしかにしばりプレイにはなったよ?

どんだけチートな能力あっても手も足もでないんだからな!

全身グルグル巻きで縛られまくり。顔だけ無事なのが救いだったが、こんな奴いたらどう思う?

①相当かわいそうな被害者、②危険な囚人、③相当な変態、のどれかだろ。

残念!相当な変態にしか思われなかったよ!

どうやら俺の魔力によって作られた拘束具だったようで、それが原因だったらしいと後で知った。

しばりプレイしたいなんて言った俺のせいですか。そうですよね、すいません。


「そりゃあ向こうもMですかって言うよな。」


しばりプレイしたいって言った俺は真っ先にそう言われた。

「そういう趣味はない」としか言わなかったし、自ら望んでしばられたいと発言したと勘違いされたままだったようだ。

なってしまったのは仕方がないので、とりあえずどうすればいいのか一生懸命に考えた。


しばりプレイでやると決めて異世界に来てしまった俺は、四六時中絶対に縛られる状態にされてしまっているようだった。

だが、最初こそ全身しばられていたものの、ようするに体の一部が縛られてればOKなのだ。

今ではなんとか腕や足を縛る程度で済ませている。この状態に訂正するまで苦労した。

ん?どうやったのかって?

さっきも言ったが、俺自身の体を縛っていたのは俺に与えられた魔力による能力だ。

自分の望む程度に縛られている状態をイメージしながら魔法を操れば簡単に変更できるのである。

それに気が付くまでかなり試行錯誤したっけか。

自分で自分を縛っているという状態に変わりないから、相変わらず変態扱いされがちなのが気に食わないが。呪いみたいなもんだからどうしようもない。


「っと。何かあったのか?」


町が騒がしくなったので外に出てみると、何匹かのチンピラっぽいモンスター連れてるラスボスっぽい雰囲気の男が立っていた。


「お兄さん、連れの方が暴れてますよ。躾してないんですか。」

「探しものしてもらってるんですよ。」

「探しものって何です。」

「強い人。」


暴れまわるモンスターを止めようと何人かの騎士やら強者たちがくってかかっている。

なるほど。こいつらより強い人探してるのか。ってことは相当腕に自信ある奴か?


「ずいぶん余裕ぶっていますが、もしかしてあなたもお強いのですか?」

「一応チート級のはず。防御力はんぱねぇし。」


話し終わったところで思いっきり吹き飛ばされていた。

驚きながら見てみると、話していた男が笑顔で俺を殴ったのだと知った。

いやーさすがチート。町の被害に対して体の痛みがほぼ無いわ.

防御するかのように体中を毛布だとかで縛られている状況からして相当強い相手らしい。


「ほう、思った通り面白い。」

「だからといっていきなり殴るのはどうかと思うんだけど。まぁ、話の途中でなかっただけほめてやるよ。」


さっさと完全縛り防御態勢から普段の腕縛り状態へと変化させる。


「わざわざ自分を縛るなんて、趣味なんです?」

「趣味じゃねぇ。強制しばりプレイだ。」


だが、そっち方面ではすっかりプロ並だ。


俺は暴れるモンスターが殴ろうとしたテと足を瞬時に魔法で縛ってやった。

見たこともない手口に見ていた全員が唖然とした目で見ていた。

使うのは初めてじゃない。変態変態と罵ってきた奴らに実行したことが何度あったことか。

とはいっても、俺だってこの能力は奇怪だと思うよ。


そう。この世界で俺はしばりプレイしかできない。


体力はあるけど、他に魔法は使えない。能力までしばりとかマジ理不尽。

だが何であれ、本来は無敵な能力値だ。

なめてもらって結構。その分相手を圧倒した時の状況が映えるというものだ。


「まだまだ不明な点がありますが、合格です。あなたに遊んでいただきましょう。」


しばられて戦闘不能になった連れのモンスターを見て、俺に狙いを定めたらしい。

持てあましていた力を解き放とうとする男に俺は言ってやる。


「自分が強すぎてつまらなかいってか?だから対等に渡り合える強い相手を探してたって?」

「そう言ったはずですけど?」

「ハンデってやつ知らねぇの?」

「生ぬるい戦いに興味なんてありませんよ。」

「ほんと馬鹿だなぁ。」


だったら、俺の魔法はお前にお似合いだろうよ。


「生っちょろい戦いに飽きたってんなら...しばりプレイでもやってみな!」


「はっ。ふざけたことを!」


俺の魔法にかまいもせずに男はとびかかってきた。

が、奴は攻撃するのをやめて慌てだす。どうやら、想定どおり魔法がうまくかかってきてくれたらしい。


「ま、魔法が使えない?お前、何をした!?」


動揺するのも無理はない。

俺は、奴にとってのチート能力を縛ったのだ。正確には、封印ってところだろうか。

前は時を操るって魔法の奴の力を封じてやったっけ。今回は変形関係だったようだ。一体どんな能力だったのか。

それを知る暇もなく、モンスターを対処していた人々によって男はモンスターと一緒に捕らわれた。


「どうだぁ?自慢の技が使えない気分は。」


嫌味ったらしく煽ってやれば悔しそうな顔を拝ませてくれた。

かっこつけたつもりだが、しばられたままのこの姿ではあまりかっこついていないことだろう。

ともかくチート能力に頼りっきりだったらしい男はそのまま連行されていた。


「まさかしばりプレイがこんな形で身に着くとは思いもしてなかった。」


悪くはない。が。

やっぱり自由が欲しいよ。


俺の仲間になった奴は即しばり仲間だ。簡単には仲間になってくれない。

入ったら入ったで問題になりそうだけど。


当分はこのまま過ごすしかないと腹を決めて、しばった両手で、手にした飲み物を見ながらじっくり飲んだ。


「いっそ、楽しんでやろうじゃん?」


しばりプレイでやってやる。

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