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File1 ~改装住宅の罠~

 この小説は、小説を書く箸休め、気分転換に書かれる小説です。

 超不定期更新であることをご了承の上ご覧ください。

 だいたい、窓際太郎の事件簿くらいの更新ペース?

 夏の日差しの中、汗だくになりながらスケスケのワイシャツに身を包んだ会社人。

 それを空調の利いたタクシーの中から俺は優雅に眺めていた。

「そんなに暑けりゃ、利用してくれても良いんですよ?」

 今度、初乗り運賃が2kmから1kmに改正されて、こういった層の需要も増えるかもしれない。

 まぁ、それはないだろう。少ない小遣いでやりくりしてるお父さんに、400円代の初乗り運賃は辛いものだ。なにしろ、昼飯一回分。

 ならそれくらいの距離、真夏の暑さを我慢して歩くさ。

 代わりに長距離が高くなる。人間、10円でも高くなったと知れば嫌がるもんだ。

 むしろ需要が減るんじゃないのか?

 消費税が3%になったとき、自販機は110円になった。

 消費税が5%になったとき、自販機は120円だ。

 消費税が8%になったとき、自販機は130円。

 おいおい、その辺のスーパーじゃ安売りで1.5リットルを買える値段だぜ?

 タクシードライバーといえば缶コーヒーにタバコだが、あいにく俺の趣味じゃない。

 両方匂いがキツイ。車外で飲んでも身体を通して車内に篭っちまう。

 愛してるんだよ相棒を。大事にしてるんだよ女房を。香り一つで売り上げは下がっちまうもんだ。

 タバコくさくて鼻の曲がる運転手、あんたは指名したいかい?

 俺なら嫌だね御免だね。なら、みんなだってそうさ。

 営業努力って奴だよ。身嗜みってのは格好だけじゃない。

 たまには女性ものの香水を振り掛けてみたりしてな。

 タクシーを電話で呼ぶと、それだけで運賃に含まれるって知ってるかい?

 道で拾うのと、家まで呼ぶのじゃちょっとばかり値段が変わる。高くなる。

 だからよ、病院に通う爺ちゃん婆ちゃんの時間を聞き出して家の前で待つのさ。

 来週は○○時にお願いねって、常連様の出来上がり。

 年寄りってのは金払いが良い割りに、10円でもケチりたがるから不思議なもんだね。

 タクシー乗り場で、ズラーっと立って並んで待つよりよっぽどマシさ。善良だろう?


 常連様の山野辺さんから着信アリ。最近はながらスマホが危なくていけねぇ。

 自転車ながらなんて、お前ら死にたいのかよ? 俺の見てないとこで死ねよ?

 お客さんの前で携帯を取るなんてことは出来ないから、待たせることになるけど勘弁してくださいな。


「はい、毎度お世話になっております。海津です。ご用の程はなんでしょうか?」

「……警視庁。こい。五分だ」

「あ~、すんませんね。今、ご婦人の御用持ちで一時間ほど休憩中なんですよ」

「……警視庁。こい。一時間五分だ」

 ……山野辺警部は数字が苦手らしい。

 病院からご自宅まで送るのに掛かる時間を計算に入れてない。

「送迎料金になりますが、よろしいでしょうか?」

「……警視庁。送迎でこい。一時間五分後だ!!」

 一方的に切られた。

 お客様が電話を切るまでこっちは切れないんだから、これで良いんだけどもさぁ。

「あ~あ、ダラダラの汗だく……熱中症で病院の世話になる前に、タクシーの世話になるのを待ってますよ?」

 夏の日差しの下、会社人のお父さん方がスケスケのワイシャツ姿で歩いていた。

 ……大変だねぇ。夏。


 ◆  ◆


「一時間三十分。二十五分の遅刻だな」

「ピザ屋と違って割引無いんですよ、すいませんね~」

 山野辺警部。警視庁きっての敏腕刑事。数々の難事件を解決した現場の鬼。

 その敏腕ぶりは未だ衰えるところを知らず、殺人鬼どもを震え上がらせる。


 昔は良かった。

 まぁ、結構誰でも口にする台詞だが、刑事さんがそれを言うと洒落になんねぇ。

 昔は良かった。とにかく恫喝して、自白させれば有罪確定。

 物証が揃わなくても刑務所に放り込めた。

 日本の刑事司法は中世レベルだって?

 はい、仰るとおりで御座いますともさ。

 自白至上主義。密室の中で執り行われる長時間の取調べ。

 怒鳴ったり、机を叩いたり、眠らせなかったり、ライトで目をくらませたり。

 それでついつい心がポッキリ折れて「私がやりました」と口にすればそれで人生おしまい。

 さよならバイバイ、無期懲役で会いましょう。

 それって魔女裁判か何かだろ?

 敏腕刑事の手に掛かればお手の物だったんだろうさ。

 取調室の様子が撮影されるようになった。だけど、全部じゃない。

 警察に都合の良いところだけを切り取って見せられるんだから、何にも変わっちゃいない隠蔽体質。


 ――――刑事ドラマを見て正義の味方に憧れて、現実知ったら嫌になったよ。

 毎週、必ず拳銃ぶっ放してる危ない方の刑事さんだったけどな。

 自衛隊は体力的にきつそうだったから止めた。そこまでして撃ちたくない。


「それで、今日はどちらまで?」

「世田谷だ。とりあえず、流せ」

「へいへい、高速道は?」

「好きにしろ……」

 毎度のやり取りだ。有料道路の使用は客の払いになる。当然の確認だ。

 長距離の時は必ずちゃんと聞かなきゃいけないんだよ。

「世田谷の変死事件、知ってるな?」

「あ~、あの奥さんと息子さんの二人が亡くなったニュース。見ましたよ、あれは酷い事故ですね~」

「あんな事故があってたまるか。家の中で二人揃って窒息死。旦那は出張中で無事。

 いま流行の高気密高断熱住宅に欠陥があったんじゃないかって話だ。

 が、素人の噂話ってのは怖いな。不動産業界からウチに抗議が来たぞ。株価が下がったってな」

「うわぁ~、業界との癒着ですか。警察ってのはホント心の底から汚いとこですね」

 山野辺警部が運転席の椅子を蹴った。

 痛い。警部の足が。ちゃんと鋼板しこんでおきましたから。

 警部のためだけの特別サービスですよ?

「あまりの気密性のために窒息しちゃったんじゃないかって噂でしたね~」

「……それで、ウチの家も危険なんじゃないか?

 高い金だしてリフォームしたのにどうしてくれる。

 客が騒いで新しい家の改築にストップが掛かって、建設業界からも苦情が来てるんだとよ。

 さっさと何とかしろってな」

「なるほど、今のうちに建設業界株を空売りしとけって事ですか? ついでに、その家を手掛けた会社名も是非」

「それをインサイダー取引と言うんだ!!」

「え? お客さんが勝手に後部座席で喚き散らしただけですから問題ないですよ?」

 いや~、儲かった儲かった。

 うちの妻に海外旅行の一つもさせてやりたいが、スケジュールいっぱいで一緒に行けないのが売れっ子タクシードライバーの泣き所だなぁ。

「まぁいい、死因は窒息死。絞殺の後は無い。被害者が抵抗した後もな。換気が止まっていたため何らかの欠陥で住宅内の酸素が欠乏したんじゃないかって話だ。――――でも、俺はそんなことはありえないと思ってる」

「はぁ、なんでまた?」

「都合よく旦那だけが生き残ってる。刑事の勘って奴だ」

「あぁ、冤罪を良く生み出すアレですか」

 山野辺警部が運転席の椅子を蹴った。

 痛い。警部の足が。ちゃんと鋼板しこんでおきましたから。

「捜査線上に上がったのは三人。旦那。その愛人。それから隣家の奥さんだ。

 はやりのご近所トラブルって奴だ。家を改築してから毎日のようにイザコザを起こしてたらしい」

「愛人かぁ……羨ましいですねぇ。男の浪漫ですよねぇ」

 運転席が蹴られなかった。

 妻と愛人の間の二重生活。疲れはするが、憧れもする。

 山野辺警部も男だったんですねぇ。でもそれ以前に、独身じゃありませんでしたっけ?


 ◆  ◆


 世田谷区、住宅展示場。もとい、世田谷区、事故住宅展示場。

 高気密工断熱の欠陥住宅が引き起こした悲劇の現場として野次馬が集まっていた。

 ここでアイスを売り出せば飛ぶように売れるんじゃないだろうか?

「ねぇ、山野辺警部。アイス買っていきません? それで、これ見よがしに車内で食べるんですよ」

「お前、趣味が悪いって言われないか?」

「ご近所の地域経済活性化に協力してあげようとしてるだけなのに、なんて言い草ですか。

 近所のコンビニでアイスを買い占めましょう。そして三倍の値段で売りつけましょう」

「やりたきゃやれ。保健所に路上販売の届出を出してからな」

 手続きの手間を考えると――――難しいなぁ。

 しかし、この暑い中、スマホ片手に素人記者がよくやるよ。

「山野辺警部。降りてくれませんか? ほら、目の前にお客さんがいっぱいで……」

「俺も客だろうが!!」

「まぁまぁ、降りて来てくださいよ。隣の奥さんでしたっけ?

 それでも私はやってないって、マスコミに突き上げられてた人。

 事故だったり殺人だったり、マスコミってのは忙しいですよね~」

 ついでに言うと、旦那さんも犯罪者扱いなので、もう誰でもいいらしい。

「……で、ナニを聞いてこいと?」

「喧嘩の原因。何でもないのにご近所トラブルになる訳が無いじゃないですか。

 恨み辛みがつのってその内に~ってのは解りますけど、子供までとなると尋常じゃないですよね~?」

「線としては一番薄いと思ってる。他に聞いておくことは?」

「事故のあった夜。車が止まってなかったか、聞いてきてください」

「……話なら一通り聞いたが、そんな話は上がってなかったぞ?」

「あぁ、取調室の外では無能な警察でしたっけ。もしも見つけて、自分が通報しなかったばかりに隣人を見殺しにしてしまった奥さんの心痛はいかほどのものか……あぁ、鬼には人間の心が解りませんか」

 山野辺警部が運転席の椅子を蹴った。

 痛い。警部の足が。ちゃんと鋼板しこんでおきましたから。

 ……。

 ……。

 ……。

「近所トラブルの原因は、」

「サンルームの日当たりが悪くなった事」

 一目見りゃ解りますよ。

 折角、洗濯物を干すために作ったスペースが日陰ものにされちゃあねぇ。

 毎日が苛立ちの原因なら、毎日が喧嘩の日々になりますよ。

「解っていて、なんで質問させる?」

「心の距離を縮めるって解らないんですか?

 鬼みたいな顔と鬼みたいな心を持った相手でも、

 日々の愚痴を聞いてくれるなら多少は心を開きますよ」

 舌打ち。

 ご自分の人相についてご理解なさっているご様子。

「――――深夜に車の音で目覚めたそうだ。

 怪しいなと思っていたらなんだか長い棒を伸ばして、五分から十分。

 すぐに居なくなったそうだ。

 でも、もしもそのときに自分が警察を呼んでいたらと思うと、泣いていたよ。

 隣の奥さんとは険悪だったけれど、子供までなんて酷いってな」

 奥さんだけなら良かったの?

「警察は無能だから無理としても、声を掛けたなら助かったかも知れませんね」

「喧嘩を売っているのか?」

「いえ、事実ですけど? 電話から五分で飛んできてくれるんですか?」

 気付いて五分十分、その間に警察が飛んでくることは無いし、もうその頃には終わってる。

 深夜の住宅街だ。長い棒を持ってる?

 どこからどう見たって古風な下着泥棒だろう。

 女の人だ、窓から声をあげるのも恐怖がある。

 大人でもお化けは怖い。深夜の人間はもっと怖い。

 何かしている怪しい人間なら、とてつもなく怖い。


「それで、次の目的地は何処だ?」

「タクシードライバーに決めさせる客なんて居ませんよ?

 あ、それじゃあ北海道で、長距離客は儲かって助かるなあ。この夏でもきっと涼しいはずです」

「真面目に働け」

「真面目にタクシードライバーをやってますが?」

「それ以外を真面目にしろ」

「――――警察こそ、真面目にやって欲しいんですけど?」

 運転席が蹴られなかった。


 ◆  ◆


「なんで哀しくて男二人でアイスを食べなきゃならんのだ?」

「夏だからじゃないですか? やっぱり専門店のアイスは美味しいですね」

「……で、何が解った?」

「チョコミント、エメラルドグリーンの女子高生っぽい色合いですけど、美味しいですね。

 これを、山野辺警部がその顔で若い女性に混じって頼んでいた姿を思うと――――かなり笑える?」

 山野辺警部が運転席の椅子を蹴った。

 痛い。警部の足が。ちゃんと鋼板しこんでおきましたから。

「第一発見者は?」

「家主。被害者の妻の夫で、子供の父親だ。だから一番怪しいと睨んでいる」

「うわぁ、鍵の掛かった家で第一発見者が夫じゃなけりゃ、それは間男かなにかでしょうに」

「うるさい。他には?」

「家の換気、止まってたんですよね?」

「あぁ、調子が悪かったそうだ。だが、施工主によれば設計上それで窒息が発生するわけが無いと言っている。だから使われた建材か何かが酸素を吸収したんじゃないか――――素人ご自慢の推理が昼のワイドショーでもやってたぞ」

「……その顔で、お昼のワイドショー」

 舌打ち。

「愛人の女性、常連客でしたか?」

「あぁ、遠方からわざわざ週一でやってきてくれる常連さんだとよ」

 第一発見者が旦那。当たり前。

 死因は屋内での窒息死。当たり前じゃない。

 旦那は都合よく出張中。正確には出張に合わせて事故が起きた。当たり前じゃない。

 愛人の女性、アイスクリーム専門店の常連客。まぁ、当たり前のうち。

 遠方からわざわざ。当たり前じゃない。

「で、どうしましょう?」

「逮捕だルパン」

「――――冗談、口に出来るんですね。逮捕は無理なので、即座に旦那と愛人、双方に任意同行を求めてください。証拠を処分されると厄介です」

 山野辺警部が頷き、ガラパゴスな……らくらくな携帯を取り出した。

 部下に二、三指示を出すと、それでおしまい。

 良いご身分だ。俺も人に指示を出すだけの身分になりたい。

 助手席でドライバーに指示を出すだけの、そんなタクシードライバーに私はなりたい。


「それで? この先は?」

「そうですね、辺り一帯のアイスクリーム屋に聞き込みを入れてください。

 ドライアイスの保存にはマイナス80度を要しますけど、ちょっとした冷凍庫の温度センサーを弄れば簡単なことです。ドライアイス自身も庫内温度を下げてくれますからね。

 ドライアイスの製造機はガスも合わせると高価ですが、保存機器ならそれほど高くはありません。それを購入してくれていれば大助かりです。

 ……。

 ……。

 ……。

 個体のドライアイスは昇華の際、750倍の気体に膨れ上がります。

 クーラーボックスに箱詰めしたドライアイスを過熱。

 昇華した二酸化炭素は家の中の空気を押しのけて侵入。

 これで家の内部が酸素欠乏の状態になります。

 家の内がどれだけ広くても、必要なドライアイスの量はその750分の1。

 車一台に詰める量のドライアイスで十分ですよね?

 最終的には車750台分の二酸化炭素になるんですから。

 かなりの大豪邸じゃなければそんな容量入りきりませんよ。

 愛人にはたかだか車で十分の距離なのに、遠方から来たと言ってドライアイスを多量に仕入れた理由について聞いて差し上げてください」

 山野辺警部は理解したのか理解していないのか、テープレコーダーを回していた。

 もちろん、アナログの磁気テープだ。

「旦那のほうは?」

「共犯者です。

 いくら凶器が用意出来ても、それを注入するための適切な入り口がないといけませんから。

 おそらく、二階の窓やエアコンの取り付け口に二酸化炭素を送り込むための都合の良い穴があるはずです。

 隣の奥さんが眼にしていたのは、その穴に棒の先を入れようとしてた姿でしょう。

 冷たく重い二酸化炭素は上から下に、眠ったまま、失神し、そのまま二人ともお亡くなりになったのでしょうね。

 計画を確実にするため、換気の調子が悪い出張から帰ってきたら電気屋を呼ぶから動かすな、とでも言っておいたはずです。

 差込口、換気系、警報装置、色々と細工が施されているはずです。

 時間を掛ければ鑑識が見つけてくれるかもしれませんが、時間があれば証拠の隠滅も図れますから。

 どうそ、任意同行の片手間にでも調べて差し上げてください」

「そうか、車を出せ――――俺は少し眠る」

 敏腕警部は忙しい身だ。上から下から無茶な要求ばかり。

 事件発生から出ずっぱりだったのだろう。無精髭が荒々しい。

「わかりました、お休みなさい」

 俺は気遣って、眠れる鬼を起こさないように、ゆっくりと車を走らせた……。


「おい! どうして静岡に来てるんだ!!」

「車を出せって言ったじゃないですか? だから出したんですよ」

「警視庁に戻せって意味だ!!」

「タクシードライバーは距離が命なんですよ!? 稼ぎ時には稼がないと!!」

「国民の血税をなんだと思ってる!!」

「血税を払う国民をなんだと思ってるんですか!! 自腹きりましょうよ!?」

「そんな給料は貰っていない!!」

 総額。儲かった。良かった。


 ◆  ◆


 新聞。週刊誌。テレビ。

 愛人宅からはドライアイスの保存庫が発見された。

 クーラーボックスを数珠繋ぎにして、冷却保存出来る容積を確保していた模様。

 直接ドライアイスを購入しなかったのは足を付けないため。完全な殺意と計画性が証明された。

 任意同行が昨日の今日だったため、証拠隠滅にも失敗。

 もともと、カードの明細に証拠はあるんだろうけども。物証に勝る証拠は無い。

 旦那のほうは、帰宅後に玄関の扉を開けてしばらく佇む不思議な光景を目撃されていた。

 もともと酸素濃度に関する警報類は付いていなかったため、これからの鑑識の調査に期待。

 複数のアイスクリーム店からの裏づけ調査を見せられて愛人が自供した。

 あとは鬼瓦鬼蔵さんの敏腕ぶりが発揮されるのを待つだけだ。

 自白至上主義の日本だ。旦那の方も追い詰める事が出来るだろう。

 愛人が勝手にやったにしては計画性が高すぎる。内部の手引きが無ければ不可能な犯行だ。

 高断熱高気密住宅は、ある意味で安全性を、ある意味で危険性が証明された。

 二酸化炭素警報装置の設置が推奨された。……犯罪前には都合よく壊れるものだが。


 残念な事に、現実には名探偵なんて職業はない。そもそも何で食ってるんだろう彼等は?

 海外では犯罪コンサルタントという専門職があるそうだが、響きとしては犯罪者の指南役の気がする。

 正義感に厚い山野辺さんですら、警察上層部の意向には逆らえない。

 なら、正義は何処に? ――――胸の中に少しだけあれば良い。


 仏前の妻に手を合わせて事件の報告、

「ちゃんと、今日も、頑張ってきたよ」

 それで何かが帰ってくる訳ではないが、少しだけ、気が楽になる。少しだけな。

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