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初めまして、我がお城!

 軽く頭痛がしてきた。


 それは酒のせいではない。

 理解しがたい部下の言動が原因だ。


 奴の名前は宇田純玲。商業高校の情報処理科を卒業後、高校時代から付き合っている彼氏と同棲する為に親元を離れ、俺と同じ会社にアルバイトで入った。


 半年後に社員になった彼女の年齢は20歳。一回りして俺と同じ干支。


 顔は普通。ただ、成人式の時のちゃんと化粧をした写真は別人だったので、化粧によっては普通より上って感じだな。


 背は、160cmぴったりとか言っていた。体型は普通。あぁ、でもお腹に肉が付いたと指で摘んで見せていたから、部分的には肥えているらしい。


 髪は切りに行くのが面倒と言って、背中までのロング。いつもゴムに布が巻かれた髪留めで一つ括りしている。


 色気は皆無。俺の事を上司じゃなくて友達ぐらいにしか思ってないんじゃないかこいつ? と疑問に思うような態度。だけど、つい構ってしまう。不思議な女だ。


 そんな部下に「飼ってください」って言われてみろ! 頭抱えたくなるだろ?


 付き合ってもない。ただの部下。


 冗談だろ? って思って見れば、本気らしいし、ここで俺が断ったらこいつはどうする気なんだ? と軽く心配もしてみたりして、結局家に連れ帰ってしまった。


 その内、新しい男でも見つけて出て行くだろっていうのが俺の考え。

 大体、仕事が終わってからも上司の顔など見たくもないだろうに……。


「おっじゃましまぁーす」


 そんな事を考えながら、俺の住む10階建てのマンションまで戻って来た。部屋は8階なので、エレベーターを使う。


 元々、父親が買ったマンションだが、両親は定年退職後、海外で老後を楽しむとマレーシアに移住した。自然に恵まれ、温暖な気候。治安も悪くないし、日本で生活するより10万円ぐらい生活費が下回るらしい。


 間取りは3LDKで、玄関を入ってすぐ左右に部屋があり、右が寝室、左が仕事部屋。そして右の部屋の先にトイレ、正面に対面式のキッチンとリビングダイニング。キッチン横にお風呂。


「意外に綺麗なんですね」


「家に居る時間が短いから、汚す暇なんてないだろ。……とりあえずココ使え」


 キョロキョロと物珍しそうに部屋を見渡す宇田に、リビングダイニング横にある市松模様のふすまを開けて見せる。そこは6畳の和室。


 物が何にも置かれていない、まさしく空き部屋。


「おぉ~、初めまして、我がお城!」


「押し入れの中に布団が入ってるから、勝手に使え」


「了解であります! 巣作り、巣作り~♪」


 適当なメロディーに言葉を乗せながら、大きめの横掛け鞄を部屋の隅に置いて、押し入れから布団を引っ張り出す。

 ドサドサと落として、ずずずと引きずり、なんとも大雑把。


「じゃあ、俺は寝るから。朝は一緒に出るぞ」


「お風呂入らないんですか?」


「起きてから入る」


 今日は疲れた。その疲れの原因は暢気に「なら、お風呂借りてもいいですか?」と聞いてくる。


「いいけど……、大丈夫か? 風呂場で倒れないだろうな?」


「平気ですよ。軽くシャワー浴びるだけですし」


「なら、こっち来い」


「あっ、ちょっと待って下さいね」


 和室の隅に置かれた鞄の中から無造作にインナーを取り出し、小さなポシェットと共に近付いて来る。ただその手にパジャマ類はない。


「下着で寝るつもりか?」


 否定して欲しかったのに、宇田はそれが何か? って顔をしながら頷いた。


 ――勘弁してくれ。


 宇田に女の色気は感じないが、うっかり宇田の下着姿なんか見た日には、居心地悪いに決まっている。


「俺の服出しておくから、せめてそれ着て寝てくれ」


「マジっすか! わぁ~、助かります。服って会社のロッカーの中なので、今の手持ちはこの服しかなかったんですよね」


 どうやらこいつは、ネカフェでシャワーを浴びて下着だけ替え、その日着ていた服で就寝。出社してからロッカーに置いてある服に着替えていたらしい。

 洗濯物は溜まったらコインランドリーってところだな。


 ――本当に女の生活か?


「主任? なんか失礼な事考えてませんか?」


「失礼だと? みんなが思うような事しか考えてない」


「ふーん、まっ、いいですけど」


 これ以上こいつの相手をしていたら寝るのが遅くなるのが分かっていたので、さっさと風呂場に案内してシャワーやタオルの置き場を軽く説明してやった。

純玲が我が道行き過ぎ?


2015/04/19 文頭にスペースを挿入しました。

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