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もしかして主任、モロリズム派?

 主任の車は青いスポーツワゴン。「ズンズンズーン、ダダダダン」って歌ったら、主任に脱力された。


「ちょっ、なんですかぁー。間違ってないですよね?」


「いや、確かにそんなCMだが……」


 ハンドルの上部に揃えて握った手の上に額を付けて溜息を吐かれる。


「なら、いいじゃないですかぁー」


「あぁ、そーだな。いい、いい。それで忘れ物はないな?」


「はい、ママ。大丈夫です」


「誰がママだ。お前みたいな娘を産んだ記憶はない」


 再び溜息を吐いた後、気を取り直したようにギアをドライブに入れ、滑らかに車が動き出す。


 LINEでニコに到着予定時間を送って、運転する主任をじっくりと眺めていたら、一瞥をもらった。


「穴が()く」


「ふひひ、化けらった中をずっと見られたうちの方がブスブス穴だらけですわん」


「俺の場合、見てても面白くないだろ」


 主任的にはうちのビフォアーアフターが面白かったらしい。まぁ、男の人って化粧しないもんね。


「いえ、面白いですよぉ? 運転してる男の人見てると、ときめき指数が上がりますよぉー。何でですかね?」


「知らん」


「ちなみに主任って、バックするとき助手席に手を置いたりしないんですか?」


「しない」


 主任の言葉にちょっとがっかり。


「しましょーよ。男性がするモテ仕草の助手席彼女がドキッてしちゃうやつ! ついでなので、体験してみたいです!」


「だから、し な い。何がついでだ。そこまでのサービスは付いてないぞ」


「ちぇっ……」


 まぁ、本気で言ってるんじゃなくて、してもらえたらいいネタになるぐらいの気持ちだったのでいいんだけどね。


「大体、そのモテ仕草って、古くないか?」


「結構昔から言われてますよねぇー。でも、ドキッとするのは今も昔も変わらないんじゃないですか? 所謂、パーソナルスペースに入られてドキドキ、イコールときめきみたいな? 男の人だってチラリズム好きだったりするじゃないですかー」


「ちょっと待て、なんでそこでチラリズムなんだ」


「え? 昔から言われてる萌え繋がりですけど? あっ、もしかして主任、モロリズム派? バックスリットが入ったロングスカートを履いたお姉様が階段を上ってるときのけしからんふくらはぎとか、背伸びしたときの脇腹チラリとか、タンクトップやキャミから見える横乳よりも、今日のうちみたいな生脚全開がご馳走なんですか?!」


 ショートパンツから伸びる脚は生肌。スニーカーソックスだからがっつり脚を出してるんだけど、主任はこっちをちらりとも見ずに鼻で嗤った。


「はいはい。ごめんなさいねー。こんな小娘の脚にどぉーこぉー思わないですよねー」


 ふて腐れたように言えば、赤信号で止まった主任がうちの方を向いた。


 真剣な主任の表情に、ちょっと煩すぎた? って思ってたら、その視線が右下に流れる。


「宇田」


「……え?」


 ひどくゆっくりと伸びてくる腕。それを固まったまま見ていると、うちの首筋に主任の左手が触れた。


 ――うわぁ~、なに? なに? なに?

 ――イベント発生?! どこにフラグ立ってたの?!


 軽く脳内でパニクっていたうちに、手を引っ込めた主任が「手、出せ」って要求してくる。


「はい?」


「だから、手を出せ。信号変わる」


「あっ、はい」


 急かされて手を差し出すと、掌にピアスのキャッチが落ちてきた。


 車を発進させた主任が前を向いたまま「外れかけてるぞ」って言ってきて、耳たぶを触るとピアスが抜けかけてて、受け取ったキャッチを填める。


「ありがとうございます」


 辛うじてお礼の言葉は言えたけど、まだ軽くドキドキが止まらない。


 ――うひゃぁ~、びっくりしたぁ~。

 ――マジ、びびるけぇ~。

 ――パーソナルスペース侵略効果半端なぃ~!

 ――ってか、こないだの家常さんときもびびったけど、主任の方がびびるわ!

 ――ざわっ、ってしたよ、肌!


 心の中で叫びまくっていたら、「急に静かになんな。調子が狂う」って言われた。いや、主任の紛らわしい行動が原因だからね!

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