小1時間問い詰めたい
お、お久しぶりです(滝汗)
……最後の更新が一昨年でしたね。
更新を待っていてくださった皆様、本当にありがとうございます!
「今週もお疲れ様でしたぁ~、乾杯~」
うちが生ビールの中ジョッキを持ち上げると、家常さんも「乾杯」と言いながら中ジョッキをコツンとぶつけてきた。
ごくごくと呷って空きっ腹にビールを流し込む。
「あぁ~、生き返るぅ~!」
ドンと音をさせてジョッキを置けば、対面で座った家常さんが「いい飲みっぷりですね」と笑う。
チェーン展開している居酒屋は、金曜日の夜ということもあって人が多い。うちらは運良く座れたけど、つまみに箸を付ける頃には満席になった。
お酒を飲むときはがっつり食べる派のうちとしては、米が必須ですよ!
こがし味噌の焼きおにぎりを箸で一口大に切り取って食べる。うまうま。
唐揚げにタレを絡めてマヨネーズ和えて小口ネギと刻みのりをかけた、とりマヨスペシャルもうまうま。
「あぁ~、もう、豚まっしぐらって感じ」
「何言ってるんですか。太ってないじゃないですか」
「って思うでしょ? うち、見えるとこだけ細いんですよ」
右手にお箸を持っていたので、左手を軽く握って家常さんの方へ伸ばす。七分袖のシャツから覗く腕は、自分でも細いなって思う。
「二の腕とか太腿とかぷにぷにですよー。下っ腹とか、マジでヤバイし!」
前に主任に「腹肉ヤバイです」ってガシッと摘んで見せたら、生暖かい視線とともに「運動しろ」って言われたのですよ! って言ってたら、家常さんに伸ばしていた手を取られた。そのまま上に滑らせて、袖がめくれる。
「……え?」
「あっ、ごめん」
無意識だったみたいで、家常さんの手が離れる。久しぶりに触れ合った他人の肌。自分よりも体温の高い男の人の手に、一気に顔が赤くなる。
――うわぁぁぁ~! ぶちビビった!
――触り方! 触り方ぁ~~~!!!
――営業さんって軽い人多いけど、家常さんも結構女慣れしちょるん???
――恋愛フラグぅーーー?!
――って、それはないか。うん、ないない。女子力0やもん。
焦った気持ちを落ち着けていると、うちよりあわあわしてた家常さんが「ホント、ごめん。そこ、怪我してたから気になって」と、右手で口元を押さえてくぐもった声でイイながら左指で腕を示す。
「あぁ、これですか?」
腕を伸ばして、手首より8cmぐらい離れたところにあるケロイドを見せる。大きさは3cmぐらいの楕円形をした跡は、もう完治している。
「火傷?」
「ですです。家常さんも中学のときに行きませんでした? 青年の家」
「宿泊訓練とかで行く所だよね?」
家常さんの確認に頷く。
「うちの通ってた学校、夏に行くんですけど、そのときにキャンプファイヤーしたんですよ。んで、1人1本たいまつを持たされるんですけど、うちが持ってたやつって巻きが甘かったみたいで、布の一部が落ちてきちゃったんです」
「そうだったんだ」
「まぁ、軽く当たっただけなのでそこまで痛くはなかったんですよ? 結構がっつり跡が残ってるのは、めんどくさがってちゃんと冷やして薬を塗らなかったからなので」
傷跡を気にするような性格でもないので軽い口調で言えば、家常さんがほっとした様子を見せた。仮にも女子に傷のこと聞くのは良くなかったかなって思ったみたい。
「それよりも、家常さんって、いつもさっきみたいにナチュラルに女の人に触っちゃうのか問い詰めたい。無意識にやっちゃうぐらい女の人に触っているのかと。至る所で恋愛フラグをぼこぼこ立てているのかと、小1時間問い詰めたい」
「えっ?!」
びっくりして動作を止める家常さんを見つつ、ビールをゴクリ。
「超慣れた手つきで、腕を撫で上げてましたもんねー」
うちの言葉に家常さんが噎せる。
「ご、ごめんて! ごめんなさい! セクハラっぽかったと反省してます!」
顔の前で両手を合わせて頭を下げる家常さんは、めっちゃ焦ってる。
「いぇ、責めてるんじゃなくて、純粋にすごいなぁ~って思っただけですよ?」
「いやいや、なんかめっちゃくちゃ遊んでる奴みたいな言い方だけど、全然そんなことないから!」
わたわたと慌てる彼に笑顔を向けて「はいはい、分かってますよ」って言ってあげたら「……ホントなのに」って眉根を下げられた。
うん、やっぱり、じゃれられるよりこーゆー関係の方がやりやすいです。