表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

ご飯、食べに行きません?

ご無沙汰してます(°°;)

鈍亀更新&恋愛要素希薄でお届けしております。。。

「はい、しゅーりょぉー」


 業務報告書を添付したメールを営業部長に飛ばして、ブラウザ上の退勤ボタンをクリック。

 大きく伸びをすると、PCチェアの背もたれで背骨が軽く鳴った。


 ――あぁー、気持ちイイ。


 ついでに首と肩もバキバキと回せば、隣にすわっていた家常さんに「凄い、音ですね」ってびっくりされました。


「えっ、鳴りません?」


「首はたまに鳴りますけど……」


 言いながらも家常さんは首を伸ばしたり、回したりするけど、鳴ったりはしない。


「鳴らさない方がいいですよ? あれ、頭痛の原因になるらしいですし、パキって音で凝りが改善された気になるだけらしくて、効果はないそうです」


 頭痛持ちのうちとしては止めたい癖なんだけど、ついやっちゃうんだよね。


「詳しいですね」


「うちの部署、ずっと座りっぱなしでモニターと睨めっこだから、肩こりや頭痛持ちが多いんですよ。だから、湿布は何がいいだとか、頭痛薬で一番効くのはどれだとか、効果的なストレッチの方法とかの情報が飛び交ってますよ。うちも含め、みんな身体は老体なんで」


 視線を画面に戻して、使用していたノートパソコンをシャットダウンしながら答えれば、「いやいや、宇田さん俺より若いのに」って笑われた。


「それで、今日もこれからシステムの仕事ですか?」


「いいえ。今月の残業時間がヤバめなので、帰りますよ」


「あぁ……。宇田さん、残業超過一覧の常連さんらしいですね」


「うちがって言うより、うちの部署がって感じですけどねぇ……」


 残業超過一覧とは、25日の給与締め後3日以内にグループウェアのインフォメーションに掲載される一覧表の事。


 労働基準法第36条で残業時間について決まっているらしく、基本的に年間の残業リミットが360時間。だから、単純計算で月に30時間を超過する残業を行った者、もしくは予備軍の部署名と名前が、残業累計時間でワーストランキングされて曝されます。


「あれって、この人、追試ですよぉ~って感じで嫌です」


 まぁ、うちの通う高校は貼り出しなんてしてなかったけど。なんか昔、プライバシーがどうのとか個人情報がどうの、成績でうちの子がいじめられたらどう責任取ってくれるのよってご意見があったらしくて、廃止されたって噂です。


 確かに、って笑った家常さんも仕事が終わったらしく、彼の手元のPCからシャットダウンの音が鳴った。


 営業部は社員の席が固定されていないフリーデスク形式だから、デスクの上に置かれた書類も自分の鞄に仕舞う。

 フリーデスク形式は、今回みたいにイレギュラーな応援人員が来ても、必要な時にパソコンが使えて便利。


 用意されている事務机は4脚で、パソコンは、最低限の機能しか持たせていないシンクライアント端末のノートパソコンが、机にセキュリティ・ワイヤーで繋がれていている。


 営業の人数はデスク数より多いけど、みんなが同時にパソコンを長時間使用するって事は少ないし、スマホで用事が済んだり、書類をまとめたり、資料を読んだりといった作業は、フリーデスクの反対側にあるミーティングテーブルが置かれたスペースを使用しているみたい。


 もちろん、毎週水曜日の定例会議なんかで本来の使用もされてるみたいですが、基本的にはみんなのサブデスクです。


「宇田さん、これから用事ありますか? ご飯、食べに行きません?」


 うちが自分の私物を片付け終えたタイミングでのお誘いに、軽く考える。


「んー、そーですねぇ~」


 うちは定時帰宅だけど、主任は今日も残るって言っていたから、帰っても1人。


 あの人こそ、残業常習犯。役職者は残業が付かない。付くのは深夜残業から。

 だから、残業ワーストランキングに名前入りはしていないけれど、実質的に見たら、ワーストランキングのトップだと思う。


 ちなみにリミットを越えても残業はできます。ただ、会社から「健康診断を受けて来い」と命令が下り、総務部と管財部のお偉いさんから忠告がありますけどね。


 定時に仕事が終わらないなんて、効率が悪いだけだろ? と思いの皆さん、違うのですよ? お仕事は、「えっ? これから?」という時間帯に増えるのです!

 お客様からのトラブル発生連絡とか、納期直前の仕様変更とか、バグとかバグとかバグとか……。


 って、脳内で別方向に考えが行っていたので、引き戻して「いいですよ。行きましょうか」って同意してみる。


「えっ?」


「ん? もしかして社交辞令でした?」


 完全な気まぐれのお返事だったので、別にそれならそれで、おじちゃんとこでもご飯食べに行こうかなぁ~って思ってたところを「あ、いや、違います! 社交辞令でとかじゃなくて、本当に誘ってます!」って、慌てた様子で訂正された。


「ほら、いつも『そのうちね』って言われるから……、って、いや、あの……」


 その焦り具合に笑うと、顔を赤くした家常さんが片手で顔を覆う。


「笑わないでくださいよ……」って言葉が弱々しい。


 何、これ。ちょっと、可愛いかもしれない。


「……いや、可愛いって、嬉しくないですから」


「あれ? 声に出してました? ごめんあそばせ」


「全然、悪く思ってないじゃないですか……」


「うん。思ってない!」


「ちょっ……」


 うちのふざけた口調に反応して、連鎖していく言葉のじゃれ合いは楽しい。


「ほら、ご飯行きますよぉ~」


 鞄を持って、フロアに残る数人に「お先に失礼します」って声をかければ、家常さんも同じ様に挨拶をして横に並んだ。

2012/09/07 家常さんの年齢修正。

2015/04/19 文頭にスペースを挿入しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ