第3話
今日は土曜日でお昼のお客の入りはまばら。
だってお昼のお客のメインはビジネスマンだもの。
ちなみにお店の営業時間は朝の10時から夜の9時まで。
休みは日曜日と祝日。
いっその事土曜日も休みにして週休2日にしようと提案して見たのだけれど。
「さすがにずっと休み無しは大変だから日曜日と祝日は仕方が無いけど、土曜日は開けておいた方が良いと思うわ」
「どうしてなんですか?」
「もしお客様が土曜日にお店に来てその時に閉まっていたら、お客様は曜日関係無しに『せっかく行っても休みかもしれない店』って記憶しちゃうのよ。全員とは言わないけど。そしたら平日にもお店に来なくなっちゃうわ」
「そういうものなんですか?」
「そういうものよ。お店をするって大変なんだから」
以上の様に聡美さんにたしなめられ、結局土曜日も開店する事に。
土曜日はやっぱり平日とは違った客層。
ご家族連れのお客や、平日は夕方の帰宅時に寄ってくれるお客様が土曜日は昼に来てくれる事もあり。
特に印象的なのは近くで建てているビルの建築現場で働いている大地さん。
ちなみに苗字は名は体を現すかのごとく、土方さん。
決して土方さんではありません。
なぜわたしがお客の名前を知っているのかと言えば、例のメンバーズカードのおかげ。
肉体労働者だからなのだろうけど、大地さんはとにかく良く食べメンバーズカードの番号記入欄がトッピングの多さで桁あふれしそうな勢い。
151551234。これが大地さんの番号。
メニューに直すと、白ご飯、大盛り、ビーフカレー、ルー盛り、大辛、トッピングにタマゴ、コロッケ、ウィンナー、ポークカツ。
ちゃんとポークカツカレーの番号もあるのに、あえてビーフカレーにポークカツをトッピングするところが真の益荒男との事。本人談。
土曜日にしか来ないのは、平日は混んでいるから嫌との事。
今日も大地さんは大辛のカレーを汗をかきながら食べている。
お皿に顔を寄せ、せっせとカレーやらコロッケやらポークカツやらを口に運んでいる大地さんの空になったコップにお冷を注いでいると、大地さんの後頭部に目が奪われた。
他のところの髪は刈り上げているくらい短いのに、襟足だけ長い事はなはだしく。
ファッションなのかとも思ったけれど、かっこいいかと尋問され「かっこいい」と証言すれば偽証罪で捕まりそう。
已むに已まれずご本人に事情徴収。
「罰ゲームか何かですか?」
「なにが?」
「どうして襟足がそんなに長いのかなと思って」
「ああ。外の現場で働いていると日差しが強くて首の辺りが日焼けしちゃうんだ。これはそれを防ぐ為だよ」
「そうなんですかー。やっとどうしてそんな変な髪形をしているのか分かりました」
翌週、お店に来た大地さんは、後頭部を綺麗に刈り上げていらっしゃり。
なんだかとってもごめんなさい。